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「なんでこの色?」。その問いに、答えられるだろうか。拘りは、持っているだけでは届かない。語れたときに、届く。

「なんでこの色なんですか?」。
その問いに、答えられるだろうか。

こだわりは、持っているだけでは届かない。
語れたときに、届く。

── 人口4万人の港町で、毎日5件以上、年間1,200件の経営の相談を受けている、荒川健生です。
今回は、デザインの相談から気づいた「こだわりの届け方」の話。

■ 信号の赤には、ちゃんと理由がある

赤、黄、青。
毎日、何十回と目にする信号機。

なぜ「止まれ」は赤なのか。

赤い光は波長が長い。 空気中で散らばりにくく、遠くまで届く。
雨でも霧でも、他の色より遠くから見える。

だから、「危険」を知らせる色に赤が選ばれた。

きれいだから、ではない。
届くから、だ。

日本マクドナルドの創業者、藤田田も、この原理を使った人だ。

赤信号と黄信号を見て、「人が本能的に目を向ける色」だと気づいた。
マクドナルドの看板が赤と黄色なのは、この判断がもとになっている。

信号の色も、マクドナルドの看板も、「好み」で決めていない。
届く理由があるから、その色を選んでいる。

では、あなたの看板の色、チラシの色、名刺の色。
「なぜその色なのか」と聞かれたら、答えられるだろうか。

先日、それに答えられた人がいた。

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■ 「静脈」という一言で、チラシが変わった相談

デザインの相談に来た事業者の方がいた。

チラシの配色を考えていた。 ベースは赤。
でも、何か物足りない。

「ここに青を入れたい」と言った。

理由を聞いた。
「静脈です。赤だけだと動脈だけ。青を入れると、血が巡る感じがする」

なるほどと思った。

デザインを相談しに来る方のほとんどは、こう言う。
「なんか、青が好きなので」
「赤の方が元気に見えるかなと」。

理由は、好み。それ自体は悪くない。

でも、この人は違った。
自分の事業と色を、つなげて考えていた。

もちろん、このチラシを見たお客さんが「あ、静脈だ」と思うことはない。 赤と青を見てすぐに「血の巡り」を感じる人は、そうはいない。

では、この「静脈」という理由に意味はないのか。

ある。
ただし、色そのものにではなく、「語れること」に意味がある。

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■ 同じワインでも、「言葉」が変わると味が変わる

ひとつ、面白い実験がある。

スタンフォード大学とカリフォルニア工科大学の共同研究チームが、ワインの試飲実験をした。 参加者に、値段のラベルが違うワインを5種類飲んでもらう。

5ドル、10ドル、35ドル、45ドル、90ドル。

でも、実はトリックがあった。
45ドルのラベルが貼られたワインは、実際には5ドルのワインだった。
10ドルのラベルのワインは、実際には90ドルのワインだった。

結果は、どうなったか。

参加者は、45ドルのラベルが貼られたワインを「おいしい」と評価した。
中身は5ドルのワインなのに。

しかも、これは「気のせい」ではなかった。
脳の活動を測ると、実際に「おいしい」と感じる領域が活性化していた。

ラベルの情報が、脳の味覚体験そのものを変えていた。

つまり、こういうことだ。

同じワインでも、「このワインは45ドルです」という一言が加わるだけで、脳は本当においしく感じる。

同じチラシでも、「この赤と青は、動脈と静脈なんです」という一言が加わるだけで、受け取った人の印象が変わる。

言葉は、体験そのものを変える力がある。

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■ 今治タオルは、品質では復活しなかった

もうひとつ、別の角度から話をしたい。

今治タオル。
今では「高品質な国産タオル」の代名詞だ。

でも、2000年代の初め、今治のタオル産業は存亡の危機にあった。
安い海外製品に押されて、売れなくなっていた。

ここで大事なのは、品質は昔から高かったということだ。
今治の水は軟水で、繊維を傷めない。
だから、柔らかくて吸水性のいいタオルが作れた。

品質は、ずっとあった。 でも、売れなかった。

なぜか。

「品質がいい」だけでは、お客さんに届かなかったからだ。
タオルを買う前の人には、柔らかさも吸水性もわからない。
触ってもらわなければ、伝わらない。

2006年、クリエイティブディレクターの佐藤可士和がプロジェクトに加わった。
佐藤は、今治のタオルを使ったとき、品質の高さにすぐ気づいた。

では、佐藤は何をしたか。
品質を上げたのではない。もともと高かったから。

やったのは、「伝え方」を変えたことだ。

ロゴを作った。
赤と青で太陽と海をかたどったデザイン。
116社がバラバラに売っていたのを、「今治タオル」というひとつのブランドにまとめた。
フランスのシャンパーニュのように、産地そのものをブランドにする方法だ。
品質の認定基準も作った。
水に浮かべて5秒以内に沈むタオルだけが、ロゴを使える。

