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FF14 楽曲のJASRAC信託について

はじめに

 2026年5月、スクウェア・エニックス社(以下「スクエニ」)がファイナルファンタジーXIV(FF14)の楽曲の著作権をJASRACに信託することを発表しました。

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https://jp.finalfantasyxiv.com/lodestone/news/detail/41c6b418731738efb829aec618e2fbe7a12456b1

© SQUARE ENIX

著作権の仕組みや、信託に到った理由等を知りたかったのでいろいろ調べてみました。その過程でわかったことや感じたことを共有したいと思います。

概要

今回スクエニが発表した内容の概要は次の通りです。

・スクエニがFF14の楽曲の著作権をJASRACに信託した。
・JASRACと包括契約しているSNS(Youtube等)にFF14の楽曲入り動画をアップする際は、許諾手続きがこれまで通り基本不要。
一方、XはJASRACと包括契約していないので、原則としてXに直ポストできない。無音やSEのみの動画なら直ポストOK。

著作権についておさらい

著作権法では、著作物(楽曲等)を創作した者(=著作者)の権利を保護することによって、文化の発展に寄与することを目的としています。

著作権法

第1条(目的)
著作物並びに実演、レコード、放送及び有線放送に関し著作者の権利及びこれに隣接する権利を定め、これらの文化的所産の公正な利用に留意しつつ、著作者等の権利の保護を図り、もつて文化の発展に寄与することを目的とする。
第2条(定義)
一 著作物 思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。

https://www.bunka.go.jp/seisaku/chosakuken/seidokaisetsu/pdf/94215301_01.pdf

著作者の権利とは、他人が無断で〇〇することを止める権利です。
〇〇には複製、上映、演奏、公衆送信(インターネット配信)等の言葉が入ります。
著作権法には「著作権」という権利は規定されておらず、〇〇の利用形態ごとに権利が規定されています。
一般的に著作権というときはいろんな利用形態をひっくるめて他人が無断で使用することを止める権利の概念です。
権利侵害が問題になるときは利用形態ごとに考える必要があるので注意が必要です。
本記事には公衆送信(インターネット配信)の権利が関係が深いです。

著作者の権利として、著作者人格権と著作権(財産権)があります。

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https://www.bunka.go.jp/seisaku/chosakuken/seidokaisetsu/pdf/94215301_01.pdf
 著作権テキスト令和7年度版 文化庁 著作権課


この文化庁の著作権テキストの図には「著作権」の用語が二つ記載されています。同じ「著作権」でも文脈によって著作者人格権を含む場合とそうでない場合があるので注意が必要です。
財産権としての著作権は譲渡可能です。スクエニは楽曲の財産権(著作権)について管理を任せたということだと思います。
信託譲渡すると、著作者であっても自由に財産権としての著作権を行使することができません。昔、音楽プロデューサーの小室哲哉さんが楽曲の著作権をJASRACに信託しているにもかかわらず第三者から著作権料を受け取ろうとして問題になったことがあります。
スクエニがJASRACに著作権を信託した楽曲については、JASRAC主導で管理されます。信託の契約内容がわからないので著作権料の徴収方法や価格設定に関して不明ですが、徴収力には定評のあるJASRACですので今後が気になります。
一方、「著作者人格権」は譲渡できません。ですから財産権と著作者人格権の権利者がそれぞれ別の者となる場合があり得ます。
例えば第三者が楽曲を編曲する場合、著作者人格権である「同一性保持権」を持つ権利者と、財産権である「二次的著作物の創作件・利用権」を持つ権利者それぞれの許諾が必要な場合があります。
なお、JASRACは二次的著作物に関する権利(編曲権)を扱っていません。

著作隣接権(音源製作者の権利など)

また、楽曲の権利に関して、著作者の権利の他に、著作隣接権があります。
著作者の権利が著作を創作した者(楽曲の作曲者、作詞者等)の権利であるのに対して、
著作隣接権は著作物等を人々に伝達した者(演奏家、歌手、音源の製作者、原盤製作者等)の権利です。

音源の許諾について

一般的に、ネットに既製の楽曲音源をそのままアップする場合は、作詞や作曲(メロディー)に関する著作権の許諾だけでなく、音源の権利者(著作隣接権を持つ者)の許諾を取る必要があります。音源の権利は原盤権ともいわれます。
JASRACは作詞や作曲に関する著作権のみ扱っており、音源の権利を管理していません。つまり、楽曲音源をアップしたいならそれがJASRAC登録曲であってもJASRACの許諾のみでは足りず、音源の権利者の許諾が原則として必要です。
一方、「ファイナルファンタジーXIV 著作物利用条件」では、FF14の楽曲つき動画のネット利用について、JASRACと包括的な許諾契約を締結しているサービスの利用を求めているものの、音源の権利の許諾については規定されていません。これを考慮すると、「ファイナルファンタジーXIV 著作物利用条件」の範囲においては、音源の権利の許諾手続きは不要と思われます。

