- 1二次元好きの匿名さん26/05/17(日) 23:35:21
- 2二次元好きの匿名さん26/05/17(日) 23:36:45
(注意)
この先日下部さん・日車さん双方にとって非常に辛く、残酷な描写が続きますが今は比較的良いENDに進んでいってる途中です。
今後もう一度分岐がありますが、どちらに進んでも本SS内におけるBADENDにはなりません。
ただし、その過程には救いのない描写や、人によっては強い不快感を覚える展開が含まれます。 - 3二次元好きの匿名さん26/05/17(日) 23:37:53【閲覧・CP注意】 「お前の人生はハッピーエンドにはならねぇと思ってた」|あにまん掲示板それでもできうる限りの幸せを与えてやりたいと思ったんだ……※初心者のSSです※安価など有り、ダイスもあり※END分岐やその他の分岐がありますが、一度END分岐が出てても話の展開によってはさらに追加でE…bbs.animanch.com
前々スレ
【閲覧・CP注意】 「お前の人生はハッピーエンドにはならねぇと思ってた」|あにまん掲示板それでもできうる限りの幸せを与えてやりたいと思ったんだ……※初心者のSSです※安価など有り、ダイスもあり※END分岐やその他の分岐がありますが、一度END分岐が出てても話の展開によってはさらに追加でE…bbs.animanch.com前スレ
- 4二次元好きの匿名さん26/05/17(日) 23:42:57
スレ立て乙です
辛い展開だけどめちゃくちゃ引き込まれる - 5二次元好きの匿名さん26/05/17(日) 23:43:47
スレ画が……!
- 6二次元好きの匿名さん26/05/17(日) 23:44:39
スレ画の変化が…日車が小さくなってるのと日下部の口元が見えるようになった
- 7二次元好きの匿名さん26/05/17(日) 23:54:43
立て乙
これからどうなってしまうんだ - 8二次元好きの匿名さん26/05/17(日) 23:56:17
立て乙
そしてここで日車が小さくなるスレ画…いよいよって感じだな - 9二次元好きの匿名さん26/05/17(日) 23:58:21
前スレの暴力に怯え過ぎて暴力禁止の領域展開しちゃうのすごくよかった発想がすごい
- 10二次元好きの匿名さん26/05/18(月) 00:02:12
- 11二次元好きの匿名さん26/05/18(月) 00:13:30
- 12二次元好きの匿名さん26/05/18(月) 01:02:16
パート3の頭からサラッと読んでしまって、展開何も知らないまま読みたかった…って自分はめっちゃ後悔したから興味を持ってくれたなら真っ先にパート1を読んできてほしい
11が言う通り今のところCP要素はあんまり見られない
謎が謎を呼ぶスレって感じだ
ジャンルとしてはホラーに片足突っ込んでるんだけどまた別の薄暗さがあるっていうか…
読む前に一旦「ゴア」の意味も調べた上で読んでみると心の準備はできる
あんまり酷な描写はwriting挟むし、writing読まなくてもあからさまな描写を避けて物語は分かるようにしてくれてるからそこまで警戒するほどじゃないかもだけど一応ね
説明下手ですまん
とりあえずパート1から行ってらっしゃい!
