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【後編】はっぴーの家がギリギリ平和な4つの秘密を解き明かしたら、東大院生の人生にあらぬ影響を及ぼしてしまったらしい|はっぴーの家滞在研究記②

【前編】では、東大院生の彼女が健康を犠牲にしてまで「はっぴーの家」に居座った理由を紹介。

そして今回はいよいよ研究結果を発表。
ちなみに傍聴者は近所の人だけではなく、文化人類学者や大学教授、起業家などとコレまた様々な人が聞いてました。

健康を犠牲にして見つけた「カオスな家がギリギリ平和であり続けられる4つの秘密」と、「ガチの修羅場を笑いに変える」仕組みに迫りました。

はっぴーのここがヤバい!4つの秘密

ヤバさ①:「する・される」の関係が双方向的

普通の福祉施設や学校って、「ケアする側(大人・職員)」と「ケアされる側(高齢者・子ども)」にスパッと分かれがちですよね。

でも、はっぴーはここが全然違いました。

おせっかいを焼きまくる子供たち

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子どもって、どこに行っても「守られる対象・教育される対象」になりがち。
 
でも、はっぴーには「する側の子供」がめっちゃいます。
 
おじいちゃんたちが通りにくそうにしていたらサッと物を動かしたり、私みたいなよく分からん奴が来たら「なぁなぁ、それ何しとん?」って寄ってきて案内してくれたり。
 
麻雀会やファッションショーを自分で企画したり、結果として家事や災害などの緊急時にも自分たちで動ける子が育っています。

おせっかいを焼きまくるジジババたち

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高齢者や障害者の方も、「されるだけ」じゃありません。悩める若者の相談に乗ったり、子どもを見守ったり、ご飯を分けてくれたり。

「元理髪師」「元写真家」といった専門技能を活かす人もいれば、ビールを売ったり、イベントで絶妙なヤジを飛ばして盛り上げるおばあちゃんもいます。

ここまでを論文っぽくまとめると…… 

入居者から職員や子どもたちへ飲食物を差し入れたり、人生で培った技能や趣味を活用して場に役立てたりする行為は、「する・されるの非対称性(一方通行な関係)」を打ち崩す行為である。

と、言えます。

ヤバさ②:「共在(きょうざい)」の関係性がある

「共在」とは、文化人類学の言葉をベースにした概念で、「一言も喋っていなくても、名前すら知らなくても、ただ相手を感じ取れるだけで、そこにはもう共同性があるよね」ということです。はっぴーでは、これが日常に溶け込んでいます。

エピソード①:名前も知らない人のお葬式に参加したくなっちゃう

よく来ている方にインタビューした時のことです。

Q:「よくお葬式があるじゃないですか。亡くなった人の名前を知らなかった時はどうするんですか?」
A:「ああ、行ってるよ。名前を知らなくても、普段会ってた人が亡くなったら寂しいし、お別れを言いに行きたくなるかな」

これ、普通に考えたら意味わからないですよね(笑)。

話したこともないのに、顔を知っているから葬儀に行く。

これが、はっぴーの持つ「共在の力」です。

エピソード②:「音」を通して起こる、名もなき協力

真っ昼間のリビングで、おばあちゃんが倒れたときのことです。

意外なことに、みんなそっちをガッツリ見たりはしないんです。慌てているのは私や新人の職員さんくらいで、慣れっこの住人たちはテレビを見たり、食事の用意をしたり、自分の作業を続けている。

でも、リビング全体の音量が、すうっと大幅にダウンしたんです。

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誰も「静かにしよう」なんて言っていません。
学級委員もいません。
なのに、みんなが自分の立てる音を静かにしていく。

おばあちゃんの様子が「音」を通して把握できるような静けさに、リビング全体がなっていくんです。そして、おばあちゃんが無事だと分かると、大丈夫だと感じた人から徐々に元のボリュームに戻っていく。

普段はバラバラに過ごしているように見えて、何かの刺激がガンと加わると、話すことも名前を知ることもなくても、瞬時に協力できちゃう。

これが「共在」のすごさです。

ヤバさ③:「人の出入りの量」と「属性の多様さ」

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イベントじゃない通常の日でも、平均5〜15人が外部から来ています。私がデータを取った日は0歳から59歳までの人がいて、初訪問の人も意外なほど多い。

イベント時になると、0歳から99歳まで全年代が、東京・北海道・静岡・山口、あるいは「徒歩2分」のご近所から集まってきます。

関係性の深さも、大親友から「ちょっと知ってる人」「初めまして」までグラデーションが豊かすぎます。

ヤバさ④:立場に囚われない「重層的な関係性」

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ここが一番大事で、私の結論のような部分です。

普通、高齢者施設の「入居者」と「職員」の関係って、せいぜい「介護する・される」「ただ共にいる」の2つくらいですよね。

でもはっぴーでは、友人的、家族的、仕事の付き合い、ただ人として当たり前に叱る関係など、一人の人間に対して何個もの関係が重なり合っています。

その組み合わせを数えたら、なんと52種類もありました。
ご、…52って何ですか(笑)。

20のリアルなトラブル事例から見えた「対応フローチャート」

ここからが研究の肝です。
これだけ多様な人が集まれば、当然トラブルも起きます。

私は、暴力・暴言・窃盗・侵入・不審者との遭遇など、9種類・20個のガチなトラブル事例を分析しました。「東大の修士論文でこれ書いていいのかな……」と思いながら(笑)

