ネット上でアイヌ民族が標的にされるようになったのは、2010年代後半のことだ。在日コリアンへのヘイトデモが社会問題になった時期と重なるように、今度はアイヌの先住性そのものを否定する言説がXや掲示板に広がりはじめた。
そして、それは今や国会でも争点のごとく扱われる事態になっている。
日本保守党の百田尚樹代表は4月6日の記者会見で、アイヌを「先住民族」と認める政府方針について「大きな過ちだ」と言い切った。
同席した有本香事務総長も「北方から異民族が入り、縄文系の日本人と混合した人たちが後にアイヌと言われる人たちだ」と続け、2008年の国会決議については「ひっくり返すべきだ」とまで述べた。背景には中国の働きかけがあったとも語った。Xはその日のうちに沸騰した。
黄川田アイヌ施策担当相が「先住民族との認識」
ここで確認しておきたいのは、既に日本政府はアイヌを先住民族とする見解で一致していること。2019年施行の「アイヌ施策推進法」だ。政府の有識者懇談会が2009年にまとめた報告書を下敷きにアイヌを先住民族として認定している。
ここで先住民族の定義は「国家の統治が及ぶ前から居住し、独自の文化とアイデンティティーを喪失することなく同地域に居住している民族」とされている。百田発言は、その法的根拠そのものに「過ちだ」とレッテルを貼ったことになる。
これには政府も反応。木原稔官房長官は同8日の会見で「個々の政党代表の発言であり、政府の立場でコメントを差し控える」と述べ、火消しにも加担にも回らない姿勢を選んだ。
しかし、2日後には黄川田仁志アイヌ施策担当相が「日本列島北部周辺、とりわけ北海道の先住民族だとの認識に変わりはない」と正面から反論したのである。専門家などからも、百田氏の発言に対して学術研究を無視しているという批判が相次いだ。