五十六話 姉妹契約(リリ・リンク)とは姉と妹を繋ぐ、誰にも断ち切れぬ絆である!!(公式記述より)

※今回のファイトはこれまで省略していた【色】や【属性】などに触れています






 百合の契約ラブスールというテーマがある。


 とある魔法を習うお嬢様学園に通う少女たちの青春と戦い、苦難と共に歩む少女たち同士の絆を描いたテーマである。

 彼女たちの通う学園はお嬢様学校。

 入学する生徒は少女たち、教師は女教師、頼れる在校生である先輩たちもまた少女、外部から訪れた特別講師もまた一際美しい女性。

 男はいない。

 その世界に男はいない。

 このテーマに出てくるクリーチャーは、魔石は、魔法は、秘宝は、呪言は全て少女たちの物語である。

 制服を着た美少女だったり、魔女帽を被っていたり、眼鏡をかけて優しく微笑む妙齢の教師であったり、王子様のように凛々しく手を握ってくれる先輩だったり、その全てが美しく可愛らしい花々たちである。


 学園に通う少女彼女たちの青春には冒険があり、試練があり、喜びがあり、友情があり、愛がある。

 男のいない彼女たちの世界では愛情と友情の区別がない。付ける意味がない。

 そんな彼女たちの結ばれる方法は姉妹契約リリ・リンク

 互いの利き手を絡め合う握手は友情の証であり、絆の証。

 学園に通う少女たちならば誰もが持つロザリオを半分に、互いに交換し、繋げ合う儀式は愛情の証であり、魂の絆。


 ラブスールのテーマはそんな彼女たちの能力、ストーリーを象徴した性能を持っている。

 ――以上、公式解説より。


「<Si☆STARシ☆スター サクラ舞うスール>が場に出た時、手札からコスト2以下の【姉妹】を持つクリーチャーを場に出すことが出来る、いいか?」


「……え? あ、はい」


「では。<Si☆STAR 向日葵のラビ>を場に――【姉妹】による<姉妹契約リリ・リンク>を発動。カップリングを行う」


「かっぷりんぐ」


×を並べて、結びつける」


 分厚い指が丁寧に二つのカードを左右にくっつけた。

 カードのデザイン部分、左右に描かれた手が繋がる。


 ――やばい、かなり理想的な初動だ。


「契約が結ばれた時、ラビの【契約効果】が発動する――メインデッキから1枚ドロー。彼女は俯く妹の手を引き上げる善良性がある」


「ぜんりょうせい」


「スールは誰とでも仲良くなれるが、この時はまだ誰かを助ける効果がないため【契約効果】はない。彼女は誰かと出会う前の妹だからだ」


「いもうとさんなんだねぇ」


 店長!

 店長!! ボケってしてる場合じゃないですよ!


「【姉妹契約】をしている時


「きょうゆう」


「姉妹は助け合うものだ。ステータスだが、左側は【パワー】を、右側は【タフネス】を参照して扱う」


 ふぅん。

 スルラビ攻め 受けということか。


「スールのパワーは2で、ラビのタフネスは2だから……」


 これを設計した奴は絶対変態だと思う。

 システム的な意味で。


「2/2ということだ。そして、姉妹契約をしたとき――そのカードは


「召喚酔いがない?」


「支えあれば立ち上がれるということだ。バトルフェイズだ。スール&ラビでアタック」


「ライフで受けるよ!」


「2点受けてもらう」


 なすすべもなくがら空きの店長の場を超えて、2人の少女たちがダメージを与えた――という処理になる。

 店長はライフデッキを上から2枚めくって「呪言カース<間一髪>が出た、ダメージをこの1枚だけにしてライフカードを切り直すよ」 間一髪を墓地2サブ墓地に送り、残った2枚のカードをライフデッキに戻してシャッフルする。


