憲法・平和学・国際政治の学者や市民運動家などでつくる平和構想提言会議が4日、国会内で記者会見し、「武器によらない安全保障へ―平和主義をあきらめない」と題した「声明」を発表しました(写真)。

 

 高市早苗政権の軍拡・戦争国家化路線、とくに「安保三文書」の全面改訂を図ろうとしていることに対し、その危険性を分析し、対案を提示したもので、きわめて大きな意義があります。同時に、課題もあります。

 

 「声明」は「安保三文書」改定に向けた論議の問題点を10点指摘しています。

 

<・際限のない軍事費の増額・ミサイルや弾薬の生産拡大と配備・「敵基地攻撃」態勢の強化・国家による軍事産業の育成・自衛隊の「継戦能力」の確保・サイバー、AI、ドローンなど「新しい戦い方」への対応、先端技術の軍事利用・「認知戦」を想定した情報管理・経済安全保障の強化・非核三原則の見直し・原子力潜水艦導入の検討>

 

 「声明」は、「私たちは、軍事力増強を「国家安全保障」として肯定するプロパガンダに惑わされず、戦争や軍事がもたらす破壊、非人道的被害、人権侵害や差別、環境影響に目を向け続けていくことが必要です」とし、「武器によらない安全保障」に舵を切るために「ほんらい議論すべきこと」として次の7点を挙げています(全文抜粋)。

 

戦争がもたらす人道および環境への影響を想起し、戦争の準備ではなくその回避を、安全保障政策の中軸に据えること。

 ②軍事大国による覇権的な行動を抑制し、国連憲章をはじめとする国際法に基づく秩序の再建、国際協調主義、紛争の平和的解決、人権の保障を促進すること。

 ③「アメリカ頼り」の安保・外交から脱却し、日本の自立的な平和外交を確立すること。

 ④昨年11月の高市首相の「台湾有事」答弁以来急速に悪化した日中関係を改善し、日中間の信頼醸成と軍備管理・軍縮のための取り組みを進めること。

 ⑤朝鮮半島の平和と非核化を含む、北東アジアの持続可能な地域安全保障のための交渉を促進すること。

 ⑥被爆国として核兵器禁止のための国際的取り組みに真摯に参加し、核兵器禁止条約を調印・批准すること。

 ⑦先端技術の軍事利用に対する規制を強化すること。>

 

 「声明」は、「私たち平和構想提言会議は、こうした視点に立ち、研究者、実務家、ジャーナリスト、市民活動家などの多様な立場の知見を結集し、現在進行中の事態を批判的に検証し、軍事に依存するのではない安全保障のあり方を発信していきます。そして、政府の「安保三文書」に対抗する平和構想をとりまとめ、提言していきます」と締めくくっています。

 

 平和構想提言会議のメンバーは次の19人(◎は共同座長、敬称略)。

 

・青井未帆(学習院大学教授)◎・秋林こずえ(同志社大学大学院教授)・池尾靖志 (大学非常勤講師)・内田聖子(NPO法人アジア太平洋資料センターPARC)・海北由希子 (軍拡を許さない女たちの会熊本)・川崎哲(ピースボート共同代表)◎・君島東彦(立命館大学特命教授)・清末愛砂(室蘭工業大学大学院教授)・栗田禎子(千葉大学名誉教授)・崎浜空音(慶應義塾大学学生)・佐々木寛(新潟国際情報大学教授)・申惠丰(青山学院大学教授)・杉原浩司(武器取引反対ネットワークNAJAT代表)・鈴木達治郞(NPO法人ピースデポ代表)・谷山博史(日本国際ボランティアセンターJVC顧問)・中野晃一(上智大学教授)・根岸陽太(西南学院大学教授)・畠山澄子(ピースボート共同代表)・前泊博盛(沖縄国際大学教授)

 

 今回の「声明」は「「安保三文書」に対抗する平和構想」の基本理念を提示したもので、具体的な「提言」はこれからです。

 「武器によらない安全保障」の最大の課題は、日米安保条約(日米軍事同盟)廃棄と自衛隊解散(災害救助組織への改組)です。平和構想提言会議がこの2つの課題に対しどういう見解・政策を示すか注目されます。

 

 今回の「声明」発表をめぐる最大の問題は、ほとんどのメディアがこれを無視し報道しなかったことです。

 ピースボートによれば、報道したのは、沖縄タイムス、東京新聞、神奈川新聞、中国新聞の4紙です。私の確認でも朝日新聞、毎日新聞、NHKなど大手はまったく報道しませんでした。

 

 これは日本のメディアの致命的欠陥を示しています。国の進路をめぐる重大問題で、政権(国家権力)に対抗する市民運動家・学者ら(主権者)が記者会見で発表した対案(オルターナティブ)を報道することはメディアとしての初歩的責任です。それができない、しないのなら「メディア」の看板を下ろすべきです。