ファイナルファンタジーXIV著作物利用条件
https://sqex.to/PGz

包括的な利用許諾契約とは

スクエニは「JASRACと包括的な利用許諾契約を締結しているサービスをご利用ください」と述べています。
この「包括的な利用許諾契約」とは、おおまかにいうとYouTube等がJASRACに一定額お金を支払い、JASRACに登録されている楽曲をまとめて使わせてもらう契約です。サブスクのようなイメージです。本来ならば1曲ごとに許諾手続きが必要なところ、これならその手間が省けます。YouTube側がお金を払うので動画投稿者は直接お金を払わなくてもよいです。ただし、YouTubeの資金は動画につく広告の収益やYouTubeプレミアムの契約料等から賄われているので投稿者は間接的に著作権料を負担しているともいえます。
Xはこの「包括的な利用許諾契約」をしていないので、XにJASRAC登録曲がついた動画等を直アップする際は、投稿者がJASRACに許諾手続きや著作権料の支払い等をする必要があります。

■JASRAC「利用許諾契約を締結しているUGCサービスの一覧」
https://www.jasrac.or.jp/information/topics/20/ugc.html

YouTubeにFF14楽曲入り動画を投稿した場合の流れ

YouTubeにFF14楽曲がついた動画を投稿した場合、「著作権の申し立て」のお知らせが届く可能性があります。

"YouTubeに投稿された動画に、JASRACの管理楽曲が含まれていることをYouTubeのシステムが検知した場合、Content IDの仕組みにより、JASRACが「著作権の申し立て」を行った旨のお知らせが投稿者に届くことがあります。"
"JASRACによる「著作権の申し立て」が発生した動画も、引き続きYouTubeパートナープログラムに参加しているクリエイターは比例配分された収益を受け取ることができます。"

YouTubeでの「著作権の申し立て」に関するFAQ
https://www.jasrac.or.jp/information/topics/pdf/230210_YouTube_FAQ.pdf

Content ID(コンテンツID)とは、権利者がYouTubeに登録した音楽や映像と、動画投稿者が投稿した動画を自動で比較して、一致するものを検出するシステムです。
「著作権の申し立て」の申立人がJASRACのみであれば、動画投稿者の取り分だった広告収益の一部が著作権料として引かれ、動画投稿者は比例配分された収益を受け取るのが一般的です(動画投稿者がYouTubeパートナープログラムに参加して収益化している場合)。メロディーや歌詞等の著作権者(この場合JASRAC)のみが申し立てをした場合は、動画投稿者の取り分は減少しますがゼロにはなりません。しかし申立て人が原盤権者だった場合、話が違ってきます。
申立人が原盤の正当な権利者だった場合、動画投稿者の取り分だった広告収益すべては原盤権利者に支払われます。つまり投稿者の広告収益はゼロになります。

動画投稿者が承服できないときはYouTubeに異議申し立てができ、それが通れば「著作権の申し立て」は取り下げられます。

また、動画投稿者がYouTubeパートナープログラムに参加しておらず収益化していない場合、動画投稿者の収益はもともとゼロのまま変わりません。実質的に影響なしともいえます。

なぜ楽曲著作権を信託したのか?

 スクエニがFF14楽曲をJASRACに信託した理由は明らかにされていません。著者なりに理由を考えてみました。

考えられる理由1 スクエニが人手不足だから

日本国内では、スクエニがFF14の楽曲の権利を管理していました。
今回スクエニは音楽著作権をJASRACに信託しました。なぜ自社でやれていたことを外部機関JASRACに信託するのでしょうか。考えられる理由の一つは、管理をJASRACに任せて、自社の人的リソース、時間リソースを省きたいからです(なお、スクエニの他ゲームの楽曲の大半は既にJASRAC管理です)。
JASRACに楽曲を登録するには審査があるものの登録料は無料です。しかし運営にはコストが当然かかります。JASRACは回収した著作権料の一部を運営費にしますから、できるだけ著作権料を徴収したいと考えるのは自然なことです。そのため著作権料の徴収がこれまでよりも強化される可能性があります。実際、スクエニ公式から、Xへの直ポストを避ける旨の呼びかけがされています。これは、「投稿するなら著作権料を払ってね」ということを示唆しています。もしXに直ポストしたら著作権料の支払いか、投稿の削除が求められるでしょう。

