Illustriousで育てた自分の画風をAnimaへ移植する -80枚のイラストからLoRAを作る手順-
はじめに
前回の記事では、Illustrious環境からStable Diffusion WebUI Forge - Neo+Anima環境へ移行する手順を紹介しました。
実際に移行してみて、Animaの表現力にはかなり驚かされました。
自然文でプロンプトを書けることや、タグだけでのキャラクター再現の高さなど、これまでのモデルとは違う感覚があります。
しかし、移行直後に感じたことがありました。
それは、「綺麗だけど、自分の絵じゃない」ということです。
長い間 Illustriousでイラストを作ってきたので、自分なりの絵柄や塗りの傾向があります。
Animaは非常に優秀なのですが、そのままでは私がこれまで作ってきたイラストとは少し雰囲気が違いました。
そこで今回は、Illustriousで制作した約80枚のイラストから、自分専用の画風LoRAを作成してみました。
この記事では、その手順と実際の結果を紹介します。
完成した結果
まずはこちらをご覧ください。
まぁ、Anima単体でもそこそこ作成できています。
しかしLoRAを適用すると、これまで私が作ってきたイラストの雰囲気や塗り、線の印象がかなり戻ってきました。
完全に同じになるわけではありません。
ですが、Animaの表現力を維持したまま、自分の画風を再現できるようになったというのが率直な感想です。
本当に80枚で学習できるの?
できます。
むしろもっと少ない枚数でも行けると思います(30枚とか)。
今回の学習条件はこちらです。
・学習画像:約80枚
・用途:キャラクターLoRAではなく画風LoRA
・学習時間:約10時間
・学習回数:10epoch (何回学習させたかの単位)
・環境:RTX 5060 Ti 16GB
「数百枚や数千枚用意しないと無理」ということはありませんでした。
もちろん枚数は多い方が有利ですが、画風LoRAであれば80枚でも十分反応します。
一番重要だったのは画像選び
実は今回の作業で一番重要だったのは学習設定ではありません。
学習画像の選定です。
私は過去に生成したイラストの中から約80枚を選びました。
選定基準は以下です。
・自分らしい絵柄が出ている
・塗り方が近い
・色使いが近い
・顔の描き方が近い
・画質が安定している
・余計な文字やロゴが少ない
今回は画風LoRAなので、キャラクターを揃えるよりも、絵柄の一貫性を揃えることを優先しました。
今回使用したツール
今回は以下の環境を利用しました。
・anima-lora-workspace
・sd-scripts
・Codex (手動で頑張れる方は不要です)
Anima向けのLoRA学習環境はまだ情報が少ないですが、この組み合わせで問題なく学習できました。
claudeやcodexを使える方はなるべく作業や環境構築を自動化したほうが良いです(本業エンジニアの私でも結構手でやるのは辛いです)
学習の流れ
作業の流れは非常にシンプルです。
① 学習画像を集める
↓
② WD14 Taggerでキャプション生成
↓
③ Codexでキャプション整理
↓
④ 学習設定を作成
↓
⑤ LoRA学習開始
↓
⑥ 完成
次の章から手順の詳細をまとめていきます。
まずは学習環境を作る
「よし、自分も画風LoRAを作ってみよう」と思った方もいるかもしれませんが、いきなり学習はできません。
まずはLoRAを学習するための環境を作る必要があります。
私が利用した環境のフォルダ構成はこんな感じになりました。
C:\kohya
├─ sd-scripts
└─ anima-lora-workspace簡単に説明すると、
sd-scriptsが学習エンジン本体です。
そしてanima-lora-workspaceは、
・学習画像
・キャプション
・設定ファイル
・出力LoRA
などをまとめて管理するための作業フォルダになります。
※ここから先、Gitとは何か?Pythonとは何か?の説明はさすがに端折ります
Gitをインストールする
まずはGitをインストールします。
インストール後、PowerShellを開いて以下を実行します。
git --versionバージョンが表示されればOKです。
Pythonをインストールする
続いてPythonをインストールします。
私の環境ではPython 3.10系を利用しました。
インストール時は、
