神官が錫杖を鳴らす。
参列者一同、起立。
祭壇中央には故人の遺影ではなく、
満面の笑みでピースサインをする女神エリシアの巨大な御神影。
その下には金文字で記されている。
| 「だいじょうぶだよ!なんとかなるから!」
神官が唱える。
「これより異世界転生奉送の儀を執り行う」
参列者。
「ははーっ」
神官。
「御祭神、転生管理女神エリシア大神は」
「勇者召喚先を間違え」
「チート配布先を間違え」
「魔王討伐予定者を農村へ送り」
「農民予定者を魔王城へ送り」
参列者。
「ありがたや」
神官。
「されど大神は」
「毎回てへぺろにてこれを赦され」
「なんかいい感じに収束せしめ給う」
参列者。
「ありがたや」
神官。
「今ここに旅立つ故人、山田太郎は」
「学歴平凡」
「職歴平凡」
「恋愛歴空欄」
「預金残高やや不足」
なむなむと頷く参列者。
神官。
「されどエリシア大神の御導きにより」
「隠しステータスが発見され」
「追放イベントを経て」
「なぜか王女と婚姻し」
「なぜか爵位を授かり」
「なぜか世界を救うことを願い奉る」
参列者。
「願い奉る」
ここで全員、胸の前で両手を合わせる。
神官が高らかに祝詞を奏上する。
| 恐み恐みも白さく。
|
| 転生管理に坐します、
|
| 尊くも少々うっかりなるエリシア大神。
|
| 願わくは故人を、
|
| レベル一にて放り出したまうとも、
|
| 隠しスキルを授け給え。
|
| ハズレ職を与えたまうとも、
|
| 三話以内に覚醒せしめ給え。
|
| 理不尽なる追放を受けたまうとも、
|
| 十話以内にざまぁを達成せしめ給え。
|
| また、
|
| 美少女、亜人、聖女、王女等との縁を結び、
|
| 孤独なる夕食を二度と食わせ給うことなかれ。
|
| しこみかしこみ申し上ぐ。
参列者全員。
「てへぺろ大神に栄光あれ」
「てへぺろ大神に栄光あれ」
「てへぺろ大神に栄光あれ」
すると祭壇上の女神像の口元が淡く光る。
そして会場全体に声が響く。
| 「あっ、ごめーん☆
|
| 転生先、一文字間違えちゃった♪」
参列者がどよめく。
神官が青ざめる。
「どこへ送られたのですか」
| 「魔法学園のはずが魔王学園だった☆」
会場、沈黙。
しかし最前列の古参信徒が静かに頷く。
「問題ない」
「エリシア様だ」
周囲も頷く。
「エリシア様だな」
「エリシア様だ」
「いつものことだ」
神官が厳かに宣言する。
「これにて奉送の儀を終える」
「故人の物語が始まらんことを」
参列者一同。
「てへぺろ☆」