第2話

嫌いって言葉で,息をする
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2026/01/02 08:32 更新
リノは人を寄せつけない。
 冷たいとか、怖いとか、そういう噂は全部正解で、全部どうでもよかった。

 隣の席のスンミンも、同じだ。
 誰にでも強くて、誰にも期待しない。
 だから二人は、同じ場所にいながら一度も交わらない――はずだった。

スンミン
スンミン
……邪魔
低く吐き捨てられた声に、リノは顔を上げる。
 視線の先にはスンミン。机に置いたリノの腕が、ほんの少し彼のスペースに入っていた。
リノ
リノ
悪い
それだけ言って引っ込める。
 謝罪に感情はない。スンミンも同じだった。
スンミン
スンミン
相変わらず感じ悪いな,お前
リノ
リノ
そっちこそ
周囲がひそひそと笑う。
 “相性最悪のコンビ”。
 そう呼ばれていることを、二人とも知っていた。

 ――嫌われている。
 そう思い込むのは、簡単で楽だった。

 放課後。
 人の少ない廊下で、リノは足を止める。

 スンミンが、誰かと笑っていた。
 それだけで、胸の奥がざわつく。

 知らない顔。
 知らない声。
 自分には向けられない、柔らかい表情。

 何かが、音を立てて崩れた。
リノ
リノ
……何してんだよ
気づけば、口が先に動いていた。
 振り向いたスンミンの目が、一瞬だけ見開かれる。
スンミン
スンミン
別に,お前に関係ないだろ
その言葉が,やけに遠く聞こえた。
リノ
リノ
俺の前で,そんな顔すんなよ
静かな声だった。
 でも、抑えきれない感情が滲んでいた。

 スンミンは黙る。
 数秒の沈黙のあと、乱暴に視線を逸らした。
スンミン
スンミン
……気持ち悪いこと言うな
そう言いながら、どこか震えている。

 リノは知ってしまった。
 スンミンが、自分の言葉一つで揺れることを。

 スンミンも気づいていた。
 リノが、自分を見失うほど執着していることを。
スンミン
スンミン
別にお前のことなんてどうでもいい
リノ
リノ
…俺も,興味ない
嘘だった。
 その嘘を、お互い一番よく分かっている。

 嫌いと言いながら、
 離れられない。

 独占欲も、不安も、
 全部「なかったこと」にして、
 相手の存在だけを飲み込んでいく。

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