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『星巡りの──』/Novel by 春風

『星巡りの──』

4,812 character(s)9 mins

星めぐりの歌、スバルくん好きそうだなぁ。
タイトルは最初『星巡りの悪い少年』にしようと思ったんですけど、しっくり来なかったのでこれに。
ちなみにですが、レムやアベルなど、七章で主に活躍するメンツ(登場?)は、みんな「覚えてるけど……ぼんやりしてる……」なのに、セシルスだけははっきりと思い出せます。
恐らくは、部屋の主が「そこまで影響なさそう」と判断ミスしたのと、セシルスのキャラが強すぎて靄が弾かれました。
セシルス以外はこんなことにはあまりなりませんが、エミリアやラムも段々9章の記憶が蘇りつつありますね。
思いの強さが理由かも。

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『スバル?』
『は、はひ、ナツキ・スバルです』
『ん、スバル……よね。ごめんね。なんだか、ちょっと変な風に見えたから』
『へ、変ってのは……あれかな?目つきとか、そういう意味だったり?』
『ううん、違うの。目つきはいつも通りすごーく悪いけど、頭打ってないかなって』
『目つきはいつも通りすごーく悪い!?』
『――エミリア、それだけでなんでもないなんて結論付けるのは早計なのよ。やっぱり、どこか違和感があるかしら』
『――?でも、スバルの目つきはいつも通りだと思うけど』
『スバルの悪い目つきの話は今してないのよ!目つきの悪さはこの際、どうでもいいかしら!』
『目つき悪い悪い言うな!人のウィークポイントあげつらうのは趣味がよくねぇぞ!なんなんだ、お前ら……あ、いや、君たち、ちょっと可愛いからって……』

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「──なにか、違うわ」
エミリアの白い顔が、より白く染まる。
嫌な予感が、エミリアの背を執拗に撫でる。
「スバルが記憶を失ったのはそうだったわ。でも……私、こんなこと言ってない」
エミリアの思い違いならいい。
でも、そうじゃなかったなら、
「──まさか」
メィリィの方を、ちらりと見る。
スバルが気づいたから未然に防げたけれど──、もし、そうでなかったなら。
「──スバル」
どうしようもない絶望が、エミリアの首を絞める。

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『――改めまして自己紹介をば。俺の名前はナツキ・スバル!無知蒙昧にして、天魔不滅の風来坊!不束者ですが、どうぞよしなに!』
『ええっと……別に知ってる、わよね?』
『今さらすぎる自己紹介だったのよ』
『あれー!?』

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「──ベティーは、また……スバルをみすみすと死なせてしまったのよ……?」
記憶を失ったスバルが危ない目に遭わないように、ベアトリスは意識していたはずだった。
実際、スバルは半日で記憶を取り戻して、愛しい声でベアトリスの名前を呼んでくれた。
そのはず、なのだ。
「──ベティーは……」
スバルしか知らない世界が、始まる。

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『つまり、スバルは……何にも覚えてないの?この塔のことも、プリステラであったことも……ううん、それどころか、ラムたちも、ベアトリスも。……私の、ことも?』
『えーと……はい、あの、そのようです、はい』
『記憶が……ない?まさか、そんなことあるはず……』

『あ、あー、えーと、その、あれだ!へっこむ気持ちもわかるんだけど、ここは一つ、気を取り直していこうぜ!』

『スバルは、やっぱりスバルだから……ん、それは安心した』

​───────​───────​─────

「これ、まずいんとちゃう?ナツキくんは誰のことも覚えてへんのやろ?そんな状態で……エミリアさんの推測が正しいなら、誰かに殺されることになる。そんなん、信頼もない人たちのこと信じられるわけないもん」
アナスタシアの冷静な推測に、エミリアの肩が跳ねる。
「──そう、よね。アナスタシアの……言う通りだわ」
「──別に、本当にそうなるって言っとるわけやないけど……覚悟しといた方が、エミリアさんも少しは楽、やろ?」
「──うん。ありがとう、アナスタシア」
そう、覚悟しなければならない。
スバルに、冷たい目で見られる覚悟を。