- 13二次元好きの匿名さん26/05/18(月) 02:59:05
既にある説明に捕捉するとCPはスレ画の通り日下部と日車
- 14二次元好きの匿名さん26/05/18(月) 07:08:21
このレスは削除されています
- 15二次元好きの匿名さん26/05/18(月) 07:10:29
「ねぇ!! コレいいんじゃない?」
殺風景な病室に何か飾ってやろうと、見舞い前に虎杖と雑貨屋へ立ち寄ると、虎杖がずいっと目の前に手を差し出してきた。
差し出された手を見ると、小さなクリアケースの中に、とぼけた面した黒猫の人形が入っていた。
日下部「なんだこれは」
虎杖「最近流行ってんだって、釘崎が言ってた。こう、握ると気持ちいいらしくてさ。リハビリにもなるし、癒やされるかなって」
日下部「へぇ……」
適当に相槌を打ちながら、まじまじと猫を見返す。
なんとなく、日車に似ている気がした。
本人に言ったら絶対に嫌な顔をして、「目が腐ってるのか?」などと宣っただろうが、やたら大きな目だとか、不貞腐れたようなへの字の口だとか、たまに見せるきょとんとした間抜け面が、かわいいんだか不細工なんだか分からねぇ、その黒猫にそっくりだった。
日下部「……コレは俺が買うわ」
虎杖「えっ! いいよ! 俺が買うって!」
日下部「違ぇよ、俺が個人で買うっつってんの。日車にはこっちの方がいいだろ」
同じ棚に並べられている別の猫を指差す。
間抜け面したピンク色の猫が、気持ちよさそうに仰向けに寝転んでいた。
日下部「お前に似てる。こっちの方が喜ぶだろ」
虎杖「えっ!! 日下部先生、俺のことこんな可愛く見えてんの!!」
日下部「だ、れ、も、お前が可愛いなんて言ってねぇだろ!! 能天気に緩みきった面が似てるって思ったんだよ!!」
虎杖「ひでぇ!! 俺、こんな風に思われてたの!!」
ぶつくさと文句を唱える虎杖を横目に、俺はもう一度黒猫のケースを見下ろした。
むすっとした顔のくせに、どこか気の抜けた面をしている。
日車のそんな顔が、好きだった。
そんな面から出てくる、わりと口が悪いところとかも気に入っていた。堅物ぶった振る舞いの中で、時たま見せるガラの悪さが妙にツボで見ていて飽きなかった。
最近は、もう見れていないが…… - 16二次元好きの匿名さん26/05/18(月) 07:46:38
- 17二次元好きの匿名さん26/05/18(月) 10:45:45
- 18二次元好きの匿名さん26/05/18(月) 10:55:14
- 19二次元好きの匿名さん26/05/18(月) 11:29:26
虎杖猫かわいい!
窮屈な空間を思い出させるか…なっ中身だけ取り出して渡すわけにはいかないか? - 20二次元好きの匿名さん26/05/18(月) 16:00:06
あかん(あかん)
- 21二次元好きの匿名さん26/05/18(月) 16:57:50
このレスは削除されています
- 22二次元好きの匿名さん26/05/18(月) 16:59:32
虎杖「でもこの猫、目が閉じてるね。なら、日車にあげてもいいかも」
虎杖は猫の入ったケースを片手に、いそいそとレジへ向かう。
日下部「? 今は普通に見れてるだろ」
虎杖の後を追いながら、俺は首を傾げた。
初めて虎杖を病室へ連れてきた時、日車は突然現れた虎杖を見て、嘘みてぇに目を丸くして、そのまま柔らかく目を細めた。以前みてぇに視線を逸らすことも、気まずそうに俯くこともなく、ただ穏やかに、眩しいものを見るみてぇな目で虎杖の姿を見つめていた。
日車は虎杖の前では、できるだけ弱った姿を見せたくないのだろう。俺と二人きりの時みてぇに泣くこともなく、比較的気丈に振る舞っていた。体を起こして、ベッドに腰掛け、虎杖と顔を合わせて笑い合う。そんな光景は俺には与えてやれねぇものだった。だから時間がある時は、虎杖に見舞いへ来てもらっていた。少しでも多く、日車の笑顔が見たかったのだ。
虎杖「うん、今はね。だから辛れぇの」
だからこそ、虎杖の言ってることの意味が分からず眉を寄せた。日車が笑ってんのに何が不満なんだと。虎杖は少し視線を落として、手の中のケースを軽く握る。
