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悪意はすぐ隣に/Novel by 春風

悪意はすぐ隣に

5,529 character(s)11 mins

スバルくんって愛が重いですよね
サテラに負けてない

チョロくて愛が重いってメンヘラの典型なんですけど、スバルくんはメンヘラなんでしょうか

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『魔女の、臭い……』
『なにを呆けた面ァしてやがる。図星突かれて口も利けなくなったかよ、あァ?』
『その、魔女の臭いってのは……』
『あァ?』
『俺の体から漂ってるって悪臭は、墓所を出てから――『試練』のあとから漂ってきてるってことでいいのか?』
『……そうだよ。それまでは気にかかるほどじゃァなかったってのに、戻った途端にぷんぷん臭いやがる。中でなにやらかしったんだか知らねェが、その臭いをさせてやがる野郎を信用してやるほど、俺様ァお人好しじゃァねェんだ』
『いったい、俺とどんな因縁があるってんだよ……こっちの世界くるまで、超常現象ともなにとも無縁の生活だったぞ。こっちきてからだって、話題の魔女様と直接ご対面したことなんざねぇ……それどころか召喚されて六時間ぐらいで一回死んでるし』

「...スバルを、嫉妬の魔女が一方的に知ってるってこと?」
「それなら時系列がおかしくありませんこと?スバル様がルグニカに来たのは、嫉妬の魔女が封印された後でしょう」
「...そう、よね。なら、どうして……」

『てめェを墓所に近づけて、これ以上悪臭が増すのだけァごめんだ。今はまだ鼻が利く俺様ぐらいしか気付いちゃいねェが……このふんづまりにいるババアや他の連中だっていつ気付いてもおかしくねェ。もっと面倒な連中にもよォ』
『心当たりの一つや二つ、あるんじゃァねェか?てめェのその悪臭も今に始まったこっちゃねェだろが。その臭いを嗅ぎつけて、近づいてくるクソ共によォ』
『だから、とっとといっちまえ。今なら俺様ァなにもしねェ。明日以降も、大人しくしてるってんなら噛みついてやることもしねェ。だけどなァ、墓所に近づくこととやたらめったに俺様やババアに関わんな。互いに嫌な思いはしたかねェだろ』
『『グリンガムの尾を踏んで命拾い』ってなァ。気が変わらないうちに失せろや。俺様もできりゃァ、ラムに嫌われたかァねェんだ』
『それでいい。余計な真似だけァすんじゃねェよ。――俺様ァ今日から、『試練』が終わるまではここで過ごす。明日も明後日もその次も、朝も昼も夜も、てめェをこの先に進ませるつもりはねェ。よォっく、覚えとけよ』
『……ラムに嫌われないように、水浴びぐらいはしろよ』
『俺様の悪臭がてめェのそれよりひでェことになる前に、エミリア様が『試練』を突破できるよう尽くせ。――とっとと消えろ』

「魔女の匂い……これは厄介すぎるのよ。スバルが頑張ってどうこうなるものでもないかしら」
「ラムはガーフの気持ちを汲んであげたいところなのですが」
「ラムの気持ちも理解不能ではないのよ。ただ、今一番ガーフィールを責めているのは本人かしら。他人が何か出来る訳では無いのよ」

『少なくとも今夜はどうにもならねぇ。なにか、手を打たないと……』
『屋敷がエルザに襲われる。エルザ撃退の機会は、みすみす見逃しちまう』
『おい、おい、おい……これ、地味にヤバい状態なんじゃねぇか?』
『協力者を募ろうにも……ラムもオットーも、状況的に俺の味方じゃない』
『それじゃ襲撃に間に合わない。どうにか……できるのか?』
『『試練』はあの子を蝕み続ける。それでもあの子は周囲の期待と自分の願いのために、傷付いても進もうとする。そうだろ』
『負い目に思ってるから、なんとかしなくちゃいけないと思ってるから、だからあの子は過去を見て、それで苦しんでるんじゃないのか……』
『……俺は、君にどうするべきなんだろうな』

「...やっぱり、スバルは負担を背負いすぎだと思うの。私がもっと、ちゃんとしてたら...」
「……エミリア、それは...」
次の言葉は、喉から出てきてくれなかった。

『そうなってくると、やっぱり目下最大の障害は……ガーフィールか』
『より臭くなるのはできても、その臭さを消す方法がわからないからな……消臭剤的なもんで消えるとも思えないし。ってか、今の発言はどうなんだ。臭いとか臭くないとか、汚物か俺は』
『必然的にガーフィールの態度の軟化は望めない。それに、これはあんまり考えたくないことだけど……もしまた、しくじって『死に戻る』ことがあったら』
『繰り返してどうにかしてきたけど……やり直すたびに関係が悪くなる。やり直すたびに難易度が上がるってのは、さすがに初めてだ』
『振り返って凹む殺害数。この場合、被殺害数か?……ともかく、エルザの対策だな。つっても、殴り合いして俺が勝てるわけねぇし、実質戦えるのはロズワールかガーフィールの二択になっちまうな』
『屋敷襲撃前に『試練』を突破して『聖域』を解放して、ガーフィールと和解した上で屋敷に同行してもらって、エルザを撃退してハッピーエンド……だな』