考えられる理由2 物価高とユーザー減少

これまではスクエニがFF14楽曲著作権を管理していて、ネット利用に関して制約が比較的緩やかでした。著作権料の徴収は最小限にして、ユーザーによるネット発信を活発にしたいという狙いがあったと感じます。
昨今の物価高、FF14のユーザー数の減少など、スクエニが収益を得たい要因はいくらでもあります。楽曲の著作権料を収益にあてたいと思うのは当然の流れです。
管理団体JASRACに信託して合理的に著作権料を得たいのだと推測します。
あくまで筆者の推測ですし、スクエニ側がどの程度、著作権料の価格設定をしているかはわかりません。
いきなり露骨な徴収をするとユーザーから反感を買いますので、少しずつ徐々に徴収していくのだと思います(というか願っています)。

考えられる理由 番外編
YouTubeなどで発生している「偽の著作権者による権利主張」への対抗措置?

FF14コミュニティサイト「loadstone」等に、youtube配信者が知らない名前の団体から「著作権の申し立て」を受けるという報告が数件ありました。配信者が異議申し立てをすると、前述の「著作権の申し立て」が取り下げられることがあったことから、偽の権利者による権利主張だったのでは、という声が挙がっていました。
JASRACに信託することで、こういった著作権者を騙る者への対応がスムーズになるのかな、と思いました。しかし、対策としての効果は限定的なようです。
というのは、JASRACではこういった申立ての個別の権利主張が正しいかどうか確認できないとのこと。結局、配信者自身が著作権の申し立てを行った団体まで直接問い合わせるしかなさそうです。とはいえ、コンテンツIDのノウハウを持っていそうなJASRACが著作権者(の代理)として関わることで、少しは改善するかもしれません。

Q: YouTubeにJASRACの管理楽曲を含む動画をアップロードしたところ、知らない名前の団体(Muserk Rights Managementなど)から「著作権の申し立て」のお知らせがありました。どのような対応を行えばよいでしょうか。
https://www.jasrac.or.jp/information/topics/pdf/230210_YouTube_FAQ.pdf

YouTubeでの「著作権の申し立て」に関するFAQ

Xに直ポストしたらどうなる?

もしXにFF14楽曲付き動画を投稿したら一般的には以下のようになるでしょう。スクエニとJASRACの契約内容がわかりませんので、この通りになるとは限りません。ただ、スクエニが直ポストを避けるようアナウンスしていることを考慮するとこれに近いことが起こると思います。

・ポストの削除、著作権料支払い請求
まず考えられるのは、投稿物の削除や、著作権料支払いをJASRACが請求することです。これを無視すると民事又は刑事の法的措置に移行する可能性があります。

・刑事告訴からの懲役、罰金
許諾なしで楽曲をポストすることは著作権の侵害であり犯罪行為です。権利者(この場合は著作権を信託されたJASRAC)の告訴を前提として懲役や罰金などの罰を受ける可能性があります。
「Xにポストしただけでそこまでされるの・・・?」と思うかもしれません。実際、そこまでオオゴトにするには費用や手間がかかるので、「刑事」となることはほとんどないと思います。しかし可能性としては頭に入れておくといいでしょう。

今後どうなる?

今回の楽曲著作権の信託によって、今後どうなるでしょうか?

FF14ユーザーのネット発信が失活するかもしれない

まず前述のとおり、Xでの直ポストが減ります。
YouTubeは配信者の収益が減る可能性があるので、クリエイターのモチベーション低下や撤退があるかもしれません。
収益低下や「著作権の申し立て」を警戒してBGMオフで動画配信する人が増えることもあり得ます。そうなると、視聴者は味気なさ、物足りなさを感じるかもしれません。
そんなこんなでFF14のネット発信パワーが弱まるおそれがあります。
それでユーザー数が減れば開発費が減り、コンテンツの魅力が下がるとユーザー数がさらに減り・・・の負のスパイラルも。そうなっても次の拡張タイトル(2027年1月発売)で盛り返せるといいのですが。

良い面として、JASRACが管理することによりコピーバンドが楽曲の使用許諾をとりやすくなるという意見もありますが、ネットへのネガティブインパクトに比べると微々たる影響、焼け石に水だと思います。

スクエニが得る著作権料と、ネット関連のマイナス面のバランスが見合うものなのか、これからの動きを見守りたいと思います。


※本記事の内容はあくまで筆者個人の見解です。実際のアクションにあたっては、現行の法令を確認し、ご自身の責任においてご判断ください。

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> 著作権法には「著作権」という権利は規定されておらず 実は「著作権」という用語は著作権法17条にて「著作者は(略)第二十一条から第二十八条までに規定する権利(以下「著作権」という。)を享有する。」と規定されています。 21条から28条の権利、つまり財産権に分類される権利のみが「著作権…

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