虎杖「……ずっと見れなかったのに、目を合わせようとすると逃げることだってあったのに、今はちゃんと目が合うんだよ」
振り返った虎杖の顔はどこか困っているみてぇだった。
虎杖「それがさ、日車が……変わったみたいで辛いんだ」
……俺は何をしてんだ。
笑った顔が見たかった。だから日車が笑えるようになったことを喜んで、虎杖を連れてきて、少しでも穏やかに過ごせる時間を増やそうとしていた。それは、本当に日車のためだったのか。違う。虎杖を連れて行けば、日車が笑う。それを見て安心したかっただけだ。
少し考えれば分かることだった。日車は虎杖と目を合わせられねぇ、それが普通だった。だから今は……今の日車は……
日下部「……虎杖」
虎杖「なに? 日下部先生」
日下部「今さらだが無理しなくていいぞ、辛かったら見舞いに行かなくても」
虎杖「えっ?」
……虎杖のことも考えてやらなきゃならねぇ。まだ学生だ。己の願望を叶えるための出汁に使うのは違う。視野が狭くなっていた。虎杖にとっても日車は大切なやつだったはずだ。虎杖だって傷ついている。 - 23二次元好きの匿名さん26/05/18(月) 19:19:15
虎杖「違うって! 見舞いに行くのが嫌なんじゃなくて!」
日下部「平気じゃねぇよ……平気なやつなんていねぇ、だから無理するなよ」
そんなことを、言われると思っていなかったのだろう。虎杖は泣き出すのをこらえるように、目頭を押さえた。
虎杖「……でも、会いてぇんだよ」
ぽつりと落ちた声は、小さかった。
虎杖「怖ぇなって思う時もあるし、前の日車と違うって感じる時もある。でも、それでも会わなくなる方が嫌なんだ」
虎杖「日車、頑張ってるから」
何も返せなかった。
頑張ってる。
その一言で片付けていいほど、あいつが受けたキズは軽くねぇ。だが、それでも虎杖は、今の日車から目を逸らさずにいようとしている。変わってしまったかもしれねぇ現実ごと、受け止めようとしている。……俺は受け止めきれてねぇのに……俺より、よっぽど強ぇガキだ。
日下部「そうか……なら会ってやってくれ。あいつ、おまえのこと大好きだからな」
虎杖「いや~、そこまで言われると照れるわ」
日下部「事実だろ」
虎杖「いや、事実でも……事実なのかな? 照れるもんは照れるって」
虎杖は誤魔化すように目元を袖で乱暴に拭った。
虎杖「早く買って行こう、そろそろ時間が来そう」
日下部「そうだな、早く行ってやらねぇとな」 - 24二次元好きの匿名さん26/05/18(月) 22:03:44
あまりにも分かりやすい変化だ
それを虎杖は気付いて日下部は気付いてなかったんだ
みんな苦しんでるね…
こんな形で目を見られたくなかっただろうな - 25二次元好きの匿名さん26/05/18(月) 22:15:32
虎杖と目が合うようになったのって
精神的なものじゃなくて
視力が弱っているからだったりするのか? - 26二次元好きの匿名さん26/05/18(月) 23:18:57
虎杖の目を見られない方が通常運転で正気の証拠みたいになってんのちょっと面白いけど起こったことが凄惨で笑えない
- 27二次元好きの匿名さん26/05/18(月) 23:41:15
虎杖の目が見られるってことはこの時点でもう記憶が失われてきてるのかな
- 28二次元好きの匿名さん26/05/18(月) 23:53:20
酷い目に遭いすぎて何を失っててもおかしくない、でも日車のことだから全部覚えてそうなんだよな
そこにおかしくなったままの精神と肉体が作用して行動にバグが起きてそう
そのバグをなくすために不要な記憶を封じたとか?
…結局何で日車は幼くなったんだ、本当に幼くなったのか - 29二次元好きの匿名さん26/05/19(火) 00:23:40
あーだから高専の廊下で会ったときに目を見れない日車を見て感慨深い気持ちになったのか
それはそうだよな仕方ないよ
一年以上ぶりだもんな - 30二次元好きの匿名さん26/05/19(火) 06:44:44
PRSD関連で精神退行ならわかるんだけど日車の場合は大人としての記憶はありつつ特定の記憶だけ封じられてるんだよね