「屋敷と聖域、どっちも対策しなきゃダメなのが辛いところね」
「...スバル、これはあまりにも厳しい戦局だ、君はどうやって……」

『なにか、腑に落ちんことでもあったかえ?』
『いや、こう言ったらアレだけど……なんつーか、想像と違うと思ってさ。ハーフエルフのエミリアが王城じゃけっこうな扱いだったわけだし、ハーフの人たちの扱いってどこでもこんななのかもってさ。だったら、ハーフの人たち側の感情も、純血種相手に複雑だったりするんじゃないかって思ってたんだが』
『なんじゃ、スー坊は見た目より色々と考えておるんじゃな』
『見た目より、は余計じゃね?少なくともガーフィールより知性派の見た目してる自信あるよ、俺?まぁ、頭回してないと色々と足りない我が身なんでな』
『足りない自分を自覚しとるなら上等じゃろ。足りないのがわかってて開き直っとるもんも中にはおるがの。……と、こっちじゃ』

「...スバルって、変なところで気が利くんだから。自分が大変な時に、余計なことまで考える必要ないのに」
「逆とも言えるんじゃないか〜ぁな?大変だからこそ、思考を回して気を逸らしたい。とも言えるけ〜ぇれど?」

『なんでこんなとこに盾?それも二組』
『ガー坊の持ち物じゃ。あ奴、ここを倉庫代わりにしておるからの』
『昔はよく、この家の外の草原で盾同士を打ち合わせておったもんじゃぞ。一個ずつ盾を持って、互いに打ちながらぐるぐるぐるぐると』
『ガーフィールと盾の打ち合いをしてた相手の名前、フレデリカだろ?』
『兄妹……いや、姉弟っぽい気がする。どっちかっていうと、フレデリカは姉タイプだ』
『なんともまあ……直感だけでそこまで見抜ければ上等すぎるじゃろう』
『スー坊の想像通り、盾の持ち主はフレデリカとガーフィールの姉弟。今は『聖域』を離れたフレデリカ・バウマンと、ガーフィール・ティンゼルは血を分けた家族じゃ』
『――今は互いにすれ違って、道を違えてしまっておるがな』

「...勘だけでそこまで見抜けていたなら、スバル様は探偵か何かになるべきですわ」
「スバルは勘が冴えてるやつかしら。それに、人をよく見てるかしら」

『『聖域』にいたはずのフレデリカは今、ロズワールの屋敷でメイド服着用してご奉仕中だ。けど、俺の知る情報を繋げるとこの状況がおかしい』
『ふむ、どうおかしい?』
『フレデリカがガーフィールの姉弟ってことは、あいつもハーフってことになる。そしてあいつがハーフってことは、この『聖域』の結界が解かれてない現状、外に出ることができないはずってことなんだよ』
『結界にはなにか抜け道がある。もしくは結界なんてそもそも嘘っぱち』

「...抜け道……」
フレデリカが声を落とす。
スバルの推理力は、時折恐ろしい。

『事実が発覚したときの反感を考えるとデメリットが大きすぎて現実性を欠く。だから後者の可能性は自動的に消去……で、前者だけが残ると』
『抜け道がもしも全員に適用可能だったら、時間はかかるかもだけど『聖域』の住人みんなそれで外に出してやれば、『試練』受ける必要もなくなるじゃねぇか』
『確かに『試練』を受けて得られるもんもあんだろう。正直、ちょっとした恩恵を受けた俺としてはそこは否定し切れねぇ。けど、『試練』――この場合は『過去』ってくくっちまっていいか。その『過去』と向き合うにしても、強制されるべきじゃないタイミングと相手ってのもあるだろう』
『それがエミリア様じゃと?だが、苦難は時期を選んで訪れてくれるわけではない。いずれ来る災厄を前に、今逃げてそれで……』
『逃げ切るなんて言ってねぇよ。ちゃんと迎撃するための準備をするために撤退すんだよ。いわば戦略的撤退ってやつだよ。不利なグラウンドで戦わなきゃいけない場面ってのもそりゃあるだろうけど、なるたけ有利なグラウンドを用意するために奔走するってのも当人と周りの器量だろ?』
『今、向き合わなくてもエミリアはいずれ必ず過去と向き合う。皮肉だけど、『試練』があの子にそれを思い出させちまった。だから忘れるにしても飲み下すにしても、あの子はそれを選ばなきゃいけない。それならできるだけ、苦しまずに済む状況を作ってやるのが俺の役割だ』
『……苦しいことから遠ざけてやろうとはする癖に、一番苦しいところからだけは逃がしてはやらんのじゃな』
『そこから逃げ出すってんならそれも選択だろうさ。あの子は……エミリアはそんなことしないって俺は信じてるけどね』
『どうしてそうまで信じられる?少なくとも、儂には無理じゃ。墓所から出てあれだけ取り乱していた姿を見て、そんな期待を抱くことは』
『だって俺、エミリアたんにぞっこんだし』
『俺はエミリアが好きで、超可愛いと思ってる。んで、俺の好きな超可愛いあの子はきっと、どんな辛いことも苦しいことも最後には乗り越えてくれる強い子だって信じてる。期待して期待して期待して、応えてくれるって信じてる』