「初手で出るとは運が悪いな。いや、共鳴出来ていないのか?」


「まだファイトは始まったばかりだよ」


「その通りだ。ターンエンド」


 そう告げてスカーがターンを終了する。

 まだ出したのはたった二枚、基本初動の入門CPだ。ジャンルは読めない。


 百合の契約ラブスールは大まかに言えば高速ビートダウンに分類される。

 その麗しき少女たちクリーチャーは共通として【姉妹】の能力を持ち、これを持ち合わせているものどうしで合体――姉妹契約が出来る。

 そうやってお互いに偏りが大きいステータスを補完し、召喚酔いを解除しながら殴ってくる。

 姉妹契約を維持し続ける限り、全てのクリーチャーが速攻持ちに等しい。

 その上で契約時に発動する効果もさることながら、豊富な能力を共有するのも驚異的だ。

 召喚酔いを解除されるということは

 俺が憶えている限りでも十数種類以上はいたラブスルのクリーチャーは豊富だ。

 一体ずつだと大したことはないが、共有すると厄介になる。

 さらに姉妹契約こみで得られる”疑似残機”能力で斃すのも面倒で、場に残りやすい。

 姉妹の組み合わせ次第では本当に毛色ジャンルの変わるデッキでもある。

 その上で特定の組み合わせ――通称【公式推しCP】による合体カードもある。

 専用カテゴリの魔法や秘宝、魔石の類でのサポートもあるし、運営の手厚い加護を受けたカテゴリーだ。


 ――もちろん日本先行のテーマだ。


 まさかまた見るとは思わなかったぞ。

 前世でも片手を超える数の使い手がいたし、時期によってはトップメタに割り込んでたこともある癖つよテーマだ。

 私が壁のシミになりてえと叫ぶ発酵女のクソなが説明と自分のデッキを「実質同人誌!」と呼んでいた異常者とのファイト的な意味での殴り合いで憶えさせられてしまった忌まわしい記憶が蘇ってきたわ。


 しかしこの男のデッキタイプはなんだ?

 純正だけでも複数のタイプジャンルがあるぞ。

 一夜のロマンスぶっぱのために次々サクる【焼り捨てロマンス】、【再生スタァ】での双撃乱舞か、浪漫枠の【私たちの花園】による逆逆ハー特殊勝利か。

 他のテーマを考えれば【公女輪舞レヴォリューション】か、【お前も姉妹だ】か、【黒薔薇デュエル】か?

 まあ黒薔薇は機装決闘アームドファイトないとだめだけど、今のところ見つからねえしなぁ。


「ボクのターン」


 そんな事を考えている間に、店長のターンが始まった。


「レディ、セットアップ、ドロゥ。ライフ2、メインを1引く」


 店長のデッキはなんだ。

 いつもの練習やデッキの動作確認のためのレンタルデッキじゃない。

 自前のデッキだろうが、ラブスルはかなり強いデッキだ。


 店長はかなり強いのはわかってるが、デッキ次第だときついぞ。


「ボクは土地を1枚セットし、1コスで<銀河乙女アウターアムニオン 色見えぬエロス>を召喚」


 そういって出されたのは0/1のステータスのクリーチャー。

 これが店長のデッキのクリーチャーか、なるほど、銀河乙女ね。


 ……銀河乙女?

 銀河乙女!?


「……失礼。存じないカードだ、効果を訪ねても?」


「いいよ。色見えぬエロスはパワー0タフネス1で、手札から出した時追加コストを支払うことで1/1修整のカウンターを持って場に出ることが出来る。ただし、このコストは自分のこれまで除外したカードの枚数分までだけ。まだ何も除外してないから、だから強化は出来ない」


「ふむ。残りの下のテキストは?」


「三つ能力がある」


 そういって店長が可愛らしく指を三本立てたが、今の俺はそれどころではない。

 いや、まさか。

 見たのは文字通り前世、似たようなだけで違うやつじゃ――



「一つ、銀河乙女と名の付くクリーチャーは自分の場に二体までしか存在出来ない。これを超える場合、二体に減るように選んで生贄に捧げる」


「二つ、このクリーチャーが場に存在する限り、このカードの所有者オーナーは銀河乙女以外のクリーチャーをプレイ出来ない」


「三つ。このクリーチャーは



「以上が、銀河乙女の共有効果だよ」



 う、うあああああああああああああああああああああああああ!!