一部の記憶に蓋をする&一定期間経過したらループって高度な術式使ってるのも凄いけど、なんで身体を幼児化したのかがわかんないんだよなぁ
メインの術式の副作用的なものなのか?それとも反転術式で治せないレベルの傷跡ができてしまったから傷そのものをなくすのではなく幼児化を…いやそれなら小学生レベルにせず20歳くらいとか、それこそ死滅回遊前くらいに戻しさえすればいいわけだもんな…
わっかんね〜〜!! - 31二次元好きの匿名さん26/05/19(火) 12:12:59
結論から言うと、ピンクの猫の人形は気に入ってくれたようだった。
雑貨屋で俺にしてみせたように、虎杖が「みてみてコレ!! 可愛いっしょ?」と元気よく猫の人形を日車の目の前へ差し出すと、日車はいささか困惑したように目を瞬かせた。
虎杖「俺に似て可愛いって日下部先生が選んでくれてさ!!」
そして虎杖が語弊のありすぎる台詞を続けると、日車は小さな瞳を揺らしながら、まじまじとケースの中のピンクの猫を見つめ、もごもごと口を動かした。
その視線は、猫の人形を見ているというより、透明なケースの奥に閉じ込められた何かを見つめているみてぇだった。
虎杖「日車? どした?」
日車「虎杖に、似ている……」
虎杖「あっ、日車もそう思うの?」
日車「虎杖……こんな狭い所に……」
虎杖「日車?」
彫りの深い眼窩が、今にも泣き出しそうに歪んだ。日車は差し出されたケースに手をかけると、引っ掻くように蓋を探る。
日車「出してやらないと……君を……」
酷く切実に震える声に、脳裏へ嫌な光景が乱反射する。
白々しい蛍光灯の光。
傷ついた肉体。
鎖に繋がれ、地下室へ閉じ込められていた日車の姿――。
虎杖「待って日車、俺じゃない、俺はここに……」
日車「出し……出して……」
日下部「日車」 - 32二次元好きの匿名さん26/05/19(火) 12:14:04
低く名前を呼ぶと、日車の肩がびくりと跳ねた。焦点の合わねぇ目が、ゆっくりと俺を映す。呼吸は浅く、ケースを掴む指先は痛々しいほど震えていた。
日車「あっ……あぁ……いた……どりが」
日下部「そうだな。こいつにそんな狭い所は似合わねぇわな。出してやろうか」
日車の手に触れ、一本ずつ指を剥がしていく。力はほとんど入ってねぇはずなのに、ケースへ縋りつくみてぇに指が固まっていた。
日車「あ……」
俺はできるだけゆっくりとケースを取り上げ、中のピンクの猫を取り出して日車の掌に乗せた。
日車は呆然とそれを見下ろし、壊れ物へ触れるみてぇに、そっと両手で包み込んだ。
日下部「虎杖が買ってきてくれたんだからな、ちゃんと大事にしろよ」
日車「……そうだな。大切にする、虎杖。ありがとう」
虎杖の様子を伺い見れば、その顔は痛ぇほど強張っていた。そりゃそうだ。ここまで混乱して日車を見るのは初めてだったはずだ。それでも虎杖は、数秒後には無理やりみてぇに口元を上げた。
虎杖「そんなに気に入ってくれた? 良かった〜。これプニプニして握る……少し揉むと気持ちいいらしいから、気が向いたら癒されてよ」
日車「ああ、君を撫でて癒されよう」
虎杖「そういう言い方されると、さすがにハズいよ」
日下部「いいじゃねぇか、可愛がってやれ」
虎杖「も〜、日下部先生まで!!」
虎杖は照れ隠しみてぇに大袈裟な声を上げながら、ベッド脇の椅子へどかりと腰を下ろした。その勢いに、さっきまで重く沈んでいた空気が少しだけ緩む。
照れ隠しもあんだろう。だが、無理して自分を鼓舞しているのも分かった。虎杖も辛いんだ。それでも、日車を元気づけようとしている。学生に任せず、俺も日車を支えてやらないと。
カバンに入れた黒猫の人形を思い出した。家に帰ったら、そいつも解放してやらねぇといけねぇ。
たかが人形だ。だが、日車に似た黒猫が狭いケースへ閉じ込められていると思うと、妙に息が詰まった。 - 33二次元好きの匿名さん26/05/19(火) 13:09:16
やっぱりおかしくなってる…
精神的に不安定とかじゃなくて人格そのものが変質してる気がする
あと退行も入ってそうだな?
