【声明】同志社国際高校の研修旅行等を「教育基本法違反」とした文科省「見解」に抗議し、教育活動における安全確保の徹底と、平和学習の充実・発展を求めます

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子どもと教科書全国ネット21

 

本年316日におきた、同志社国際高校の研修旅行中の転覆事故により、かけがえのない命を失われた方々とご遺族のみなさまに、心より哀悼の意を表します。

教育活動において子どもたちの生命と安全を守ることは、最も重視すべき課題です。このような痛ましい事故が二度と起きることのないよう、原因を糾明し、責任の所在をはっきりさせるとともに、学校教育はもとより、子どもたちの活動全般に目を向けて、現行の安全対策を見直し、再発防止策を徹底する必要があると考えます。

 

文部科学省は522日、「同志社国際高等学校の研修旅行等について(これまでの把握事項と文部科学省の見解)」(以下、「見解」)を発表しました。「見解」は、同校の研修旅行における「安全管理・安全確保の取組は、著しく不適切であった」として「是正を図る必要がある」としただけでなく、「辺野古への移設工事に関する学習」が「政治的活動を禁じる教育基本法第14条第2項に反するものであった」として、この点についても「是正を図る必要がある」としています。

子どもと教科書全国ネット21は、文科省が同校の「辺野古への移設工事に関する学習」(以下、「学習」)を「教育基本法違反」としたことは、以下のように、教育行政としての裁量権を逸脱した、教育への不当な介入にあたると考え、文科省に対し厳重に抗議するとともに、その撤回を求めます。

「辺野古への移設工事に関する学習」は、学習指導要領にも教科書にも記載された「我が国の安全保障と防衛」に関する「現実社会の諸課題」の1つのテーマです。その内容を授業で学ぶだけでなく、研修旅行等において現地に赴き、自分の目で確かめ、関係者の話を聞いて考えることは、子どもたちが「良識ある公民として必要な政治的教養(教育基本法第14条第1項)」を身につけるために、「多面的・多角的に考察したり、事実を客観的に捉え、公正に判断したりする」学習の貴重な機会であって、この「学習」は、教育基本法第14条第2項が禁じている「政治的活動」にはあたりません。

「見解」は、この「学習」が「これまで把握した限りでは、事前及び事後の学習を含めて、様々な見解を十分に提示していたことが確認できず、特定の見方・考え方に偏った取扱いであった」としています。万が一教育内容に不十分さがあったとしても、それは、子どもたちの声を受けとめながら、教職員・関係者の真摯な討論と研究によって改善していくべき課題であって、教育行政が「教育基本法に違反する」「是正を図る必要がある」などと判断を下すようなことではありません。旭川学力テスト最高裁判決(1976年)が、教育は「人間の内面的価値に関する文化的営み」であって「教育内容に対する国家的介入はできるだけ抑制的であることが要請される」と明示し、教育基本法第16条が、教育行政によるものも含めて教育への「不当な支配」を禁じていることから見ても、当然のことです。

 

「見解」は、平和学習についても、「学習指導要領等の関係法令」や文科省「通知」に基づき「適切に行われること」を求めています。文科省がこのような「見解」を発出し、政治教育等に関する全国調査を行うとしたことは、これまで各学校で工夫して行われてきた平和学習や、現政権の施策に反対する立場の意見を子どもたちに示すことも含めた「現実社会の諸課題」に関する学習を委縮させてしまうのではないか、と危惧されています。それでは、子どもたちが「平和で民主的な国家及び社会の形成者(教育基本法第1条)」として必要な力を身につけるための学習の機会を失ってしまいます。

いま求められている平和学習とは、戦争体験を知るとともに、戦後80年余、人々がどのようにして戦争のない社会をつくろうとしてきたのか、その歩みを学び、未来につないでいく学習だと考えます。子どもと教科書全国ネット21は、子どもたちや教職員、市民のみなさんとともに、そうした学習のあり方を模索しながら、平和学習のいっそうの充実・発展のために力を尽くす決意です。

 

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【声明】デジタル教科書の拙速な導入に反対する

子どもと教科書全国ネット21

 

