“お試し”でいいのか! 「高市1強」改憲論議のフワフワ感
果たして「緊急事態」「合区」が焦点なのか?
「1強」とされる高市早苗内閣で憲法改正論議が勢いを増している。緊急事態条項などが議論となっているが、果たしてそれが改憲の本当の焦点なのか。自民党内からも“お試し改憲”との批判も出て、なにやらフワフワ感が否めない。政治の国民への発信は十分になされているのだろうか。(ジャーナリスト・鈴木哲夫/サンデー毎日6月7日号掲載)
憲法改正へ向けて衆院憲法審査会の議論が活発化している。しかし、その議論の中身に自民党のベテラン議員は冷ややかだ。
「永田町ではこう言われている。『お試し改憲だ』と。その通りだ。情けない」
このベテラン議員は一貫した改憲論者である。にもかかわらず、こう続ける。
「議論になっているのは、緊急事態条項、または隣接県を一つの選挙区にした合区解消だ。どうでもいい項目とは言わないが、昨年は戦後80年、そして昭和100年という大きな節目だ。世界の安全保障環境も激動だ。改憲するなら、逃げることなく、長年の懸案だった自衛隊を明記する9条改正を、正面からやるべきだ」
ところが、9条については賛否も分かれ議論も百出。改正は進まない。そこで改憲派の各政党は「まずは簡単なところから手をつけている」というのが、このベテラン議員の指摘だ。
「目下、衆院は改憲勢力の数があり、高市(早苗)首相は自民党大会で“(改憲の)時は来た”と述べた。だが、今の議論のレベルは、“初めて改憲をやった首相”として名を残したいだけと思われても仕方がない。逆に憲法を軽んじていると私は思う。改憲の矜持(きょうじ)がまったく見えない」
前述したように憲法審査会での議論は、緊急事態条項を加えることと、合区解消の二つだ。
中でも焦点になっているのは緊急事態条項だ。議論の基本として衆院法制局が作成した条文のイメージ案では、緊急事態とは①大規模な自然災害②感染症の大規模な蔓延(まんえん)③内乱などによる社会秩序の混乱④外部からの武力攻撃などとされる。
そして緊急事態で選挙を行うことができない場合は選挙困難事態と認定し、認定されれば、国会議員の任期を延長、また、緊急事態時には時の内閣が一時的に国会機能を代行する「緊急政令」なども記載されている。
これについて、たとえば5月14~21日の審査会の議論はこんな具合だ。
「選挙実施が困難な場合に国会議員の任期を延長する特例などの論点ではおおむね合意が得られている」(自民・新藤義孝氏)
「イメージ案をベースとして、改正条文案の作成に入ることを強く訴える」(日本維新の会・馬場伸幸氏)
「これまで積み上げた議論を中心に条文案づくりに着手することを求める」(国民民主党・玉木雄一郎氏)
「イメージ案は合意事項をまとめたものではない」(中道改革連合・国重徹氏)
示されたイメージ案に対して一部否定的な意見はあるものの、「できるものから、たとえば国会議員の任期延長などについてはまとまるような空気感だ」(自民・審査会メンバーの一人)という。しかし、このイメージ案そのものについて、果たして憲法改正まで必要なのか、疑問符が付く部分がいくつもある。曖昧さもある。
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