おいたわしい… - 34二次元好きの匿名さん26/05/19(火) 13:19:31
このレスは削除されています
- 35二次元好きの匿名さん26/05/19(火) 14:40:58
- 36二次元好きの匿名さん26/05/19(火) 15:16:22
- 37二次元好きの匿名さん26/05/19(火) 15:42:19
受け取った瞬間にこんなに取り乱すなんて思わなかった…虎杖も辛かっただろうな…自分で選んだものが元気づけたかった日車のトラウマを呼び起こすきっかけになっちゃったんだから…
- 38二次元好きの匿名さん26/05/19(火) 15:52:59
眩しいからってのは建前で実際は顔を隠すためにサングラスをかけさせたんだと思った
- 39二次元好きの匿名さん26/05/19(火) 16:04:21
- 40二次元好きの匿名さん26/05/19(火) 22:39:16
前スレの135で
日車「っ!! 虎杖!! まて!! 自分で歩ける!!」
抱き上げられたと気づいて抗議するも軽々と片腕に収められてしまう。
虎杖「日車いっつもそう言うね。小さいんだから甘えなって」
って会話があったから最初は補助だったのが段々抱き上げか普通になってきたのかもね。
皆が日車を甘やかしたい気持ちあるのは、こういう過去があったからと思うとなんともいえない気持ちになるな…
- 41二次元好きの匿名さん26/05/20(水) 02:05:41
自分はなんやかんやスレ画の通り身体も幼児化してるんだろうな派だったけどスレ民の考察見たら確かにそう認識してるだけの可能性あるな…って思えてきた
楽しい - 42二次元好きの匿名さん26/05/20(水) 02:13:35
実際に子供の姿にはなってると思ってる
ただ、幼児化ではないんじゃないかなって予想してる - 43二次元好きの匿名さん26/05/20(水) 02:17:20
幼児化ではない、というと…?
- 44二次元好きの匿名さん26/05/20(水) 06:49:30
俺も理屈は不明だけど身体自体はなんらかの理由で縮んでいると思う(認識云々じゃなくて)
その理由が本当に全く分からんけど… - 45二次元好きの匿名さん26/05/20(水) 12:05:36
日車が目覚めて数ヶ月が経ち、今では蝉が鳴いていた。
日車の容体は安定していた。身の回りのことも、今ではある程度一人でできるようになっている。
精神の方はまだ本調子ではないものの、以前のように虚無的な様子ではなく暴れることもなくなった。呪符は相変わらず巻かれているものの、拘束自体は外されている。
ただ、上の連中は日車を退院させることへ難色を示していた。また非術師を巻き込み、術式を行使する可能性を危惧しているのだろう。
それでも、いつまでも入院させておくわけにもいかねぇ。そろそろ日車の処遇を真剣に考えなければならなかった。
日下部「日車、話がある」
日車は読んでいた本から顔を上げた。
以前のような怯えた様子はもうない。本を読んでいる姿だけ見れば、ただ静かな入院患者にしか見えなかった。
日車「どうしたんだ、改まって?」
日下部「……今後のことだ、退院の話が出てる」
日車「……退院、か」
日車は小さく復唱すると膝の上へ本を伏せる。驚いた様子はなかった。むしろ、いつか来る話だと分かっていたようだった。
日車「それで、上層部は何と言っている?」
日下部「まぁ……渋ってる。おまえがまた無差別に術式を使う可能性があるってな」
日車「当然だろう。信用できる要素がない」
率直に伝えると、日車は薄く笑った。怒っているわけでも、落ち込んでいるわけでもない。ただ事実を並べているだけの調子が逆に胸へ刺さる。
日車「それで? 監視付きでどこかへ隔離でもされるのか」
日下部「まだ決まっちゃいねぇよ。ただ……俺は、おまえをこのままずっと病院へ閉じ込めておくべきじゃねぇと思ってる」
日車の指先が伏せた本の表紙をゆっくり撫でる。
日車「外へ出れば、誰かを傷つけるかもしれない……それに、情けないが、まだ外自体が恐ろしい」
日下部「……まぁ、そりゃそうだろうな」 - 46二次元好きの匿名さん26/05/20(水) 12:17:24
胸が重かった。今の日車が恐れているのは、上の連中でも、自分の処遇でもねぇ。
誰かを傷つけること。そして、外の世界そのものだ。
病院の外へ出るだけで、知らねぇ人間とすれ違う。物音がする。視線がある。普通なら意識もしねぇようなことが、今の日車には恐怖として積み重なっていた。
日下部「無理に今すぐ退院しろって話じゃねぇよ。ただ、そろそろ考えなきゃならねぇ時期に来てる」
日車は黙って、本の角をなぞっている。
日車「……高専に行くのか?」
日下部「その案も出てる。高専だと監視は必要になるだろうが、少なくとも今よりは自由に過ごせる。虎杖たちも、おまえが戻ってくるの待ってるしな」
ぴくりと、日車の指先が止まった。
日車「……高専は、嫌だな」
日下部「なんでだ?」