Add python.exe to PATHにチェックを入れておきます。
インストール後、
python --versionを実行して確認します。
sd-scriptsをダウンロードする
次に学習スクリプト本体であるsd-scriptsを取得します。
私はCドライブ直下に「kohya」というフォルダを作ってその中に構築しました
cd C:\kohya
git clone https://github.com/kohya-ss/sd-scripts.git完了すると、
C:\kohya\sd-scriptsが作成されます。
Python仮想環境を作る
続いて仮想環境を作成します。
cd C:\kohya\sd-scripts
python -m venv venv作成後、
.\venv\Scripts\activateを実行します。
PowerShellでスクリプトを実行できるようにする
環境によってはPowerShellスクリプトがブロックされる場合があります。
その場合は管理者権限でPowerShellを開き、
Set-ExecutionPolicy RemoteSignedを実行します。確認画面が出たら「Y」を入力します。
PyTorchをインストールする
続いてPyTorchをインストールします。
私の環境はRTX 5060 Tiだったため、新しめのPyTorch環境を利用しました。
GPUによって推奨バージョンが異なるため、この部分はsd-scripts公式READMEも確認してください。
必要なライブラリをインストールする
次にsd-scriptsの依存ライブラリをインストールします。
pip install --upgrade -r requirements.txtここは少し時間がかかります。
コーヒーでも飲みながら待ちましょう。
accelerateを設定する
Animaの学習ではaccelerateを利用します。
accelerate configを実行します。
私は以下のような設定にしました。
This machine
No distributed training
bf16anima-lora-workspaceを作る
続いて作業用フォルダを作成します。
mkdir C:\kohya\anima-lora-workspaceさらに、
configs
datasets
logs
outputs
wd14_tagger_modelなどのフォルダも作成します。最終的にはこんな感じになります。
C:\kohya\anima-lora-workspace
├─ configs
├─ datasets
├─ logs
├─ outputs
├─ wd14_tagger_modelCodexにも手伝ってもらう
今回の記事では何度かCodexが登場します。
正直なところ、
・PowerShellスクリプト作成
・キャプション整理
・ファイル一括編集
といった作業を全部手作業でやるのは面倒です。
そこで私は、
「こういうスクリプトを作って」
「このフォルダ内のファイルを一括修正して」
とCodexへ指示を出しながら進めました。
実際、人間がやるべきなのは
・何を学習したいか決める
・学習画像を選ぶ
・結果を確認する
くらいです。
上の章の環境構築もすべてAIに任せた方が圧倒的に楽ですし、設定ミスなどが減ります。codex・claudeを導入をおすすめします。
ここまで準備できれば環境構築は完了です。
最初だけ少し手間がかかりますが、一度作ってしまえば次回以降は画像を入れて学習するだけです。
では実際に学習データを作成していきましょう。
WD14 Tagger用スクリプトを作る
学習画像のキャプションを作成するために、WD14 Taggerを利用します。
この作業は、イラスト1枚1枚に対して、「このイラストはこういうイラストです」という説明のタグを付けていくことを指します。
今回は毎回長いコマンドを入力するのが面倒だったので、PowerShellスクリプト化しました。
ファイル名は以下です。
tag_images_wd14.ps1このスクリプトの役割は、
・学習画像フォルダを読み込む
・WD14 Taggerを実行する
・画像ごとのtxtキャプションを生成する
というものです。
下記が私が実際にCodexに作らせたファイルなので、参考にしてください。
WD14 Taggerを実行する
学習画像を
