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“ルフィ” 広域強盗事件 グループ幹部に無期懲役を求刑

(更新)

「ルフィ」などと名乗る指示役による広域強盗事件で、強盗致死などの罪に問われているグループの幹部、藤田聖也被告に対し検察は「実行役を道具のように使い捨てながら多額の利益を得た」として、無期懲役を求刑しました。一方で弁護側は、「果たした役割は限定的だった」として有期刑を求めました。

フィリピンを拠点とした特殊詐欺グループの幹部、藤田聖也被告(41)は、3年前、東京・狛江市の住宅に実行役が侵入し、90歳の女性をバールで殴って死亡させた事件など、あわせて7件で強盗致死や強盗傷害などの罪に問われていて、フィリピンの入管施設から「キム」を名乗って実行役に指示したとされています。

5日の裁判で、検察は「一連の強盗事件で、被告は計画段階から関与し、司令塔として中心的な役割を果たした」と述べました。

その上で「将来の逃走資金を獲得するため、みずからの手を汚すことなく、実行役を道具のように使い捨てながら多額の利益を得た。社会に大きな不安と恐怖を与えた、過去に例のない凶悪で重大な事件だ」として、無期懲役を求刑しました。

一方で弁護側は、「ともに入管施設に収容されていた渡邉優樹被告と今村磨人被告に強制されて強盗に関わり、2人の犯罪を手伝ったに過ぎず、ほう助の罪にとどまる。果たした役割は限定的で、報酬も受け取っていなかった」と述べ、有期刑を求めました。

最後に藤田被告は「金に困って闇バイトに手を出し、犯罪に手を染めようとしている人は、失うものの大きさを考えて、思いとどまってほしい。このたびは本当に申し訳ありませんでした」と述べました。

判決は今月16日に言い渡されます。


藤田被告が一連の広域強盗事件に関与した経緯は

藤田被告は被告人質問で、フィリピンの特殊詐欺グループに加わり、一連の広域強盗事件で指示役を担うに至ったいきさつを明かしました。

北海道出身の藤田被告 札幌で渡邉優樹被告と知り合う

藤田被告は北海道函館市出身で、福祉関係の専門学校を出たあと、不動産関係の仕事などをしていました。

札幌市で暮らしていた27歳のころ、知人の紹介で、のちに特殊詐欺グループのトップとなる渡邉優樹被告と知り合ったといいます。

当時、渡邉被告は飲食店の経営やウォーターサーバーの販売などさまざまな仕事をしていて、藤田被告は渡邉被告とともに不動産関係の仕事などを始めました。

その後、2人は他人の家に侵入して金庫を持ち出す事件を起こし、いずれも実刑判決を受けたということです。

フィリピンで渡邉被告と再会 特殊詐欺グループに加わる

服役を終えた藤田被告は2017年ごろから建設関係の仕事を始めましたが、大けがをしたため1年ほどの間、仕事ができなくなりました。

当時、同居していた元妻から気分転換を勧められ、2019年7月にフィリピンに渡航しました。

渡邉被告がフィリピンにいるといううわさを聞いていて、困ったら助けを求められると思ったからだといいます。

その後、現地の特殊詐欺グループのトップとなっていた渡邉被告とカジノで再会します。

当時の印象については、「カジノで大勝ちしていて有名になっていた。羽振りがよさそうで、格が違う人間になっていた」と振り返りました。

藤田被告はフィリピンでFX取り引きをしていましたが、損失が出たため渡邉被告に相談したところ、特殊詐欺グループに入るよう勧められ、2019年9月ごろにかけ子や受け子を集める 「リクルーター」として組織に加わったということです。

当時、グループはマニラにある7階建てのホテルを拠点にしていました。

グループの幹部、小島智信被告は自身の裁判で「およそ60人の『かけ子』が寝泊まりしながら詐欺の電話を繰り返していて、月に2億円から3億円をだまし取ることに成功していた」と説明しています。

藤田被告は、このころ「リクルーター」は「かけ子」と兼ねる人も含めて20人あまりいたと明かし、自身はおよそ3000万円の報酬を受け取ったと述べました。

グループ拠点の摘発 特殊詐欺の収入絶たれる

2019年11月、拠点としたホテルがフィリピン当局の摘発を受けて36人のかけ子が拘束されました。

藤田被告は拘束を免れ「リクルーター」の業務を別のかけ子に引き継ぎ、一度グループを抜けたといいます。

ただ、グループのメンバーとの交流は続き、2021年2月、スキューバダイビングをしようとリゾート地に集まったところ、フィリピン当局に拘束され、その後、入管施設の 「ビクタン収容所」に収容されました。

渡邉被告と小島被告も2021年4月までに拘束され、特殊詐欺による収入は絶たれることになりました。

指示受け強盗事件に関与へ

藤田被告はビクタン収容所の状況について「定員を大幅に超える人が収容されていて、衛生状態は悪く、絶望的な気分だった。ほかの人が寝込みを襲われる様子も目にしていて、何人も人が死んでいたし自分も殺されそうになった。常に身の危険を感じ、気持ちが休まることはなかった」と振り返りました。