問い返すと、日車はすぐには答えなかった。伏せた本の表紙を閉じて枕元に置き、それから小さく息を吐く。
日車「虎杖が気を使うだろう?」
そこんところは俺も考えた。だが、日車には今は自分の心配だけをしていてほしかった。
他人を気遣う余裕なんてないだろうに、それでもこいつは自分より先に周囲のことを考える。そういうところが、どうしようもなく痛々しくて、腹立たしかった。
日車「虎杖は優しいから、俺がいるとずっとこちらを気にかけてしまう。まだ子どもなんだ、高専で友人たちといる間は俺のことなど気にすることなく過ごしてほしい。俺の顔色を窺いながら生活するべきでは……」
言葉は途中で途切れたが、続きは言われなくても分かる。つまり、重荷になりたくない。自分がいることで、虎杖の日常を歪めてしまう。それが嫌だと日車は言っているのだ。 - 47二次元好きの匿名さん26/05/20(水) 12:24:40
日下部「……気にすんなと言ってやりてぇが、正直俺もそこら辺のことは考えた」
日車「だろう?」
日車は自嘲気味に鼻で笑い、わざとらしく肩をすくめた。
日車「そもそも俺は術師として扱われるのか? 外に出ることすら恐れているんだぞ? 術師としてどうなるか先の見通しが立たない者が高専で厄介になるのは流石に迷惑だろう……」
そうやって、自分を厄介者みてぇに扱う態度には苛立ちが募る。だが同時に、会話の調子が以前と同じように戻っていることへ、少し安心している自分もいた。
日下部「……そんなに高専が嫌なら俺んとこ来るか?」
日車「………………は?」
理解が追いついていないみてぇな、間抜けな声だった。
日車「……今、なんと言った?」
日下部「だから、俺んとこ来るかって言ったんだよ」
日車が高専を拒むことは、まぁ想像がついていた。だから、ひとつの案として先に上層部へ話は通してある。
日車は優秀な術師だ。現場へ戻せる状態じゃねぇとはいえ、燻ぶらせておくには惜しいだろう。だからこそ、下手に上の連中へ判断を任せれば、どんな扱いを受けるか分からなかった。
――日車の意思を無視して利用しようとするんじゃねぇか。呪具を使うなり術式を掛けるなりして、人格を奪ったまま無理やり働かせようとするんじゃねぇか。そんな意見が出れば流石に楽巌寺さんが止めてくれるだろうが、それでも可能性は捨てきれねぇ。俺は、そこまで上層部を信じきれていなかった。
――だから、手元へ置いておきたかった。少なくとも、自分の目が届く場所に。そんな俺の提案に、日車は眉を寄せながら、「正気か?」とでも言いたげな顔をした。
日車「君の家に……俺が?」
日下部「あぁ」
日車の表情がますます固まり、しばらく言葉を失っていた。それから、ようやく現実味を取り戻したみてぇに額へ手を当てる。
日車「なぜ? えっ? どうし……えっ?」
日下部「……冗談だよ」 - 48二次元好きの匿名さん26/05/20(水) 12:37:22
>日車「なぜ? えっ? どうし……えっ?」
なんで?ってなってる日車かわいい~って気持ちと随分感情が露呈しやすくなったな…って気持ち
こころがふたつある
素直になったより隠せなくなったって印象がある
- 49二次元好きの匿名さん26/05/20(水) 12:47:39
冗談じゃないだろ日下部!!押せ!!
…と言いたいところだが結局日下部の家に行くのを分かってるからこのまま静観 - 50二次元好きの匿名さん26/05/20(水) 13:30:34
あまりに動揺した様子に、さすがに気の毒になって冗談だと付け足すと、日車は露骨に肩から力を抜いた。
日車「なんだ……驚かせないでくれ」
日下部「そんな嫌そうにしなくてもいいだろ」
日車「嫌というより、困惑だ。君は時々、本気なのか冗談なのか分からない事を言う」
日下部「まぁ、俺の家は冗談だが、シン・陰流の道場の離れとか、使ってない屋敷とかあるんだが、そこはどうだって話だ」
補足すると、日車はようやく動揺から立ち直ったように瞬きをした。
日車「……最初からそう……いや、それでも……」
日下部「それでも、なんだよ」
日車「……迷惑だろう」
結局そこか、と喉まで出かかった言葉を飲み込む。
日下部「迷惑かどうかは、受け入れる側が決めることだろ」
日車「君は簡単に言う」
日下部「簡単じゃねぇよ。面倒だし、俺の仕事も増える。でもな、それでも病院に閉じ込めっぱなしよりはマシだと思ってる」
日車は何も言わなかった。それを隙と捉え言葉を続けた。
日下部「おまえが外を怖ぇと思うなら、まずは静かな場所で、少しずつ慣れていけばいい、道場の離れなら人通りが少ねぇし落ち着けると思う。そもそも人と会いたくねぇなら、屋敷で静養すればいい……俺も、できる限り一緒にいる」
日車「……俺に、そこまでしてもらう価値があるとは思えない」
日下部「あるかないかを、おまえが勝手に決めんな」
- 51二次元好きの匿名さん26/05/20(水) 18:05:38
ちょっとずつ元気になってる日車さん見れて嬉しいな。
日下部、そこは冗談じゃなくてもっと押してくれ〜!
