【社説】阿部監督の辞任 家族からの暴力、相談者を責めない社会に
この社説のポイント
●家族の間でも暴力は許されない、軽視しないで
●相談をためらわないで。勇気を出して相談した人を責めないで
●家族に手を上げそうになった時は、誰かに相談しよう
家族から暴力をふるわれたとき、他の誰かに相談するのは勇気がいる。うまく伝えられない、と迷うかもしれない。でも、どうかためらわないで欲しい。勇気を出して相談した人が責められることは、あってはならない。
プロ野球巨人の阿部慎之助監督が長女への暴行容疑で現行犯逮捕され、監督を辞任した。球団によると、言葉に腹を立て、投げ飛ばすなどの暴行を加えたという。
相手が部下や赤の他人ならば許されない暴力が、家族だからと許されることはない。仕事で評価されている人を大目に見る必要もない。
家族間の暴力はかつて、軽視される傾向があった。法整備や意識の変化が進みつつあるなかでも、命が失われた後に児童相談所と警察の連携不足や対応の遅れが明らかになるケースは度々あった。今回、長女の通報後の両者の対応は、多くの教訓の積み重ねの上でのことだろう。
球団側は暴力は許されないとして、辞任の申し出を受理した。しかし阿部氏の辞任会見で代読された長女の「手紙」は、通報したことを恥じ謝罪するかのような内容だった。生成AIに相談した上で児相に通報した、とする趣旨も書かれていた。手紙が公開されたことによって、SNSなどではAIの回答をうのみにして大ごとを招いた、などと批判する声があがった。暴力を受けた側が逆に非難される事態は、看過できない。
相談するのは恥ではない
親や子、配偶者など、身内の暴力を打ち明けるハードルはただでさえ高い。悩みを抱え込まずSOSを出そう、という呼びかけが社会に広がっても、「SOSの出し方」が間違いだと責められるようでは、尻込みする人もいよう。
生成AIが身近な存在である若い世代にとって、人に聞けるあてがないときに頼るのは、自然なことだろう。誤りや不正確な情報に注意は必要だが、児相への通報という今回のAIの回答は的外れではなかったのではないか。
他方、通報は父親の逮捕と失職という、長女にとっても境遇が大きく変わる結果につながった。相談した後の展開をある程度見通せて、秘密が守られ本人の意思が尊重される。そうした安心して相談できる態勢を社会として整え、周知していく必要がある。
事件を機に自分と家族の関係を省みた人もいるだろう。特に子育て中は子どもに腹が立つことは多いものだ。手を上げそうになるほど追い詰められたら、外の機関や誰かに相談しよう。家族と自分を守るための行動だ。決して恥ずかしいことではない。
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