スバルとオットーが早朝に墓所へ行き、それにガーフィールがついて行くという一幕の後、暗転して夜に。
『夜にくると、さすがにお墓って感じがするわね。昨日より不気味に見える』
『もう、入っても大丈夫になってると思う?』
『十九時開店とか入口横に書いてればわかりやすいけど、特に書いてないからなぁ。夜に『試練』開始ってアバウトな感じなら、周り暗くなってるんだし十分に範囲内だと思うけど』
『そう。それじゃ、行ってこようかな』
『逆に『聖域』に残ってる面子全体で見ると、最小派閥に早変わりなんだよな。世知辛いっつうか、こっからだけど』
『なにぶつぶつ言ってるの?すごーく気になるんだけど』
『こっちの話。エミリアたんはこの先に備えてしっかり心の準備しといてよ。正味、『試練』の内容のことが聞き出せなかったから不安要素がすごいんだけど……』
『それがわからなかったのは、これまで『試練』に挑んだ人たちも同じでしょ。私だけズルするわけになんていかないもの。同じ条件で、それでも頑張る』
「……スバル……」
「試練の内容を聞き出せなかったのは痛いかしら……」
『とりま、中でなにがあるかわからないから、危険を感じたらすぐに声を出して。俺の名前を呼んでくれれば、すぐにでも飛んでいくから』
『心配してくれて、ありがと。……パックも全然顔を出してくれないし、すごーく不安なのはホントなの。今、私すごいスバルに寄りかかっちゃってる気がする』
『その調子でバンバカ体重かけてくれていいよ。エミリアたんてば羽みたいに軽いから、常に触ってないと本当にいるかどうか不安でさぁ』
『なんか、少しだけ肩が軽くなった気がする。初めて会ったときからだけど、スバルってひょっとして狙ってそういうことしてるの?』
『そんな一流のセラピスタなことができるなら、俺はぼっちになってあり余る時間で折り紙極めて『龍胆車』とか作ってる寂しい男の子じゃなかっただろうね』
『――今度こそ、行ってきます。無事に戻ってこれるよう祈ってて』
『仏の耳から血が出るぐらい願い事しとくよ』
「スバルって緊張を和らげてくれるから空気が嫌になっちゃった時はそばにいて欲しくなるのよね」
「…分かるのよ、今みたいな空気も、スバルがいたら……」
その続きを音にするのはやめた。
『――――!』
『墓所の灯りが、落ちちまったぞ!?』
『『試練』が継続している間は灯りはついたままになるはずじゃが……』
『つまり、イレギュラー発生ってことかよ?』
『スー坊!?お前、資格がないから入れないはずだったんじゃ……』
『ちゃんと講習受けて資格はもらっておいたんだよ。――中、俺が見てくる。エミリアたんがどうあれ、引っ張って戻ってくるからな!』
『くそ、失敗した。変に切り札みたいな雰囲気してないで、エミリアと一緒に中に入るべきだった……っ』
『――エミリア!!』
『――まずは己の過去と向き合え』
次の瞬間、耳元で何事かを囁きかけられる感覚が意識を揺さぶった。
その声がなんなのか、と考えるような暇もない。
膝が折れて、受け身も取れないまま、スバルの体が人形のように転倒する。
勢いのままに床を転がり、大の字になる体は偶然にもエミリアの傍らへ。
そして、意識のないエミリアの隣で、スバルもまた無意識の中へ引きずり込まれ――。
「スバル!」
「試練が……」