「初めて見るカードだ。パワーは0……絶対ひどいカードだ」


「ついに出したか。地柩セトのデッキ」


「だいじょうぶだよー、あれ。今は普通だから~」


「今は? ん、あれモブさんの顔が」






 銀河乙女だ!! これ!


「……そのカテゴリー以外のクリーチャーを自ら封じ、さらに数まで制限する? 不自由そうだが」


「色々と縛られているんだよ、彼女たちはね」


「文字通り縛りプレイということか。して、そこからなにを?」


「いや、これでターンエンド」


 店長がターンを終えるが、俺は声を抑えるの必死だった。

 まさか。

 いやでもまだ除外デッキで使ってるだけということもある、なんせエロスだけなら他のデッキにも入る余地がある。

 使

 いやでもしてもピン刺しだよな、初手で出すことはエロスを出すということは……


「俺のターン。レディ、ドロー……土地をセット。クリーチャー<Si☆STAR 電光のカミーユ>を召喚、彼女は【機先】・【速攻】を所持している」


「通るよ」


「では姉妹契約を発動。カミーユがスールの左にセットされ、手を結び合う」


「2人までじゃない?」


「その手が空いていれば繋ぎ合う事は出来る。そして、この三人以上の場合。左端がパワー、右端がタフネスの基本値になのは変わらないが、真ん中のカードはその両方を底上げをする」


「つまり、3/1カミーユ2/1スール1/2ラビで、パワーが【5】タフネスが【3】になる」




「――失礼。この場合、ダイスを二つ用意してカードの上においたほうがわかりやすいです」



 ジャッジとしての指摘を入れる。


「なるほど、失礼した」


「あ、フツオくん。ありがとー」


 それに従いスカーがテーブルの隅においてあったダイス入れから20面ダイスを二つ【5】【3】と並べておいた。

 これでわかりやすいだろう。


 にしても、20面ダイスか。

 2~3人までなら精々6面、デカくても10面ダイスだと思ったが、このスカー。

 ”レギオン”まで作る想定か?


「では処理を続ける。姉妹契約を成功させたので再びラビの【契約効果】で一枚ドロー」


「?! また発動するの?」


「そうだ、友人が出来るのは何度行っても褪せることはない。さらに、カミーユの【契約効果】。コントロールする姉妹を持つクリーチャーの数だけ、パワーがターン終了まで上がる」


「つまり、+3!」


「その通り、バトルフェイズ。カミーユ×スル×ラビのグループで攻撃。パワーは8だ」


「ブロックはしない、ライフで受ける」


「ならば8点だ」


 店長のライフデッキが上から8枚めくられる。

 土地、土地、土地……魔石<黒き海の悪戯と気紛れ>、土地、土地、土地、土地。


 ――あ。死んだわ、これ。

 しかも土地、全部4種類揃ってるし。


「では、ターンエンド」


 三人グループの姉妹が場に、ライフはまだ16もある、下手な反撃では斃しきれない。

 そして削れた分の土地も出れば間違いなくリーサルだ。


「ボクのターン。アップ、レディ、ドロゥ」


 店長の状況は土地は多いが、それも8枚だけ。

 ライフは既に開始時の半分以下だ。


 俺が知っているデッキじゃなければ――



「魔石<黒き海の悪戯と気紛れ>をセット」



 /(^o^)\






「モブさんが天井仰いでる?」


「あーモブも知ってるか」


「ついに見れるんだねぇ、ワクワクするねぇ」


「な、なに? なにが??」



 あ、二枚目握ってたんですね。

 お疲れ様でした!!