datasets\style_train\10_my_styleへ配置したら、WD14 Taggerを実行します。
PowerShellで以下を実行します。
.\tag_images_wd14.ps1初回実行時はWD14モデルのダウンロードが入るため少し時間がかかります。
しばらく待ちましょう。
完了すると、
image001.png
image001.txtのように、画像と同じ名前のtxtファイルが生成されます。
中を開くと、
のようなタグが自動生成されています。
80枚分のタグ付けも、基本的には待っているだけで完了しました。
ここも手作業で1枚ずつタグを書く必要はありません。
まずAIにタグを付けてもらい、その後必要な部分だけ整理する流れになります。
そして、全txtの先頭に
rockeyというトリガーワードを追加します。
生成時にこの単語を使うことで、自分の画風を呼び出せるようになります。
皆さんは自分の名前などを入れておいてください。
キャプション整理もCodexに任せた
WD14 Taggerでキャプションを作成したら、そのまま学習に使うわけではありません。
ただし、80枚分のテキストファイルを手作業で修正したわけでもありません。
さすがにそれは大変です。今回はCodexに指示を出して、一括で整理してもらいました。
私が行ったのは、
・すべてのキャプションの先頭に rockey を追加する
・画風と関係のないタグを削除する
という指示を出しただけです。
例えば、
masterpiece
best quality
absurdres
rating safe
watermarkといった品質タグやメタ情報は画風学習には不要なので削除対象にしました。
結果として、80枚分のキャプション整理は数分で完了しました。
今回のLoRA作成全体を通して感じたのは、人間は判断だけを行い、作業はAIへ任せるというやり方が非常に相性が良いということです。
私が実際に行った作業は、
・学習画像を選ぶ
・Codexへ指示を出す
・学習結果を確認する
このくらいでした。
キャプション整理やファイル編集のような単純作業は、ほとんどAIに任せています。
そのため、思っていたよりずっと少ない手間で画風LoRAを作成できました。
LoRA学習開始
ここまで準備できたら、いよいよ学習を開始します。
本来は accelerate launch anima_train_network.py のような長いコマンドを毎回入力する必要があります。手作業で行うのはかなり面倒です。
そこで私はCodexに依頼して、学習用のPowerShellスクリプトを作成しました。作成したファイルはこちらです。
train_anima_style_lora.ps1こちらもダウンロードして参考にしてみてください。
このスクリプトの中で、
・Anima本体
・Text Encoder
・VAE
・dataset設定
・出力先
・学習パラメータ
などをまとめて指定しています。(前回の記事で指定したフォルダを見ているので、もし別のパスに配置している場合は修正してください)
そのため学習時は、複雑なコマンドを覚える必要はありません。
まずPowerShellを開きます。Windowsキーを押して
PowerShell続いて学習フォルダへ移動します。
cd C:\kohya\anima-lora-workspace移動できたら以下を実行します。
.\train_anima_style_lora.ps1(ファイルを右クリックして「Powershellで実行」を選択しても実行できます)
正常に開始すると、PowerShell上に大量のログが流れ始めます。
正直、このログを全部読む必要はありません。
エラーが出ていなければ基本的には大丈夫です。
私も最初は不安でしたが、実際には学習開始を確認したらそのまま放置していました。
今回の学習条件は以下です。
・学習画像:約80枚
・10epoch
・RTX 5060 Ti 16GB
学習時間はおよそ10時間でした。
私は夜寝る前に実行して、そのまま翌朝結果を確認しました。
学習が終わると、
C:\kohya\anima-lora-workspace\outputsの中に複数のLoRAファイルが出力されます。
例えば、
my_illustration_style_anima_lora-000001.safetensors
my_illustration_style_anima_lora-000002.safetensors
...
