朝ごはんが
料理ができていく。
昨日の残りもあるけど
足りないな。
大喰らいもいるし。
何より母さんと父さんが帰ってきた。
僕もお腹すいてきた。
ヒョンジナそろそろ食べようよ。
冷めないうちに運びましょう。
手伝わせよう。私たちだけでは間に合わない。
キッチンを出てリビングに向かいながら
イエナァ!と叫んでる
意外と豪快。
遊びに夢中になってると
ごはんに気持ちが向かないかも。
まだまだ手のかかる子どもだ。
リノの後を追ってリビングに向かう。
キッチンには洗い物をするヒョンジナと
お皿を出してるハニが残る。
流れる水の音と
かちゃかちゃと鳴る食器の音
沈黙。
なぜ。
別に
気まずいことは
ない はず
食器棚からコップを取り出しながら
後ろにいるヒョンジナに声かける。
なんか おかしいよ。
火を使ったっていうスンミナ
使った形跡は見当たらなかったし
リノはちょっと辿々しいし。
ヒョンジナは
少し落ち込んでる?
空気を 言葉を切ったのは
ハナの落ち着いた声だった。
私は冷静を装い
返事をする。
何が あったか。
何も。
そう
ただの仲のいい夫婦の光景を
見守っただけ。
そう それだけよ。
何も ない。
いつの間にか
ハナは私の後ろにいた。
水音で物音が聞こえなかったか。
それとも動揺して周りが見えてなかったか。
ハニの声にびくりと体がはねて固まる。のに
彼は私の肩に顎を乗せ
後ろから抱きしめるように
寄り添ってくる。
ハニの手は
私の腕をなぞる。
ほら 何もなかったら
振り払ってるはず。
笑ってふざけるはず。
何をそんなに落ち込んでるの?
震えてまで
何を隠してるの?
わかった 降参。
ため息をついて吐き出す。
別に隠すことじゃないわね。
見たの。
リノとスンミナが
キスしてるところ。
どこで?
は?ここで?
僕が食糧庫行ってる時に?
わあ!大胆!
ジナの肩の上で顔色を伺うように僕は驚いた。
そりゃあびっくりするよねジナ。
動揺する ん?
いや 違う。
動揺じゃなくて
ジナおかしいよ。
動揺じゃないね。それ。
落ち込んでる?
言われて気づく。
私。
落ち込んでるの?
動揺じゃなくて
なんで。
自分でもわからなくなる。
スンミナとリノのキスを見た。
とても情熱的な。
羨ましい。と。
私もしたいって
ああ、羨ましくて落ち込んだんだ。
あんなに愛され愛している口づけを。
え?羨ましくて?
落ち込んでたの?
それって
キスしたいってこと?
して欲しいってこと?
ふっと笑みが漏れて
ジナと掴み振り向かせる
強く振り向かされ
昨日とは違い
私からではなく
ハニから強く求められる。
腕を掴まれ
唇は噛まれるように啄まれる。
何度も強く。
たまに垣間見る
彼の強くて情熱的な雄の姿。
そういうところ私の弱いところ。
たまらないわ。
ビクッと体が跳ねる頃
ハニは呼吸を整えるように
唇を離した。
余裕のある笑みで私を見下ろす。
私は彼の首に腕を回し
もう一度
唇を重ねた。
そう
羨ましくて
したかったのは
ハニとの情熱的なキス。
決して
したかったのは
スンミナとのキスじゃない と
ハニの温もりに包まれながら
心に鍵を閉めた。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!