ヤマダとエディオンが組んでも、株主にニトリが座っている件
ニトリ。家具屋ではあるのですが、違う形容詞はエディオンの大株主の名前です。2022年4月、ニトリホールディングスはエディオンと資本業務提携を結び、約10%の株を持ちました。エディオンの一部店舗では、ニトリの商品も売られています。
ここまでだったら、ただの「ニトリさん、家電量販店とも仲が良いねえ」という話で済みます。問題は、ヤマダとエディオンが組もうとしている領域が、家電そのものではなく「住生活」だという点にあります。
6月3日の日経の報道、それを受けた両社の「検討中」というコメント、そして6月5日の取締役会という流れで、いま動いているのは「経営統合の検討」です。確定した合併ではありません。形態は、新しい共同持株会社の傘下に「ヤマダデンキ」「エディオン」をぶら下げる方式と報じられています。お互いの店名は当面残しつつ、調達と物流とPB(自主企画商品)と金融を上で束ねる、阪急阪神型のスキームです。
合算売上は約2.5兆円。ヤマダが1兆6,918億円、エディオンが7,937億円。2位ノジマや3位ビックカメラの2倍以上です。
なぜここまでして組むか。家電量販はもう、家電を売っているだけでは食えないからです。
国内の家電量販市場は、家電大型専門店ベースで約4兆8千億円。短期では微増ですが、長期は人口減とEC化で頭打ちです。各社はとっくに「脱家電」へ走っています。ヤマダは住宅・家具・金融。エディオンはリフォーム・太陽光・蓄電池。ヨドバシは百貨店。ノジマに至っては、4月にあの日立の家電事業(日立グローバルライフソリューションズ)の80.1%を1,100億円で買いました。家電量販店が、家電メーカーを買う時代です。
「製販一体(SPA)」と業界では呼ばれます。安く仕入れて売るだけでは消耗戦になるので、自分でモノを企画し、自分の店で売る。エディオンのPB比率は35.6%まで来ています。アパレルでいうユニクロです。
そして、ここで冒頭のニトリに戻ります。
ニトリの本業は家具と家具周りの住設です。ニトリはこの数年、家電やインテリア家電にも商品を広げています。ヤマダが大塚家具を吸収して家具に出ているのは有名ですが、エディオンも住設・リフォームを第二の柱に育てています。新会社が「住生活トータルで攻める」と決めた瞬間、新会社の主戦場は、ニトリの主戦場と全面的に重なります。
つまり、競合の大株主に競合がいる、ということです。普通に書くと意味が通らない一文ですが、本当にそうなります。
ニトリが10%を持ったまま、新会社の住設・家具事業が成長していくと、ニトリはどう振る舞うのか。株を売って撤退するのか。持ったまま提携を縮小するのか。それとも、両方の取締役会で「お互いの領域には踏み込まない」紳士協定を結ぶのか。いずれにしても、新会社の経営陣にとって扱いづらい株主であることは変わりません。
統合の懸念は他にもあります。
公正取引委員会の独占禁止法審査がまず一つ。ヤマダはベスト電器を持っており、エディオンは西日本・中部が地盤です。広島・岡山・福岡あたりで店舗が重なります。ヤマダは2012年のベスト電器買収のときも、店舗を一部譲渡することで第2次審査を通しました。今回も似た展開がありそうです。
もう一つは、ヤマダのM&A実績です。大塚家具は2019年に子会社化したあと、2022年5月にヤマダデンキに吸収されて法人ごと消えました。住宅事業も赤字続きです。アクティビストからは資本効率の改善を迫られ、2026年3月期は戦略的在庫評価減などで本業のデンキ事業の利益が大きく落ちています。健全な5位のエディオンを、苦戦している1位のヤマダが取り込むという構図に、業界では首を傾げる声もあります。
家電メーカーの話も少しだけ。
世間では「日本の家電は完全に負けた」と言われます。テレビはサムスン・TCL・ハイセンス、白物はハイアール・美的・格力。日本のシェアは確かに最終製品では細っています。
ただ、半導体材料は日本勢が世界の約5割、製造装置は約3割、電子部品(村田・TDK・太陽誘電)は約4割、イメージセンサー(ソニー)は約5割。表に出ない川上の部品・素材は、いまも日本が握っています。ソニーは2026年3月期に営業利益1兆4,475億円で連続最高益、日立は時価総額20兆円超。「家電メーカーが負けた」のではなく、「家電を作るのをやめた家電メーカーが勝った」という、少しややこしい絵が今の現実です。
ヤマダとエディオンの統合も、構図は同じです。家電量販が、家電だけ売るのをやめる過程です。
私はずっと流通とメーカーの両方を見てきました。再編は毎回、最初は「規模で勝てる」と説明されます。けれども本当の勝負は、その後の「中身の整理」です。被る店をどう閉めるか、PBをどう作るか、利益相反のある株主をどう扱うか。記者発表のときの売上合計(2.5兆円)は、ただの足し算です。引き算と割り算の工程に入ったあとで、足し算は半分くらい消えます。毎回そうでした。今回も、たぶんそうなります。