​───────​───────​─────

『よしっ、元気を入れたわ。あんなんじゃダメよね。スバルの方がずっと困ってるはずなのに、いつまでも私たちまで困った顔してちゃ』

『驚いちゃったのも、悲しい気持ちもわかるけど……今、一番辛いのが誰なのか考えなくちゃ。私たちが、何とかしてあげなきゃダメでしょ?』

​───────​───────​─────

「──ナツキさん……」
オットーが顔を顰める。
エミリアやベアトリスを責めようとは思わない。
あれはスバルの独断だ。
二人に落ち度は無い。
ただ──
「何も出来ないというのは、歯痒いですね」

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『スバルは……今、困ってるはず、かしら』
『……まぁ、そう言えなくもない、かな?あー、正直、そうだな。うん、助けてほしいと思ってる』
『……ああ、もう、まったく!スバルは本当に仕方のない契約者なのよ!いつもいつも、面倒事ばっかり持ち込まれてベティーはいい迷惑かしら!こんなことはこれっきりにしてくれないと、いい加減、ベティーも愛想尽かすのよ!』
『お、おお……えと、それは、つまり?』
『素直に助けてって言えたのに免じて、今回だけ目をつぶってあげるかしら。――どうせ、スバルはベティーがいなきゃ、寂しくて生きていけない弱虫なのよ』
『そこまで言う!?』
『ふん、忘れたなんて言われても、すぐ思い出させてやるかしら。――ベティーの契約者は何があっても、思い出の中でセピア色になんてならない、鬱陶しくてやかましい男なんだってことを』
『色々わかんねぇけど、それが俺のことならものすげぇ言われようだな!?』

​───────​───────​─────

「全てがまるまる消えている……のかーぁな。恐らくは、スバルくんがこの世界に送り込まれてからの全てが」
「おそらくはそうだと思います。ただ……エミリア様の予測通り、おそらくこの世界はなかったことになる世界、です。ラムが見た記憶を飛ばしたバルスとは、少しだけ顔つきが違いますから」
「そうかい。それは何とも……」

「──ベアトリスちゃん、わたし……」
「ベティーは、覚えている世界を信じたい、かしら。スバルを……スバルに、酷いことをしたのは、別の外的要因だって」
ベアトリスの声は、震えていた。

​───────​───────​─────

『俺の名前はナツキ・スバル。右も左もわからねぇが、たぶん君たちのお友達。図々しいとは承知の上で、一つ君たちに頼みがある――君たちの名前を、教えてほしい』
『私の名前はエミリア、ただのエミリアよ。またよろしくね、スバル』
『ベティーは大精霊ベアトリス、スバルはベティーの契約者なのよ』

​───────​───────​─────

「盗品蔵で聞いていたのと同じだね。──記憶の喪失というのは、かなり……精神に影響を与えると思うけれど」
「そう……ですね。私も、かなり精神に負担がかかりましたから……スバル様も、同様かと」
クルシュがそう言い、フェリスが顔を顰める。
「スバルきゅん、何が……」
恐らくは、スバルが夜の間に起こした何かが関係しているのだろうが。

​───────​───────​─────

『それで、みんなも驚いてると思うけど……スバルは今、すごく困ってるの。こんな状況だけど……ううん、こんな状況だからこそ、力を貸してあげて』

『これは、何かの悪ふざけなの、バルス?』

『どうあれ、騎士ユリウスが落ち着くまで時間がいるなら……その間に、朝食の準備をしましょう。エミリア様、バルスを水汲みに借りても?』

​───────​───────​─────

「お姉さんたち、すごく殺伐としてるわねえ」
「覚えていない世界の話をされても困るわ。最も、あの状況で落ち着けるほど、ラムは薄情な性格をしていない……と付け足させてもらうけれどね」
別に、スバルが記憶を落としただけなら心配するだけだ。
ただ、この時のラムには、レムの記憶がなかった。
だから──
「──この時?」
自分の思考にラムは引っかかった。
この時も何も、今も、ラムにはレムの記憶は──
『────?』
「────」
思い出しかけた何かに、またノイズが走る。
「──不快だわ」

