緊急事態条項 三つの論点 危うい緊急政令、どうする国会機能維持、創設不要論も
衆院憲法審査会で議論が先行する緊急事態条項は、条文形式のイメージ案も作成され、改憲項目の最有力候補となっている。衆院憲法審ではどんな議論がされ、何が論点になっているのか。各党のスタンスも含めてみると、大きく三つの論点が浮かび上がってくる。
■賛否分かれる「緊急政令」
最大の論点は緊急政令。緊急事態発生時に国家機能を維持するため、内閣が国会の審議を経ずに法律と同じ効力を持つ緊急政令を制定できるものだ。緊急事態時に国会が開けない場面や、一刻も早い対応が必要なケースに備えるものだが、政府への権限集中につながるとして、野党を中心に慎重論が根強い。 自民党は「どのような事態でも国民の生命と財産を守り抜き、国と社会を維持する仕組みで、立憲主義国家として当然に備えるものだ」と主張。日本維新の会も賛同する。改憲に前向きな国民民主党は、他党の反対論が根強く、改憲議論が進まない要因になるとして、緊急政令を盛り込むことに否定的だ。 中道改革連合は、国会が立法を担う三権分立の原則が崩れることを念頭に「国会としておよそ認められない。論外」との意見。チームみらいは「非常に慎重な議論が必要だ」とくぎを刺す。野党との合意形成が難しければ、緊急政令を盛り込まない形の緊急事態条項も選択肢となる可能性もある。
■国会議員の身分復活には否定的な意見も
もう一つの論点は緊急事態時の国会のあり方。大規模災害などで選挙実施が困難な時期が長期間に及ぶ場合、内閣が国会の事前承認を得て「選挙困難事態」と認定する。 認定があった場合、衆参国会議員の任期は現行憲法45条、46条が定める任期規定にかかわらず、事態終了後に行われる国政選挙の実施前日までに延長する。延長期間の上限について「1年程度」「6カ月」などと意見の相違がある。 参院の緊急集会とのすみ分けも議論になっている。現行憲法54条では、衆院解散中に緊急の必要がある時に、内閣が参院の「緊急集会」の開催を求めることができると規定している。このため、参院側では議員任期延長論に対し、参院の機能否定につながるとして、与党も含めて慎重論が根強い。 事態認定前に衆院解散などで議員の身分が失われていた場合、前職議員は事態認定の事前承認の議決に国会議員として参加し、事態が認定されれば身分が復活したとみなされるが、選挙を経ない形で議員の身分を保つことに対して否定的な意見もある。 早大大学院の長谷部恭男教授(憲法学)は2023年5月の憲法審で「任期を延長された議員と、それに支えられた従前の政権とが長期にわたって居座り続ければ、緊急事態の恒久化を招くことになりかねない」と指摘している。