収容所には、渡邉被告や小島被告、それに渡邉被告とは別の特殊詐欺グループのトップ、今村磨人被告も収容されていました。

今村被告は2022年3月ごろから、「ルフィ」を名乗って日本の実行役らに収容所から指示を出し、強盗事件を起こすようになったということです。

その後、今村被告は渡邉被告に強盗事件への協力を求め、藤田被告は、渡邊被告の指示で事件に関わるようになったといいます。

弁護士から「断れなかったのか」と問われると、藤田被告は「渡邉被告との関係は北海道のころと大きく変わり、怖くて逆らえず、絶対的な立場だった。ただ、収容所で、グループからはじかれると生きていくのが大変で、やるしかないと思った」と話しました。

強盗事件でのそれぞれの役割は

強盗事件の主導権を握っていたのは今村被告で、ターゲットの情報を入手して犯行計画を練ったといいます。

藤田被告は、渡邉被告や今村被告に命じられて実行役への指示役を担うことになり、「キム」を名乗って秘匿性の高い通信アプリ「テレグラム」で実行役に犯行の計画を伝えました。

そして、犯行当日には、主に今村被告や藤田被告が「テレグラム」を通話状態にするなどして、実行役に現場での指示を出していたということです。

小島被告は、闇バイトで実行役をリクルートして、藤田被告に紹介していました。

渡邉被告は、奪った現金を日本からフィリピンに送る段取りをしたとされています。

一連の強盗事件への関与について、藤田被告は「報酬をもらえるとは思っていなかった」と述べました。

これに対し、検察は論告で「指示役らは、将来の逃走資金を獲得するために強盗事件を起こした」と主張しました。

藤田被告「後悔と反省と無念」

一連の事件について藤田被告は「今は本当に後悔と反省と無念しかない。ビクタン収容所という逃げられない環境で自分の命を守るために断れなかった。どういう言葉で反省を述べればよいか分からない」と述べました。

そのうえで、事件で亡くなった女性の遺族などへの思いを問われると、「怖い思いや苦しい思い、悔しい思いをされた。本当に申し訳ないと思っている」と述べました。


法廷で明らかになった狛江市の事件の詳細

2023年1月19日、東京・狛江市の住宅に実行役が押し入り、90歳の女性をバールで殴って死亡させた強盗致死事件は、どのように起きたのか。

藤田被告や、実行役のリーダー格で無期懲役の判決が確定した永田陸人受刑者が、法廷で詳しいいきさつを語りました。

グループチャットで犯行計画を実行役に伝える

被害者の住宅の情報を持ってきたのは今村被告で、藤田被告は、闇バイトなどを通じて実行役を集めました。

「テレグラム」で立ち上げたグループチャットには、「ミツハシ」を名乗った今村被告、「sugar」を名乗った渡邉被告、「キム」を名乗った藤田被告の指示役3人と、実行役4人のあわせて7人が参加しました。

チャットでは指示役から、宅配業者を装って侵入し、被害者に暴行を加えて金庫の番号を聞き出すことなど、犯行の計画を具体的に伝えたといいます。

藤田被告は 「大声を出されないようにのどやみぞおちを殴ってください」などと指示していました。

住人が不在で犯行を翌日に延期

1月18日、実行役4人は現場の住宅に車で向かいましたが、住人が不在だったため、永田受刑者はテレグラムの通話機能で指示役に報告しました。

今村被告が「空き巣でいいからやれ」と言ったのに対し、永田受刑者が「バールがなく金庫をあけられない」と反対して言い争いになった結果、翌日に延期することになり、実行役はバールを購入したといいます。

住宅押し入り暴行も「人違いですね」

1月19日、指示役3人はビクタン収容所の今村被告の部屋に集まり、それぞれ実行役と通話状態にしたまま、指示することになりました。

この日は被害者の女性が家にいたため、事前の計画通りに実行役2人が宅配業者を装って侵入し、残る2人も続いて侵入しました。

永田受刑者は女性に暴行を加えて「金はどこだ」と聞き、別の実行役にバールで殴るよう指示しました。

しかし、金品の保管場所がわからず、永田受刑者が女性の写真を送って確認を求めたところ、藤田被告から「あちゃー、人違いですね」と言われたため、「そちらの責任ですよ」などと怒ったといいます。

実行役は腕時計を奪って逃走したということです。

被告と受刑者の説明に食い違いも

藤田被告は被告人質問で「突入したあとは電波が悪くなり、指示はしていない。日本側の会話が聞こえなくなっていた。バールを凶器として使う話は聞いていなかった」と主張しました。

一方で、渡邉被告と今村被告が、実行役に対して「足を折ってしまえ」などと直接指示するのを聞いたと述べました。

これに対し永田受刑者は証人尋問で「突入したあと、藤田被告から『金庫の番号を吐かせて』と言われた。話の流れで、バールを凶器として使うことは、被告も認識していたと思う」と述べていて、一部で説明に食い違いも見られます。

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