「……ほんと、スバルってずるい」
期待という名の鞭で、座り込むエミリアを鼓舞するのだから。
「...でも、私は」
その瞳には、陰りはなかった。

『俺は尽くすよ、エミリアに。あの子が弱い部分を克服して、それで強くあろうって顔を上げてくれるって信じてるし、信じて正解だったぜってほくそ笑む展開を手繰り寄せるために努力する』
『『過去』と向き合うエミリアの隣に俺はいてやれない。『過去』に俺がいたんなら、蹲って泣いてるあの子の手を引いて立ち上がらせて、隣で精いっぱいエールを送ってやれただろうけど、そこに俺はいない。『過去』に起きた出来事に俺は関われない。手を伸ばしてもすかるだけで、テレビの中のドラマに視聴者は干渉できねぇんだからさ』
『何一つ報われないより、なにか一つでも報われてた方がいいに決まってる。『過去』と向き合うのに現実の俺は手を貸してやれない。けど、昔の足りなかった自分に今の自分が手を貸してやるのはルールに矛盾してねぇんだぜ?』
『俺は手を貸してやれないけど、俺の言葉とか行動とか愛情とか……まぁ俺を一番にしてくれたら嬉しいけど、それ以外にも色んな人からもらったもんとかが今のエミリアにはある。少なくとも『過去』のエミリアより持ち物は多い。使える武器が多いんなら、足りなかった『過去』に届くこともある。この『試練』ってのはそうやって乗り越えることを前提にしてる難易度だろ?』
『俺はエミリアを手助けする。あの子が『過去』を、今の自分で乗り越えられるよう十全を尽くす。そのためなら、抜け道だろうと横紙破りだろうとチート課金だろうとなんだってやってやるぜ。それが俺の尽くし方だ』

「...いやぁ、スバルきゅんってなんていうか……」
「愛が重い」
フェリスの濁した言葉をラムがずばっと言い切る。
「スバルきゅんってエミリア様に言われたら手首くらい普通に切り落としそうで怖いんだけど」

『スー坊、一つ良いことを教えてやろう。特別じゃ』
『儂は契約の関係上、『嘘』をつけないようになっておる。故に都合の悪い問いかけがされたとき、答えをはぐらかすためには沈黙を選ぶより他にない。例外はなく、誰のためであるかなどとも関係ない。『嘘』を禁じられておるのじゃ。儂だけでなく、この『聖域』の住人は誰もがな』
『今のが儂にとって、口に出せる限界の情報じゃ。これ以上を儂に問いかけるのは無理じゃぞ。契約を違えれば互いに不幸が起きる。ここより先を知りたければ、足を止めた儂ではなく、先へ行ったものへ問い質すことじゃ』

「嘘が……」
「……リューズ」

『先の話の続きなら聞けんからの。代わりに……まあ、他の話ならなるべく真摯に答えてやりたいところじゃ』
『それじゃお言葉に甘えるけどさ』
『ガーフィールの野郎の弱点とか嫌いなものとか、見ただけで卒倒するようなもんとかってなにかない?』
『スー坊、尽くし方がちょっと歪んでおったりする自覚はないかの?』

「スバル様らしいですわ」
「...ま〜ぁ、一番手っ取り早い手ではあるけどね〜ぇ」

『時間も時間だし、そろそろエミリアも起きるか。昨日の今日で心細くしてるだろうから、弱気になってるところにつけ込んで俺の存在を刷り込んでおこう』
『また明日はちょっと、傍を離れなきゃいけなくなっちまうからな』
『ここより深いところを知りたきゃ、足を止めた人じゃなく先へ行ったものへ聞け……ずいぶんと、回りくどい言い方しやがる』
『お前の不肖の弟と厄介な故郷の話、聞かせてもらえるって期待してるぜ、フレデリカ』

「...屋敷に来るということは……」
「エルザに...やられちゃうの、かしら」
「スバル……僕は……」
各々が傷を抱える。
聖域の悪夢はまだ序章であるが。

Comments

  • さづ

    メンヘラとスバルの違いないは愛してほしいか愛したいかかなと思う

    May 19, 2025
  • シン
    May 19, 2025
  • 勇者部顧問

    スバル、僕はBOTになっている人がいますねぇ……

    February 17, 2025
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