そこで見えてきた、はっぴー独自の「困難への対応フローチャート」がこちらです。

第一段階:初期感情

トラブル直後、はっぴーの人たちは恐怖・不安・怒り・イライラ・しんどさをしっかり感じていました。

最初は「みんなネガティブな感情がない仏のような人たちなのか?」と思っていましたが、聞き取りをすると、全員ちゃんと最初はイライラしていました(…そう聞いて安心しました)。

第二段階:現場での対応

安全の確保はもちろんですが、それ以上に「関係性の維持」「状況の改善」「創造的な転換」といった、日頃の関係性に基づいた未来志向の対応が行われていました。

第三段階:感情の処理(どうやってネガティブを乗り越えるか?)

ここがめちゃくちゃ面白い仕組みになっています。

・人間理解による受容:
相手の文脈を理解することで「悪いだけの人じゃない」と気づく。自分の弱さも見せ合うことで関係が深まる。

経験の共有による感情転換:
恐怖や怒りを、他の人と分かち合ったり「ネタ」にしたりすることで、面白さや安心感に変えていく。

相対化による感情転換:
大変な状況がいっぱいありすぎると、1つ1つへの恐怖が逆に麻痺してなくなっていく(笑)。

あえてトラブルに対処しない:
今は何ともできないけど、時間が経てば許せるようになるかもしれない。あえて一回「置いておく」ことで、うまく解決することもある。

そしてもう一つ、はっぴーらしい方法を発見しました。
それが…

「首藤による創造的な状況転換」

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これが最高に頭おかしくて(笑)
かつ天才的でした。

ある日、障害をもった人が、悪気なくお会計を忘れて店を出てしまったそうなんです。普通なら警察を呼んで、こっぴどく叱って終わり。

ですが、首藤さんはどうしたと思います?

「あいつ、何食べたんやと思う?」
と、スタッフたちに聞き回ってクイズ大会に変えていました(笑)

これ、演劇用語でいう「異化効果」(暗い場面にあえてポップな曲をかけるような効果)なんです。ネガティブな出来事をちょっと面白くすることで、事件をポジティブな枠組みでみんなと共有でき、過去の問題から「この人は何が好きなんだろう?」という未来への視点に転換させてしまう。

首藤さんはこれを、おそらく無意識にやっているっぽいんです。

なぜ、はっぴーではこれができるのか?背景にある「4つの土台」

トラブルが起きても「あいつを追い出せ!」にならず、むしろ関係が深まっていくポジティブな循環。

これを支えているのが、4つの土台なんじゃないかと思いました。

①重層的な関係性:
先ほど書いた、52種類にも及ぶ豊かな人間関係。

人々の「流動性(オープンさ)」:
常にいろんな人が出入りしている。
これはジェイン・ジェイコブズの「街路の目」の理論と同じで、人目がたくさんあるからこそ過剰な暴力が見過ごされず、頼れる手が増え、結果的に安全性が上がるんです。
 
あえての「閉鎖性(クローズドさ)」:
はっぴーは超オープンに見えますが、実はしっかり「踏み絵」があります。看板はあえて出さないし、“はっぴーの家にお客様は必要ありません”と言い切っています。現場でも、あえて「放置」することで、お客様気分で馴染めない人は自然と帰り、それに耐えられるタフな人だけが溶け込んで残る仕組みになっています。

制度・役割の柔軟性:
「このトラブルにはこの人が対応する」と役割を固定しない。突発的なカオスに対して、みんなが柔軟に動ける余白を残しています。

まとめ:はっぴーの家が示した、これからの「暮らし方」

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「流動性・柔軟性・閉鎖性」のバランスで成り立つ日常

そこで生まれる複雑な関係性があるから、トラブルが起きてもみんなで乗り越えられる。乗り越えるから、また絆が深まる。

身体・精神・経済・コミュニケーション能力で人を選別・排除しない。
かといって、危険地帯にもならない。

そこそこ安全な状況で、大変な状況にある他者とも一緒にいられる暮らし方。

私はこの研究を通して、はっぴーのあり方を「動態的受容・多層的対応型」と名付けました。

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選ばれし者のエリートシェアハウスでも、
なんでもオッケーな危険地帯でもない。

「動態的受容対応型」=「カオス」🟰「はっぴーの家」

これからの限界社会を生きる私たちの、一つの大きな「答え」がここにあると思いました。

おわりに

最後に、個人的な話を少しだけ。

最初にハッピーに来たとき、首藤さんから「まだ(人生の方向性が)定まっていない人に影響を与えられたら面白そう」みたいなことを言ってもらった気がしています。

…安心してください、がっつり影響受けました(笑)。

元々は出産とか育児に全然興味がなかったんです。
でも、はっぴーと出会ったせいなのか、最近ちょっと興味が出てきています。パートナーとも、これからの今後のことを真剣に話し合ったりして、ちゃんと人生に向き合おうとしています。
はっぴーに出会わなかったら、きっと考えもしなかったな…。

ちょっと恥ずかしいですけど、これが私からみなさんへの、最大のお礼の気持ちです。

改めて64日間、本当にありがとうございました!

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