ハンside
リノから連絡を受け
いつもの待ち合わせの時間に集まった
お互い気づいてるよ
空気がいつもより重くなって
真剣な話をするってこと
それなのに、俺たちは紛らわすために
くだらない話で少しでも場を温める
リノは不思議そうにこっちを見た
そんなに俺がプリンを頼むことが驚きだったのかなㅎ
プリンはあまり好きじゃない
どうしても、あの苦くて甘いカラメルが苦手だ
でも今日はなんか食べたい気分だった
そうしたらリノの苦しみを感じることができるかもだから
俺はあえて注文したんだ
リノがモゾモゾしてるというか
落ち着いてないのは何年ぶりに見るだろうか
多分俺が言った一言がリノの心に刺さって
リノは1人で決断をしたんだよね
その貼り付けたような笑顔が物語ってる
今の言ったことが本心じゃないことぐらいわかるよ…
本当は自分らしく、自由に生きたいはず
俺はリノを一番見てきた
だから俺が助けてあげるべきで、、
俺がなんとかするから…
だから、、
"まだ考えよう"
なんて軽はずみなことを言っても
俺にできることなんて
プリンを一緒に食べてあげることぐらいで
なんの権利も地位も持っていない俺が
"助けるべき"なんて口が裂けても言えたもんじゃない
リノだってわかってるよね…
俺がこんなこと本心で言ってるんじゃないってこと
カタン
受け取る仕草、飲み物を飲む姿
そもそも座っている姿勢から感じる
もうリノは立派な"女性"だ
俺はリノをわかってた
でも、それはわかってる気でいただけで
最初から表面しか見ていなかったのかもしれない
それか
リノの女装を見た時から
俺はリノが見えなくなった、わからなくなったのかもしれない
なぜもっと早く若いうちから気づけなかったんだろう
あの時俺がもっと言っていれば…
リノは苦しむことなく生きることができたのかな
零れそうになる涙をこらえて
プリンを1口、口に運ぶ
いつもはもうちょっと口に甘さを感じるのに
今日は口に苦味だけ広がっていく
パシッ
リノが触れる手が
あまりにも冷たい
この後俺たちはこの話について一言も触れなかった
いつも通りの空気に戻って
バカみたいにくだらない話をする
もう二度と"今のリノ"に会えないと知りながら
俺は一気にアメリカーノを飲み干した
リノside
ハナと別れて1人で
母がいる家へと帰る
途中から外は曇ってしまって
今にも雨が降りそうだった
一刻でも早く帰りたいが
俺の住んでるとこは田舎だし
この時代は電車がほとんどこない
早くに来たとしても30分に1本だ
俺はホームの椅子に座り
今日の自由の日を振り返った
俺の前に立ったのは礼儀正しい青年
俺より若くて、高身長で足が長い
フードで顔が見えないけど
雰囲気からなんとなくわかる
この人顔整ってる、、
それにしても
一人でこんな何もないようなところに…?
まぁ今いろいろ詮索しても、今だけの付き合いで
踏み込んだ話をしてしまったら相手に失礼だ
パサッ
やっぱり俺の思った通りで
一般的なイケメンというより
見た人全員を引きつけるような
イケメンと可愛いを掛け合わせた整った顔をしてる
こんな子絶対みんなからモテて困るんだろうなㅎㅎ
少しの好奇心からだった
もし俺が"男の人"と結婚するってなったら
こういう人がいい
そう俺の頭が言ってた
だから、頭よりも先に
口が動いて、誘ったんだと思う
ドキッ
にこっと犬みたいに笑った顔が…可愛い
そうなぜか思った
ノリにも乗ってくれる優しい人
"女"を長年やってるからわかる
この子は少しだけ裕福な育ちなのかもしれない
しっかりと親からの愛を受け継いだんだ
『"まもなく電車が参ります"』
会うつもりなんてもうないのに
期待を持たせることを言ってしまった…
でも、もっと話したい
電車が止まらないで欲しい
そう思ったのは事実だ
彼は電車に足を踏み入れ
こちらを振り返った
プシューガチャン
丁度いいタイミングで
目の前のドアが閉まって
電車は動いてしまった
あの子にあって
ほんの少しだけ決意が揺らいだ、、
もしこのまま"男"だったら
もう一度会った時、もっと深く知れたのだろうか
そうありもしない話を考えても
どうしようもないことか、、
俺は再度席に腰をかけ
手に力を込めた
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!