◎内部資料と重要答弁を発見!(2/5)
【論点と防衛省の説明】
防衛省は、音楽隊員の行為は自衛隊法違反ではないとする。
自衛隊法第61条第1項は、「隊員は、政党又は政令で定める政治的目的のために(略)政令で定める政治的行為をしてはならない。」と規定し、この規定に違反した者は、3年以下の拘禁刑に処される(自衛隊法第119条第1項第1号の規定)。※1
今回問題となる条文上の論点は、次の4つだ。
①当該音楽隊員は、「政党・・・のために」、行為を行ったか。
②隊員は、「特定の政党その他の政治的団体を支持し、又はこれに反対すること」という「政治的目的」を有していたか。
③隊員の行為は、「政治的目的のために官職、職権その他公私の影響力を利用すること」という「政治的行為」に該当するか。
④隊員の行為は、「集会その他多数の人に接し得る場所で又は拡声器、ラジオその他の手段を利用して、公に政治的目的を有する意見を述べること」という「政治的行為」に該当するか。
上記①から④の論点について、今回の防衛省の説明は、
①自民党大会への出席という本件で最も問題となるべき「政党・・・のために」には触れない。
②「国歌それ自体に特定の政党を支持又は反対する目的がないことは明らか」として、「政治的目的」を「国歌の歌唱」に限定する(「特定の政党」である自民党の大会で制服を着て自衛官であることの紹介を受けた上で国歌を歌唱したという全体の行為には触れない)。
③「影響力を利用」したかどうかには触れない。
④「公に政治的目的を有する意見を述べることには該当しないことは、国歌が政治的目的を有するものではないことから、政治的目的を有する意見には当たらないことも明らか」。
というものだ。
【「政治権力との癒着」こそが理由だった】
この問題を考えるうえで重要な内部資料と答弁を発掘した。
『服務ハンドブック』は、当時自衛隊の不祥事が相次いだことから、規則遵守がうたわれ、幹部隊員の規則理解と「部下隊員の服務指導の参考資料」に、と三尉以上に配布されたものである。※2
ここには「国家公務員として中立・公正の立場を堅持すべき」以外の、「政治的行為が制限される理由」が明記されている。
★内部資料
防衛省人事教育局発行『服務ハンドブック』(平成21年6月発行)
○政治的行為の制限 ※3
<解説>いま一つは、隊員が国の最強の武装集団の構成員としての地位からくる制約である。旧軍刑法においても、軍人が政治に関与することを禁止していたが、そこでは、統帥権を中心にして結束した軍の存否が政治的動向に左右されれば、強固な国防組織が、危機に陥ることがおそれられていたからである。法規から逸脱した武力と政治権力との癒着が国家体制を崩壊にもたらすことは、歴史の事実が証明しているところであり、かかる理由から、隊員に対して政治的行為の厳しい制限が課されている。[85頁]
「政治権力との癒着」を強く戒めることが、自衛隊員の政治的行為を制限する根本的理由であると、防衛省は指導しているのだ。
そのため、自衛隊法第61条第1項の「政治的行為の制限」は、違反すれば刑事責任を問われる重大なルールとなっている。
政府は当該隊員の行為は違反しないとしたが、上記の解説を読めば「法律に違反しなければ何をしてもよい」とはならないはずだ。(続く)
Only some accounts can reply.