マンション大規模修繕の工期に遅れ、ナフサ由来の建築資材が入手困難…全国で590物件
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中東情勢を受けてナフサ(粗製ガソリン)由来の建築資材が入手困難となり、全国の約590物件のマンションで大規模修繕の工期に遅れなどが生じていることが、業界団体の調査でわかった。資材の値上げで工事費の増額に踏み切る施工会社も出ている。米・イランの戦闘終結が見通せない中、不安定な情勢は人々の住まいにも影響を及ぼしつつある。(広瀬航太郎)
足場に覆われてストップ
東京・神楽坂にある築13年の13階建てマンション。外壁や屋上などの大規模修繕工事で組まれた足場やネットが全体を覆う。工事は2月に始まり、6月末に終わる予定だったが、4月以降、ナフサを原料とする資材が入手しづらくなって一部の作業がストップ。終了時期が見通せなくなった。
ベランダの防水に必要なウレタン樹脂のほか、塗料や希釈材として使用するシンナー、外壁の接ぎ目やサッシの隙間を埋めるシーリング材など、工事資材の9割近くにナフサが含まれる。工事関係者によると、3月以降、40社以上の資材メーカーから受注制限などの通知が相次いだ。
マンションは東京スカイツリーを望む眺望が売りだが室内から外が見えにくくなっている。住人の男性(57)は「日中、家にいることが多い人は特にストレスがたまると思うが、静観するしかない」とこぼした。
買い占めも
マンション修繕の施工会社で作る一般社団法人「マンション計画修繕施工協会」は4月、会員企業に中東情勢の影響を尋ねるアンケートを行い、87社から回答を得た。このうち6割近い東京や大阪、福岡などの51社が、594物件について、工期が既に遅れているか、今後遅れる可能性があるなどと答えた。
大規模修繕は、建物の安全性や快適性を高め、資産価値の下落を抑えるため、管理組合が計画を立てて定期的に行う。同協会の林めぐみ事務局長は、「修繕が遅れれば、雨漏りなど想定外の不具合につながる恐れがあり、物件の価値にも影響する」と懸念する。
政府は建築資材を含むナフサ由来の化学製品について、「年を越えて確保できる」との立場だが、アンケートでは、「『入荷待ち』が多い」「納入の見通しが立たない」などの回答が相次いだ。「職人の仕事がなくなり、他業種へ転職する恐れがある」といった経営への不安の声もあがった。
関東地方でマンション修繕を手がける施工会社の役員によると、3月以降、一部の施工会社による資材買い占めも起きた。役員は「資材が適正に流通するよう、国は販路のチェックを強化するべきだ」と訴える。
交渉トラブル
ナフサの供給停滞による資材の高騰も起きている。
マンション修繕工事のコンサルティング会社「スマート修繕」(東京)によると、資材の値上げを受けて既に複数の施工会社が工事費の増額を管理組合側に提示している。折り合えずに修繕計画が進まない事例もある。資材の値上げ幅を上回る増額を提示する会社もあるといい、スマート修繕には、「増額を提示されたが、金額が妥当なのか」などと組合側から数十件の相談が寄せられている。
同社執行役員の別所
積立金20年前の4割増
マンションの修繕工事費は、中東情勢の悪化以前から高騰している。工事費は、管理組合が区分所有者から毎月集める「修繕積立金」で賄われるのが一般的で、所有者側の負担は増している。
国土交通省が2023年度に行った管理組合向けの調査によると、1戸当たりの修繕積立金の平均月額は1万3054円。過去20年間で4割以上増えた。積立金が計画より不足しているマンションも37%に上った。
マンション修繕に詳しい明海大の小松広明教授(不動産ファイナンス)は、築年数が古いマンションの増加や職人不足が、工事費や積立金の上昇につながっていると指摘。「中東情勢のような様々なリスクが影響し、今後も工事費は上がる可能性がある。物価上昇を考慮した修繕計画を立て、積立金を運用するなどして備えることが重要だ」と強調する。