リノside
俺の母は"愛"より"富"を望んだ
その為に母は自分を犠牲にしてまで
今の父と結婚したとまで言えてしまう
父は俗に言う裕福な家庭で育ち
英才的な教育を受けてきた富裕層だ
代々引き継がれていく遺産だって
俺たちだけでなく孫まで裕福な暮らしができてしまうぐらいあった
実際結婚できると知ったとき母はどれだけ喜んだことだろうか、見なくても想像できる
これで母は"富"を得て満足する…はずたった
でもしばらくして
父は破産、その責任として死を選んだ
それに伴って遺産は母のものではなくなり
父の弟に引き継がれ
母が貧相な家庭で生まれてしまった
という理由もあるだろうけど
周りからよく思われなかったのも事実
その結果母は居場所をなくした
1つの頼りだったのが
お腹に宿した命
母はその時考えたのだろう
"この子が女であれば、私と同じ道を辿らせればいい"
そうすれば
母なりの幸せを手に入れることが出来る
でも、、、まだ不運は続いて
生まれた子供は女ではなく"男である俺だった"
絶望した母は
俺を捨てようとも考えたらしいが
流石の母でもそれをする事ができず
俺を"女"として育て始めた
それから時が経ち
俺は成人を迎えた
毎日女装姿の俺を見て
満足そうに笑う母
その母の笑顔が見たくて
俺は早起きをして朝から化粧やら服に気を使う
時計を見れば
待ち合わせの15分前
こっから化粧落として、着替えして
とか考えると
絶対に間に合わないッ
パシッ!!
頭を深く下げ
俺は自分の部屋に戻った
バタン!!
カツラを取って
ベットに投げ捨てる
最初は抵抗があって
本当に嫌だったけど、今は様になって
文句も出てこなくなった…
でもだからといって、完全に受け入れられてるわけじゃないし
嫌な物は嫌だ
だって俺は見た目が女でも
1枚脱いでしまえば、中身も見た目も男であって
"女気取りの男"でしかないんだ
めんどくさいけど
こんな状態で外に出れたもんじゃない
携帯を開き
待ち合わせ時間に遅れることを伝え
それと同時に化粧落としを顔に塗る
これがたまに目に入って染みて痛い
口に入って苦いと感じる
なんて最初は思ってた事を考えると
慣れてしまったことに少しだけ腹が立った
カランカラン
怒りの顔を浮かべることなく
手を振って笑顔で迎えてくれた
そう言いながら
俺がいつも頼むアメリカーノをスっと差し出してくれた
また何も言わずとも
メニューを差し出してきた
今日はやけに気が利いてる…
こういう場合は
俺に迷惑をかけるお願いしかしてこないが
こいつは幼い時から一緒にいる
だから、俺の好みも性格とわかるし
俺が母の望みで"女"として生活してることも知ってる
それを伝えた時は、正直受け止めてくれるなんて思ってなかった
実際にその件があってから
ハナとはしばらく関係が途絶えた
でも、少ししたらまたハナ自身から
"会いたい、話したい、向き合いたい"と声を掛けてくれた
驚きと同時に、俺の心は救われた気がした
まぁ、その知った原因が俺の口からではなく
女装姿を見られたとこが少し気がかりではあるけど
今が崩れていなければそれでいい
話をするのと同時に
ハナの顔色が曇って見えた
俺のことに普段触れないハナが
その話を俺に振ってくるってことは…
やっぱり隠し通すのには限界があった
最初は家と外の区別をつけて生活を徹底してたけど
大人になるにつれ"女として"外に出ることも増えていった
それに伴って
よく言葉遣いや仕草を間違える回数も増えた
ハナにバレたってことは
そろそろ1人や2人に見破られる
確かにハナが言っている通りで
俺からは何も言葉がでない
この時代"女"より"男"が重宝されている
その理由は単純で力があるから
ハナに迷惑をかけていて
母は俺が"女になることを望む"
優しい温かみのある笑顔
それが俺への気遣いだとわかっていても
縛られている俺からしたら少しの隙間となってくれる
この結果を皆が望むのであれば
俺は…
机に置く衝撃でプリンが少し揺れる
でも、崩れるわけじゃなくて
俺の食欲をそそるだけ
俺もこんなプリンみたいに
メンタルが固く、、誰かを引きつけることができたなら
こんな未来は変わっていたのかもしれない
ここからカラメルのように甘くほろ苦い
最初から大きいハンデを背負った
"俺の物語"が始まった
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。