改訂学習指導要領が本格実施される2030年度からデジタル教科書を本格的に導入するための学校教育法等の改正案が428日、衆議院を通過しました。子どもと教科書全国ネット21は、以下の理由から、デジタル教科書の拙速な導入に反対します。

1の理由は、デジタル教科書の使用が強制されることです。改正案によれば、①紙のみ、②デジタルのみ、③紙とデジタルの併用の3つのパターンの中から「採択権者」が選択することになります。おそらく、どこの地区でも③の併用型が選ばれるでしょう。国会審議の中で松本洋平文部科学大臣は、デジタルのみの教科書は「小学校4年生以下で認めることは適当ではない」「全学年の国語や社会、道徳は当面認めるべきではない」と述べました。しかし、小学校4年生以下でデジタルのみの教科書がなかったとしても、「紙とデジタルの併用」であれば、デジタルの教科書を使わざるをえません。いまの「1人1台端末」は、教員の判断で使ったり使わなかったりすることができますが、「教科書」となれば否が応でも使わざるを得ません。部分的にデジタルのみが禁止されても、結局、使用が強制されることになります。

第2は、子どものゆたかな学びと育ちにどのような影響があるのか未確定だからです。

 デジタル教科書は、たとえばネイティブ・スピーカーの音声を使って外国語の学習を効果的に行うことができ、特別のニーズや外国にルーツのある子どもにとっては、読みがなの表示や背景画面の反転、音声の再生など、学習をすすめる上で不可欠なツールです。

その一方、視力の低下や姿勢の悪化など健康面への影響を危惧する声や、脳科学の視点から紙と鉛筆による学習のほうが記憶の定着や理解度が高いとする調査結果もあります。スウェーデンやフィンランドなど、いわゆる「デジタル先進国」の多くでは、デジタル教科書の使用見直しが始まっています。いずれにしても、デジタル教科書の活用が子どもの学びと育ちにどのような影響を与えるのかは、まだ研究途上です。仮に数年経ってから重大な問題があるとわかっても、その時々の子どもたちの発達と学びをやり直すことはできません。いまの時点でデジタル教科書の導入に舵を切ることには慎重であるべきと考えます。

第3は、いま以上に教職員の専門性がないがしろにされ、子どもの学びが貧困になってしまうことです。子どもと地域、学校の状況に合わせて教材をつくり、指導法を工夫して行われていた授業が、全国一律の学習資料や動画、アニメを搭載したデジタル教科書を観るだけの授業に置き換えられてしまったら、授業が画一化して平板な内容となり、教員の“やりがい”や子どもたちの“学ぶよろこび”が薄まってしまうことが危惧されます。

第4は、教科書の寡占化がいっそう進んでしまうことです。これまでは、紙の教科書の検定申請を行ってからデジタル教科書の製作に入っていましたが、今後は紙とデジタルを同時期に検定申請しなければなりません。デジタル教科書作成のための経費や技術のことを考えると、教科書の発行数がいま以上に減少し、大手の教科書会社しか残らなくなってしまうのではないかと危惧する声があります。重大な問題です。

第5は、教科書採択がいま以上に“密室化”してしまうと予測されることです。現行では、採択の度に教科書展示会が開催され、保護者や一般市民がそれを見て意見を出すことができますが、デジタル教科書の見本本を、展示会で紙の教科書と同じように見ることができるのでしょうか? 採択後、市民や学校の教員以外の研究者が、デジタル教科書を買って研究することができるのでしょうか? 

また、教員が「私は紙だけの教科書を使いたい」と思っても、採択をするのは教育委員会です。この際、小・中学校の教科書も学校選択にすべきではないでしょうか。

現在使用中のほとんどの教科書には二次元コードがついていて、教員の判断でデジタルコンテンツを活用した学習が行われています。上記のような問題が生じるとわかっているにもかかわらず、デジタル教科書を拙速に導入する必要はありません。当面、デジタル教科書の子どもの学びと育ちへの影響に関する研究を急ぐとともに、子どもの学びのあり方について国民的な論議を広げていくことが重要だと考えます。

 

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