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米国の名門大生が就職活動で8000社に断られた、という話が注目されています。 コンピューターサイエンス専攻の失業率が6.1%、コンピューター工学は7.5%。 皮肉なことに、哲学専攻の失業率3.2%のほうが理系より低いという数字が出ています。 これは単なる「就職活動の失敗談」ではありません。 日経の報道が引用した「low hire, low fire」という言葉を分解してみます。 「解雇もしないが、採用もしない」。 米国の労働市場でいま起きていることを表したフレーズです。 2026年4月時点で求人1件あたりの失業者比率は0.9——求人より失業者のほうが多い計算です。 離職率も7カ月連続で2.0%に固定されたまま。 従業員が「次の仕事がない」と感じているから職場を離れられない、という状況です。 企業が採用を絞る理由は明確です。 Meta・Microsoft・Googleによる新卒採用は2019年比で50%減少しています(SignalFire調査)。 その穴を埋めているのはAIエージェントです。 OpenAIのサム・アルトマンCEOは「AIエージェントはジュニア社員のチームのように機能する」と表現しました。 ここで見えてくるのは、AIが奪ったのは「仕事」そのものではなく、「経験を積む最初のステップ」だという点です。 初歩的なコード記述、バグ修正、書類作成。 これらはジュニア社員が実力をつけていくための仕事でした。 そこをAIが担うようになった結果、新卒が足を乗せるはずだった梯子の最下段が消えています。 LinkedInのエコノミストは「キャリアの踏み台が壊れている」と書いています。 企業の内部でも問題が表れ始めています。 あるビッグテック企業の中堅エンジニアは「ジュニアの求人が消え、その仕事がシニアに吸収された。AIで速度は上がったが、シニアが燃え尽きて辞めていく。補充されない」と証言しています(Fast Company・2026年2月)。 「AIが採用を削減した」という単純な因果関係には反論もあります。 MITテクノロジーレビュー(2026年5月)は「AIの影響が大きいとされる職種の失業率は、影響が少ない職種より実際には低い」とBLSデータで指摘しています。 関税リスク、連邦政府の雇用凍結、高金利の長期化——これらの要因も重なっています。 ただし新卒層に限定した場合、数字は逆転します。 22〜27歳の大卒者失業率は5.6%で、全体の4.2%を上回ります(ニューヨーク連銀・2026年)。 新卒は労働人口の5%を占めるに過ぎませんが、失業率上昇の12%に寄与しています。 5%の集団が12%の打撃を受けている。 対照的に、IBMは新卒採用を3倍に拡大しています。 「AIを使いこなす新卒は、シニアより価値がある場合がある」という判断です。 梯子の構造が変わりつつある——これが現在進行形の変容の実態です。 解雇はしない。でも採用もしない。AIを入れてコストを圧縮する。 その恩恵は株主に還流し、新卒には届かない。 これが「low hire, low fire」の実質的な意味です。 日本でも同じ力学が働き始めるとすれば、問われるのは「AIに何をさせるか」ではなく「誰の経験積み上げを守るか」という優先順位の問題です。
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日本経済新聞 電子版(日経電子版)
@nikkei
米名門大の秀才を襲う就職難「とにかく仕事が欲しい」 8000社玉砕、米国大卒の現実 nikkei.com/article/DGXZQO 「low hire, low fire」米国労働市場では、雇用の空きが生まれにくくなっています。