​───────​───────​─────

『なんで、ベティー、お前が頼りだ。任せたぜ、契約っ子』
『――。その呼び方は、やめてほしいのよ』
『――?そうか?じゃあ、ベアトリス?』
『……ひとまず、それでいいかしら。スバルの頼みは任されたのよ』

『ラムと、ゆっくりでいいから。戻ってくるまでに、話せるように頑張るわね』
『ああ、頑張る。そっちも頼む、エミリアちゃん』
『──。うん』
『……あれって、どういうことなのか聞いても大丈夫か?』
『騎士ユリウスのこと?それは、ずいぶん残酷なことね、バルス』
『残酷なのか……』

​───────​───────​─────

「エミリアちゃんって呼び方……やっぱりしっくりこないわ。いつもみたいに……」
不意に、泣きそうになるのを抑える。
「エミリア……」
「ちゃんとスバルが思い出してくれるって、分かってるんだけど……思い出すまでに、スバルは……」
何回、死んでしまうのか。
「それは、分からないから……」

「──残酷、か。全く、ラム女史は恐ろしい人だ」
本当に、その言葉に尽きる。
少なくとも、あの時のユリウスにとっては、世界が崩れるほどのショックだったのは間違いない。
「──ひとりきりになった、だなんて言うつもりはないけれどね」

​───────​───────​─────

『――いい加減、つまらない芝居はやめなさい、バルス』

『どうせ、バルスのことだから、またろくでもないことを思いついたんでしょう。腹芸のできないエミリア様や、別陣営のアナスタシア様、それに信用できないシャウラはともかく……ラムにぐらい、何を企んでいるのか明かしておきなさい』
『ええと、だな。ラム、お前の言い分はあれだ。わからなくはないんだが……』
『だが?』
『悪ぃけど、これって演技とか芝居とか、悪巧みとかじゃねぇんだよ。俺は本当にすっぽりと記憶が抜けてんだ。だから、お前の期待には応えられない』
『強情ね。バルスが一人で抱え込むのはいつものことだけど、今回ばかりはそれじゃ困るのよ。ラムも、レムのことが懸かってる。ちゃんと一枚噛ませなさい』

​───────​───────​─────

「────」
ラムが瞳を伏せる。
「大将……ッ!」
ガーフィールが悔しそうに声を絞るのを横目に見て、押し黙る。
「──全く、この部屋の持ち主は趣味が悪いわね。覚えていない世界の話をされて……その上、自分ならこう言うだろうと納得してしまうのが殊更腹立たしいわ」
ラムなら、絶対にこう言ってしまう。
だって、レムを救わなければならない。
あの子が目を覚まして、笑うのを見なければならないから。

​───────​───────​─────

『バルスには、バルスなりの腹案があるんでしょう。だから、それを洗いざらい話しておきなさい。ちゃんと内緒にしてあげるから』

『言いなさい。いい加減にしないと、ラムにも考えがあるわよ』
『――ッ!わかんねぇ奴だな!だから、何にもねぇって言ってんだろ!嘘じゃねぇんだよ!俺は』
『――いいから、全部話しなさい!!……全部、話して……お願いだから、全部、話して』
『ら、む?』
『……お願い……バルスが、忘れたらラムは……レムは……レムは、あの子は……』
『……ごめん』

​───────​───────​─────

「──ラムちゃん……」
菜穂子が、不安げに瞳を泳がせる。
彼女の気持ちを思えば、何ともやるせない。
スバルが記憶を失ったということは、塔の攻略の難易度が少しだけ上がったということだ。
「──あの星の問題みたいに、現代知識が求められるかもしれないものね」
つまり、それは──
「アナスタシアさんのことも、レムちゃんのことも……遠のいたってことだもの」
なんて、重いものばかりを背負わされる子だろうか。
「──昴」

Comments

  • レイラ
    Apr 2nd
  • あほ

    見始めて1週間くらいなのにもう最新まで来てしまった...おもろい!

    June 5, 2025
  • とし

    今回も面白かったです! 半日だと思っていたスバルの記憶喪失が、実は何日も死に戻りを繰り返したものだったということが、知られてしまうんですね…皆の反応が楽しみです!

    June 5, 2025
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