『宇宙刑事ギャバン』は『ロボコップ』に影響を与えたのか?
スーパー戦隊シリーズの後番組が『宇宙刑事ギャバン』のリブート『超宇宙刑事ギャバン インフィニティ』と発表されて、あの逸話が再び取り沙汰されている。
『宇宙刑事ギャバン』なくして『ロボコップ』は生まれなかった!
それ嘘だから。
村上克司氏の勘違いだから!
これ、アスキー・メディアワークス(現在はKADOKAWAが出版する書籍のブランド名として存続)から2009年に出版された小野塚 謙太 著「超合金の男 村上克司伝」という本に掲載された村上氏のインタビューが元凶。
まあ、この本が出る以前から『ロボコップ』公開後に村上氏があちこちで語っていたことでもあり、以前はオレも信じてはいた。
1986年某日、東映にポール・バーホーベン名義の手紙(当然、英文)が届いた。自分はこれから『ロボコップ』という映画を監督する。この映画に登場するキャラクターにギャバンのデザインを引用させて欲しいという内容だった。バンダイの取締役でありギャバンのデザイナーである村上氏は東映伝いにこれを聞き、「構わない、どうぞ」と返事をした。もちろん無償で。という話。
手紙が届いたの事実だが、文面の内容に関しては全くの誤解。村上氏が英文に疎かったのか、英訳させた部下がアホなのか、全くもって手紙の内容を誤解しておるのだ。
以下、真相。
1998年の4月某日。『スターシップ・トゥルーパーズ』の日本公開に合わせて来日したバーホーベン監督にオレはインタビューをする機会を得た。東京有楽町の帝国ホテルの一室。ツカツカと部屋に入ってきたバーホーベン監督は、挨拶すらスッ飛ばしオレの脇に置いてあった一冊の本を手に取るとパラパラと読み始めたのだ。
「存在は知っていたが初めて見た」。
その本こそ、今は無きバンダイ出版課(当時)発行の「ロボコップ テクニカルフォトファイル」!
漫画家の加藤礼二朗から「これにサイン貰ってきてよ!」と託された絶版本。日本独自編集なんでバーホーベン監督も見るのがはじめとの事。もちろん、『ロボコップ』の日本での配給会社であったワーナー・ブラザースには送ってると思うけど、流石にアメリカには送ってなかったようだ。もちろん監督は日本語なんか読めないので写真やら図版をガン見(笑)。
時間無いんだけど?
『スターシップ・トゥルーパーズ』の話を聞きたいんだけど?
まあ、本題の前に掴みで『ロボコップ』の話でもひとつ聞いてみるかと。
「宇宙刑事ギャバンのどこが気に入ってロボコップのデザインに取り入れたんですか?」
「ギャバン? 知らん!」
「えっ!?」
いや、日本じゃあロボコップの元ネタのひとつがギャバンだってのはこの業界じゃあ通説なんですけど?どーいうこと!?
バーホーベン監督がおっしゃるにはロボコップのデザインのモチーフになったのは日本人イラストレーターの空山基氏が描いたセクシーロボット。無骨な初期案が気に入っていなかった監督は「セクシーさが足りん!」と実物大の原型まで出来ていたスーツにダメ出し。ロボコップ・スーツの造形担当であるロブ・ボッティンから見せられた空山氏のイラストが表紙に描かれた本に、「これだ!」と歓喜。
空山氏にデザインを頼めないかと連絡したところ、丁重に断られたのでモチーフに使わせて欲しいと許諾を得たというのが真相だ。
目のスリット、肩や腰の丸いディテール、胸の辺りとか、もうロボコップとの共通点ありまくりじゃない!
「でもギャバンをデザインした村上さんは監督から手紙を貰ったって言ってますけど?」
実は製作スタジオであるオライオン・ピクチャーズが、後から問題にならないように似たようなデザインのキャラクターを探しては、その版権元にウチでこういうキャラクターの映画を作りますけど、そちらの××というキャラクターに似ているかもしれませんが関係ありませんよ、訴えたりしないでね。という手紙をバーホーベン監督の名前であちこちに送っていたそうな。
例えばマーベルのこれとか。
イギリスの2000ADに載ってるこれとか。
『宇宙空母ギャラクティカ』のこれとか。
まあ、ギャバンもそういった類似キャラの一つだったというのが真相。
ロボコップのデザインの経緯については、Netflixのドキュメンタリー「ボクらを作った映画たち」シーズン3エピソード4にて詳細に語られているのでそちらも参照のこと。ギャバンのギャの字も出て来やせん。しかし、初期デザインってジャッジ・ドレッドまんまじゃあないか(笑)。
ちなみにデザインはともかく宇宙刑事→ロボット警察官ってのはどうよ?って言う輩もいるが、ロボコップのデザイン考える前に脚本は存在していたのでそれは偶然。
村上さん、もしその手紙がまだ現存しているのであればもう一度読み直された方が宜しいかと。今は英文の和訳も簡単ですよ。それから裏取されてない絶版本見てコタツ記事書いてるライターは猛省するように!


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