ヒンズー教で牛を食べないのは、牛は神の化身だからである。
その原型はシヴァの乗り物“聖なる牛ナンディン”で、天界の聖なる牝牛スラビと聖仙カシュヤパの間に生まれた牡牛で、“幸福なる者”の意味である。
シヴァとナンディンを重ねて描いた絵も多く、その為、ナンディンはシヴァの化身と見なされる事もある。
また、シヴァの暗黒の化身バイラヴァは、顔は水牛で体は人間である為、牛頭天王(ごずてんのう)とも言われる。
このように、インドでは牛は神であるが、ヘブライでは偶像崇拝の対象だったのは金の仔牛(アモン)であり、偶像崇拝の神とされていたバアルも牡牛の姿をしている。
その為、シヴァに光の側面と暗黒の側面があるように、牛にも両方の意味が隠されている。
日本で牛に喩えられる神は、スサノオである。
スサノオは牛頭天王とも言われるので、シヴァが原型である。
スサノオは英雄神として祀られているが、高天原で暴れたことが原因で、天照大神が岩戸に籠もった事から、シヴァのような暗黒の側面がある。
一説によると、中国で有名な神農の発音は“スサ”と言うらしく、神農も牛頭人身だから牛頭天王である。
仏教では、牛頭天王は祇園精舎の守護神であり、 疫病をもたらす武塔(ぶとう)神とも呼ばれており、これも光の側面と暗黒の側面を併せ持つ。
つまり、流れ的にはシヴァ→牛頭天王→武塔神→神農→スサノオとなるのである。
あるいは、イラン高原南西部に建国したエラム人の国には、スサという都市があった。
エラム人はシュメールの地に浸入し、都市間の勢力争いに加わった。
そのスサの守護神はインシュウシナクと言い、後に冥界神となった。
スサノオは根の国=冥界に下ったので、冥界神と見なす事が出来るから、スサは“エラムのスサ”由来であるとも考えられる。
中国に於ける創造神もまた3人で、伏犠、女媧、神農であり、神農も三神の1人である。
この三神を三皇と言う。
伏犠、女媧の原型はヒンズーの蛇神ナーガとナーギであり、天地創造に関わるから、御父(均衡の柱、伏犠)と御子(慈悲の柱、女媧)に相当する。
ならば、神農は峻厳の柱に相当し、シヴァやスサノオの対応と一致する。
神農は農業などを人類に教えたから、エンリルにも相当し、峻厳の柱で一致する。
他に、神農は野草を片っ端から口にして薬草を発見し、漢方薬を見出したから、光の側面を持つ。
また、神農には炎帝という別名がある。
女媧が死ぬと、代わって伝説の黄帝が三皇に加わったが、炎帝と黄帝は仲が悪かった。
やがて戦いにまで発展し、炎帝が炎で地上を焼き尽くすと、黄帝は雷雨で応戦した。
その雨量は凄まじく、炎は下火となって炎帝は敗北し、南方へと追放された。
このように、神農には暗黒の側面もあり、シヴァの性質と一致する。
そして、中国では北は天帝の座で陽、南は陰である。
これは、天界(陽)から地上(陰)へルシファーが落とされた事にも対応している。
神農=炎帝は、後に西遊記に取り込まれ、火炎山に住む牛魔王とされてしまった。
なお、釈迦の正式名ガウタマ・シッダールタのガウタマは“最上なる牛”を、
シッダールタは“目的(実利)を成就せる者”の意味であるから、釈迦も牛に関係している。