my_illustration_style_anima_lora-000010.safetensorsのようなファイルです。
ここで、「なんで10個も出てくるの?」と思うかもしれません。
これは今回の学習設定で
epoch = 10としていたからです。
epoch(エポック)とは、「学習画像を何周したか」を表しています。
今回の場合、約80枚の画像を使っています。
1epochで80枚を1周学習し、
2epochで2周目、
3epochで3周目、
というイメージです。
つまり、
000001は画像を1周学習した状態、
000005は5周学習した状態、
000010は10周学習した状態です。
では、「数字が大きい方が良いの?」というと、必ずしもそうではありません。
学習を進めると、最初は画風を覚えていきます。
しかし学習しすぎると、
・顔が固定される
・構図が固定される
・元画像を覚えすぎる
といった現象が起きることがあります。
これを一般的に「過学習」と呼びます。
そのため、学習が終わったら実際にLoRAを使って出力テストを行います。
私は
000001
000003
000005
000007
000010のようにいくつか試して比較しました。
すると、
・まだ画風が弱いもの
・ちょうど良いもの
・少し学習しすぎているものが見えてきます。
今回の私のケースでは、一番最後のLoRAが必ずしもベストではありませんでした。
実際に出力して比較し、最も自分の画風を再現できているものを採用しています。
LoRA作成で大事なのは、「学習を終わらせること」ではなく「実際に使って比較すること」です。なので学習が終わったら、まずは何種類か読み込んで試してみることをおすすめします。
実際に使ってみた感想
完成したLoRAをAnimaへ読み込んでみました。
rockey,
<lora:my_illustration_style_anima_lora:0.7>強度は0.6〜0.8程度が使いやすかったです。
あまり強くすると構図や顔まで固定されやすくなりました。実際に使ってみて感じたのは、「Animaの上に自分の画風を重ねる感覚」です。
Illustriousを完全再現するというより、Animaの高い表現力を残したまま、自分らしさを取り戻すことができました。これが今回一番の収穫でした。
この方法はキャラクターLoRAにも応用できる
今回私が作成したのは画風LoRAです。
そのため、
・同じ塗り
・同じ色使い
・同じ雰囲気
を重視して学習画像を選びました。
しかし、この考え方はキャラクターLoRAにも応用できます。違いは非常にシンプルです。
画風LoRAでは「絵柄を揃える」ことを重視しました。一方でキャラクターLoRAでは「キャラクターを揃える」ことを重視します。
例えば、
・同じキャラクター
・様々な表情
・様々なポーズ
・様々な服装
といった画像を集めて学習させれば、そのキャラクター専用のLoRAを作ることができます。
実際の学習手順はほとんど変わりません。
① 学習画像を集める
② WD14 Taggerでタグ付け
③ Codexで整理
④ 学習開始
⑤ 完成
という流れは同じです。
今回の記事では画風LoRAを例にしましたが、
この方法を応用すれば、
・オリジナルキャラクター
・二次創作キャラクター
・自分専用キャラクター
などのLoRA作成にも応用できます。
今後時間がある時に記事にします。
やってみて分かったこととまとめ
今回の学習で特に感じたことはこちらです。
・80枚でも十分学習できる
・設定より画像選びの方が重要
・キャプション整理はAIに任せられる
・毎epoch確認した方が良い
・Anima単体より自分らしい絵になる
特に画像選びは本当に重要でした。
同じ80枚でも、方向性がバラバラだと結果はかなり変わると思います。
逆に言えば、画像選びさえしっかりできれば、残りの作業はかなりAIに任せられます。
最初は、「Animaは綺麗だけど自分の絵じゃない」と感じていました。
しかし画風LoRAを作成したことで、Animaの表現力と、自分がこれまで育ててきた画風の両立ができるようになりました。
もし私と同じように、「Animaへ移行したいけど、今までの絵柄は残したい」と思っている方がいたら、一度画風LoRA作成に挑戦してみることをおすすめします。
思っているよりずっと簡単ですし、面倒な作業の多くはAIに任せることができます。
おまけ:AIアシスタントに環境構築と学習を手伝ってもらう
ここまで読んで、「やってみたいけど、環境構築や設定が面倒そう…」
「エンジニアじゃないから理解できない…」と思った方もいるかもしれません。
そこで、今回の記事を書くにあたって、環境構築手順と学習手順をMarkdownにまとめました。
添付しているファイルはこちらです。
この2つのファイルには、
・環境構築
・WD14 Tagger
・キャプション整理
・dataset設定
・sample prompt設定
・LoRA学習
・再学習
までの手順をまとめています。
使い方は簡単です。普段使っているAIアシスタントに、
このMarkdownを読んで、私の環境向けにLoRA学習環境を構築してください。と依頼するだけです。
例えば、
・Codex
・Claude Code
・Cursor
・Cline
などのローカルファイルを操作できるAIアシスタントであれば、かなりの部分を自動化できます。
この記事を読んで、学習環境が作れた!Animaに移行できた!という方、特にお礼はいらないので、Xをそっとフォローしていただき、他の方にも拡散していただけるだけでも嬉しいです。
では、良きAIイラスト作成ライフを。
Anima完全に理解したので、これまでIllustriousでイラストを作ってきたけど、Anima使ってみたい、でも移行方法がよく分からないという方々向けに記事を書きました。
— Rockey (@rockey2799m) May 30, 2026
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