正当化される病院の空爆 紛争下で医療支援者に託された「希望」
武力紛争下での医療活動の保護を求める国連決議が採択されて、5月で10年となった。しかし、紛争地で医療支援をする国境なき医師団(MSF)日本の村田慎二郎事務局長(49)は「医療への攻撃はむしろ増えている」と訴える。
毎月のように続く攻撃
MSFによると今年2月、内戦が続く南スーダン東部ジョングレイ州で、MSFが支援する病院が空爆を受けた。地域で唯一、入院に対応できる2次医療施設だった。外科、産婦人科、救急医療の機能を備えていたが、再開できないほど建物は破壊されたという。
スーダンでは3月にも東ダルフール州で病院が空爆され、子どもを含む70人が命を奪われた。4月にも別の病院が攻撃され、10人が犠牲となった。「地域の人たちは医療を受ける選択肢すら失われた。攻撃は一時の被害にとどまらない」
イスラエルの侵攻が続くレバノン南部では、MSFが支援する病院にドローンの爆発で重傷を負った民間人らが次々と運び込まれている。現地では医療スタッフが何人も殺害され、救急車も攻撃を受けているという。
紛争下にあっても医療は守られなければならない。負傷者や病人、医療従事者、病院、救急車などを攻撃してはならないという原則は、国際人道法で定められている。
国際社会が改めてこの原則を確認したのが、2016年5月3日に国連安全保障理事会が全会一致で採択した決議だった。「医療を守るためのルールを新しく作ったのではなく、国際人道法の原則を政治的に確認した決議にすぎなかった」。だが、それすら十分に守られてこなかった。ウクライナやパレスチナ自治区ガザ地区では最前線の医療施設の多くが攻撃を受けている。
医療への攻撃を正当化する風潮
MSFによると、世界保健機関(WHO)の「医療への攻撃監視システム」で医療施設への攻撃は25年、1348件報告され、1981人の医療従事者と患者が殺害された。死者は24年の944人から倍増した。スーダンで1620人▽ミャンマーで148人▽パレスチナで125人▽シリアで41人▽ウクライナで19人が殺されたという。
かつて、病院への攻撃は「誤爆」や「巻き添え被害」と説明されることが多かった。だが近年は「対テロ」や「国家安全保障」の名の下に、医療施設への攻撃を正当化する考え…
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