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映画『海街diary』を11年ぶりに見て気づかされるこの映画の「致命的な」構造

コラムニスト
写真:Shutterstock/アフロ

『海街diary』は2015年の映画

映画『海街diary』が地上波で放送された。

いまから11年前の2015年の映画で、四姉妹を演じた役者の当時の年齢は、綾瀬はるか30歳、長澤まさみ27歳、夏帆23歳、一番下の妹広瀬すずが16歳である。(カンヌ出品時点)

この物語は、吉田秋生の原作漫画の世評が高かった。

映画もまた、綾瀬はるか、長澤まさみ、夏帆、広瀬すずの配役がみごとで、いまあらためて見てもそうおもう。

気持ちのいい姉妹の物語

物語は三人の姉(綾瀬、長澤、夏帆)の住む鎌倉に、「会ったことのなかった異母妹(広瀬)」を迎え入れるお話として始まる。

自分たちの家族を壊した女性とのあいだにできた子であるにも関わらず、姉3人が屈託なく迎え入れるところがいい。

気持ちのいい姉妹の物語である。

「あとづけの家族」の日常を丁寧に描き、多くの人の心に届いた。

そんなにいいことが起こるわけではない物語

四姉妹の日常を描くが、いまいちど見直すと、そんなにいいことが起こっているわけではない。

長姉は妻のいる医師との関係が行き詰まり、次姉はいつもろくでもない男と付き合うことが多く、今回も金を貸した男に逃げられる。

引き取られた末妹は、かなり気を遣って暮らしている。のびのびとしているわけではない。

喪服のシーンが多い映画の意味すること

不幸のほうが目立つお話である。

姉二人の失恋もそうだし、「父の葬式」から始まり、祖母の法事で「何年も会っていなかった母と再会するが気まずくなる」シーンがあって、最後は姉妹が家族のように付き合っていた近所の食堂のおばさん(風吹ジュン)の葬式からのシーンで終わる。

喪服の姉妹を眺めているシーンが多い。(末娘は中学生なので制服である)

喪服の映画というところが象徴的である。

生と死を描きながらも幸せな気分になれる

幸運なことが起こるわけではないのに、でも見ていて幸せな気分になれる物語でもある。

そこがすごい。

生と死を描きながら、きちんと「生きること」に比重を置いて描いているからだろう。

あなたみたいな宝物をこの世に残せた

物語の最後のほう、病気になった食堂のおばちゃんが、末妹にむかって「あなたのお父さんとお母さんがうらやましいわ」という。

「だって、あなたみたいな宝物をこの世に残せたんだもの……」と続けてやさしく微笑んだ。

またさらにその食堂のおばちゃんの葬式後、長姉が、次姉と三姉に向かって「お父さん、ダメな人だったけど優しい人だったよね……だって、こんな妹を残してくれたんだもの」と呟き、二人の妹も同意する。

ここがこの物語の芯なのだろう。

残された者はきちんと生きる

人は死ぬ。残った者は、きちんと生きる。

言ってしまえばそれがテーマとなるが、そんなこと文章にして伝えたところでほぼ意味がないから、だからこそ2時間余の映像として作られている。

みんな、他人にやさしい。たぶん、それが「きちんと生きる」ことなのだろう。

人はモータルで致命的な存在でしかない

人はいつか必ず死ぬ。

モータルな存在であって、言ってしまえば、すべての生命は「致命的な」存在でしかない。

度合いが違うが、みなモータルで、致命的なのである。

この物語は、「人であるかぎり、かならず死ぬもので、それは致命的存在でしかない」ことを描いてあますところがない。

おもいつきのような幸せ

原作の漫画でも、そして映画でも「もう一度見たい」とおもうシーンは、長姉が会ったばかりの末妹に「鎌倉で一緒に住まない?」というシーンである。

「新しい家族が生まれる瞬間」がいちばん盛り上がる。

次姉も三姉もやさしく妹を見つめ、末妹は驚いて、そして救われたような表情になる。

おもいつきのような幸せ

見ていると、この「おもいつきのような幸せ」がずっと続くことを望む。

そして、その関係だけはずっと続く。

「生まれることだけで人を幸せにする」ということだろう。

そこに気づくと揺さぶられるような感覚になる。

気動車の階段を上がって声をかける

長姉が末妹に「一緒に暮らさない?」と声を掛けたシーンのアングルが見事である。

ローカル線の車両に乗りこんだところで、三姉妹が並んで声を掛ける。

あまりに田舎なので、この車両は「電車」ではなく、いわゆる「気動車」(汽車)でドアから入って段を上がらないと車内に入れない。

姉たちは三段上にあがって、その場所から下にいる末妹に声をかける。

この構図があたたかい。

あたたかさを感じさせる構図

見ているうちに、自分さえ(綾瀬はるかや長澤まさみなどよりはるか年上の自分でさえ)年上のお姉さんに見守られている気分になる。

四姉妹をどのポジションで撮るのか、入念に考えて撮られているからだろう。

この映画の暖かさはその映像の力なのだとあらためて気づく。

長澤まさみがもっとも背が高くて、綾瀬はるかがそれよりちょっとだけ低く、夏帆がまた少しだけ低く、広瀬すずだけが、ちょっと小さい。

その並びが、まさに『海街diary』らしい世界で、彼女たち4人が並んだその後の世界をまた見てみたいという気持ちにさせる。

豪華な出演陣であった。

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ありがとうございます。
コラムニスト

1958年生まれ。京都市出身。1984年早稲田大学卒業後より文筆業に入る。落語、ディズニーランド、テレビ番組などのポップカルチャーから社会現象の分析を行う。著書に、1970年代の世相と現代のつながりを解く『1971年の悪霊』(2019年)、日本のクリスマスの詳細な歴史『愛と狂瀾のメリークリスマス』(2017年)、落語や江戸風俗について『落語の国からのぞいてみれば』(2009年)、『落語論』(2009年)、いろんな疑問を徹底的に調べた『ホリイのずんずん調査 誰も調べなかった100の謎』(2013年)、ディズニーランドカルチャーに関して『恋するディズニー、別れるディズニー』(2017年)など。

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