「さて、久しぶりに廻していくよ」


「なに?」


「<黒き海の悪戯と気紛れ>はボクの持つ土地全てが生み出すコストから色を奪い、属性をなくす。その代わりに色を持たないカードの発動コストを(1)少なくさせる」


「無属性限定?」


「ボクは手札から1コストになった通常魔法<彷徨う羊水>を発動。対象はエロス、このカードは種族:アウターアムニオンのクリーチャーにのみ使用出来る」


「効果は」


「エロスを除外し、ボクはデッキから除外したクリーチャーより1コスト高いクリーチャーを場に出すことが出来る」


 そういって店長はメインデッキを手に取り、内容を確認して一枚のカードを取り出すと、シャカシャカと慣れた手つきでシャッフルして戻した。

 場に出されたのは、うん。


「<銀河乙女 冷たいアンブラ>を場に出す」


 わ、わぁ。


「アンブラは場にいる限り、相手ファイターのクリーチャーを出すコストが(1)多くなる」


「ぬっ?!」


「あと2コストで<銀河乙女 詞知らぬロゴス>を手札から召喚する」


「効果は?」


「起動効果が一つ。墓地から魔法カードを一枚除外して、そのコスト分のダメージをクリーチャーかファイターに与える事ができるよ」


 ステータスは2/3。

 本来3コストだが、控えめなステータスだ。


 だが、その能力は凶悪。速攻を持っていないことだけが唯一の救いとされるやつで。


「3コストになった秘宝<微睡みの宙域>をセット。このカードは自分のアップキープフェイズに、青か黒のオブジェクトを配置してる場合、カードを1枚引いて、手札を1枚捨てる。両方配置されてる場合、2枚引いて手札を1枚捨てる」


「銀河乙女は全ての色を持つ……つまり2枚ドロー」


「ターンエンド。どうぞ」


 店長が淡々と告げる。

 場にはクリーチャー2体とドローエンジンとなる秘宝が1枚だけ。

 だが残った土地は2枚もある。


 ――これは次のターンでやらなければ。



「己のターン。レディ、ドロウ……土地をセットする」



 殺られるぞ。


「メイン、己は手札から……ッ!」


「アンブラの効果はたった1コストだけといってもやりにくいでしょ?」


 あの動き、3コストのを出そうとして止まったな。

 リズムが狂う、それがアンブラの凶悪さ。


 専用魔法や秘宝もあるとはいえ、スルラブの主軸はビートダウン。刺さるってもんじゃない。



「バトルフェイズ、カミーユグループで攻撃!」


「ブロックはしない」


 五点のダメージ。

 これだけなら即死はしない。


 が、あれがスルラブなら。



「かかったな! 俺は手札から<Si☆STAR 電光のカミーユ>を1+2コストで瞬間発動する! コストを支払い、このカードを捨てることによってターン終了までクリーチャー1体のパワーを+3にする!」



 カミーユ第二の効果。

 2コストで捨てることによってバンプアップ効果を魔法のように使える。

 ビードダウンメインにするならば当然3詰みにしてるSi☆STAR。

 ブロックするなら相手を削れるし、そうでないならこれで奇襲をかけるつもりだったか。


「瞬間魔法<色褪せる夢>を2コストで発動。それを打ち消すよ」


「無属性の打ち消し! だが、5点受けてもらう!」


「5枚めくるよ」


 店長がライフデッキを上から5枚めくり、その2枚目で掌を返した。


「呪言<間一髪>。ダメージは1だ。残り4枚を戻してシャッフル」


「……2枚目を積んでいたか。ターンエンド」


「ボクのデッキは淡々とターンを重ねれればいいからね、延命処置はちょっとしてるよっと。ボクのターン」


 多分呪言<間一髪>を2枚、魔石も2~3枚ってところだろう。

 呪言や魔石は扱いが難しい。

 いれないともったいないし、とはいえ入れすぎたら土地が足りなくなる。

 殴られれば魔石は墓地に送られ、殴られないと発動の手間がかかる呪言。

 ちゃんとした設計がなければ事故要因になる二種類だが、店長のデッキは明確な意図コンセプトがある。


「レディ、アップキープ。<微睡みの宙域>の効果で2枚ドローして、手札から1枚捨てる」


 そういって店長がさり気なく墓地に送ったのは魔法カード。

 その名前と色がちょっとあるだけのコストを見て――俺は察した。

 いれてんだ、これを。


「ドロー。土地をセットして、さて」


 あ、リーサルですね。




「リーサルだ。夢を見る必要はもうない」




 終わりだ。


 店長のデッキは間違いない、あの銀河乙女アウターアムニオン






 ――環境の君臨者トップメタデッキだ。












――――――――――――――――――――――――――


ちゃぷり ちゃぷり 何故笑う


 空の色が見えて おどるのか


               ――――彷徨う羊水

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