そして、ブランドの「顔」として選んだのが、白いタオルだった。

佐藤の説明は、こうだ。

最高のお米の味を伝えるなら、白いごはんのまま出すのがいちばん。
いきなりカレーライスにしたり、ピラフにしたりしてはダメだ、と。

品質は最初からあった。
でも、品質だけでは復活しなかった。

品質を「伝えるための仕組みと言葉」にしたことが、きっかけだった。

ロゴ、基準、ブランド名、そして「白い理由」。

全部、人に語れるものだ。

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■ こだわりは、持っているだけでは届かない

3つの話をした。

信号の赤。マクドナルドの看板。
理由があるから、遠くまで届く。

これは科学の話。

ワインの実験。
同じ中身でも、言葉が加わると、脳の感じ方まで変わる。

これは心理の話。

今治タオル。 品質はあった。
でも、伝える仕組みと語れる言葉がなければ売れなかった。

これは現実の話。

科学も、心理も、現実も、同じことを言っている。

こだわりは、持っているだけでは届かない。

こだわりが届くのは、「体験した後」だ。
でも、お客さんに選ばれるのは、「体験する前」だ。

では、体験する前の人に、どうやって届けるのか。

こだわりそのものは、届かない。
味も、技術も、接客の丁寧さも、来てもらわなければわからない。

でも、「言葉」は届く。

チラシに書ける。
SNSに載せられる。
人に紹介するときに、口で伝えられる。

言葉だけが、まだ来ていないお客さんのところまで走っていける。

だから、こだわりを「語れるかどうか」が分かれ目になる。

あの相談者の話に戻る。

この人が交流会で名刺を渡す。
相手がチラシを見る。
「面白い色ですね」と言う。
「赤は情熱で、青は冷静さ。動脈と静脈みたいに、両方巡ってるのがうちなんです」 と答える。

相手は、たぶん「へえ」と笑う。

でも、家に帰っても覚えている。
「動脈と静脈の人」として記憶に残る。
別の誰かに「こういう人がいてさ」と話す。

その話を聞いた人が、「ちょっと気になる」と思う。

こだわり → 言葉 → 記憶 → 口コミ → まだ会ったことのない人。

この連鎖が起きる。

「なんとなく赤と青です」と言われても、何も残らない。
「動脈と静脈です」と言われたら、覚えている。

同じ情報でも、物語になっている方が記憶に残る。

あなたも事実より、物語を記憶していないだろうか?

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■ まとめ:語れるこだわりは、武器になる

今治タオルの品質は、昔から高かった。
でも、ロゴも基準も「白で勝負する理由」もなかった頃、届かなかった。

ワインの中身は同じだった。
でも、ラベルの言葉が変わるだけで、脳の感じ方まで変わった。

あなたの事業にも、こだわりはあるはずだ。
素材にも、製法にも、接客にも。

でも、それを「自分の言葉」にしているだろうか。

一度、口に出して言ってみてほしい。

「うちは、なぜこれを選んでいるのか」。

その答えが見つかったとき、チラシも、看板も、お客さんへの説明も、全部変わる。

変わるのは、こだわりの中身ではない。
届き方だ。

追伸
先日、自分の名刺の色を聞かれた。
「なんで白なんですか?」と。

5秒、黙った。シンプルだったからだがほかにないか考えた。

結果、「……余白を大事にしてるんです」。
自分だけ、こだわりを後づけしていることに気付いた。


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コメント

10
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はやと@AIで月40万稼ぐディレクターのプロフィールへのリンク

こだわりを持つだけでなく、それを言葉にして伝える大切さがよく伝わりました。とても学びになる内容でした。

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荒川健生|年間1200件の経営相談|富山・氷見 いいね
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はやとさん、ありがとうございます。「言葉にする」って、簡単そうで一番難しいところだなと、相談の現場でいつも感じています。伝わったなら嬉しいです!!!

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Ugzamのプロフィールへのリンク
Ugzam

「うちは、なぜこれを選んでいるのか」 「オレは、なぜこの人生を選んでいるのか」 じっと手を見る

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Ugzamさん、ありがとうございます。 「なぜこの人生を選んでいるのか」 早速、実践ありがとうございます。答えが見つかることを祈っております!

EduLinguasのプロフィールへのリンク
EduLinguas

色が人の脳に与える直感ってありますし、それをちゃんと定義して届けるとちゃんと届くんだ、と思いました。 自分が使う色の届け方、考えてみます。 今日も興味深い記事を読ませていただき、ありがとうございました!

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荒川健生|年間1200件の経営相談|富山・氷見 いいね
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EduLinguasさん、ありがとうございます。色の届け方、まさにそこですよね。定義して、言葉にして、届ける。その順番があるだけで、同じ色でも届き方が変わる。ぜひ試してみてください!!

こっぺぱんのプロフィールへのリンク
こっぺぱん

面白かったです😌

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こっぺぱんさん、ありがとうございます。 「面白かった」嬉しいです!!

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