困惑している日車さん可愛いけど、ここまで困惑するとは思わなかったわ。 - 52二次元好きの匿名さん26/05/20(水) 23:33:28
元から消えかけてた自信が風前の灯状態だ
これで11月来たら記憶消えちゃう状況までいくんでしょ?こわいよ… - 53二次元好きの匿名さん26/05/21(木) 01:04:07
このレスは削除されています
- 54二次元好きの匿名さん26/05/21(木) 01:11:14
このレスは削除されています
- 55二次元好きの匿名さん26/05/21(木) 01:13:39
思ったより強い声が出た。日車の肩が強張り息を詰める。
自分でも、少し感情的になっている自覚はあった。こいつはすぐ、自分を切り捨てる。誰かの負担にならないように、迷惑をかけないようにと、身を引こうとする。献身的で自己犠牲的。本人にそんなつもりはないんだろうが、傍から見ればどう考えたってそうだった。そのくせ、自分のそういう態度が誰かを傷つけるなんて、こいつは少しも分かっていない。それが、どうしようもなく腹立たしかった。
日下部「少なくとも、俺にとっては価値がある」
だから言い聞かせてやりたかった。
病室が静まり返り、蝉の声だけがやけに遠く聞こえた。日車がわずかに目を伏せる。その横顔が、少しだけ苦しそうに見えた。
日車「君は……なんでそんなに気にかけてくれるんだ?」
本気で、不思議そうだった。自分がそこまで気にかけられる理由なんて、考えたこともないみてぇに。
……いや、こいつの中には、最初からそんな発想自体なかったのかもしれない。
日車「忙しいだろうに、毎日のように面会へ来てくれて、身の回りの世話までしてくれる。今だけじゃなく、退院後のことまで考えて……責任感から来るものなのかもしれないが……もう、いいんだ。これ以上、君へ負担をかけたくない……俺のことは、放っておいてくれていい」
日下部「責任感だけで、ここまで面倒見ねぇよ」
日車は呪符の巻かれた腕に手を掛ける。無意識なんだろう、剥がすみてぇに爪を立てている。
日車「でも……ずっと支えてくれて、嬉しかった……こんな俺が……」
日車は何かを飲み込むみてぇに唇を引き結び、それから俯いて、小さく息を吐いた。
日車「だから、もう十分なんだ」
これ以上、自分なんかに時間を使わせたくない。言葉にはしなかったが、そう言いたいのだろう。俺は頭を掻きながら、ベッド脇の椅子へ深く座り直す。
椅子の脚と床が擦れる音が響いたが、日車は顔を上げることなく、視線が呪符へと落ちたまま動かなくなった。
日下部「おまえさ……だったら、そこで終わりにすんなよ」
責めたいわけじゃなかった。いや、責めていない、これは懇願だ。 - 56二次元好きの匿名さん26/05/21(木) 07:47:39
手放すよう促す日車もなんとか繋ぎ止めようとしている日下部も辛いよ…
- 57二次元好きの匿名さん26/05/21(木) 16:27:12
事件直後からずっと見守ってきて、こんな状態でも手元に置いておきたいってなったら
保護や引き取りに別のニュアンスが混ざるよな
もう頑張らなくていい、このままでいいから生きていてほしいって
相手を気遣っているように見せかけた、現状変化へのゆるやかな拒否すら感じられる - 58二次元好きの匿名さん26/05/21(木) 21:24:48
日下部「嬉しかったんなら、それでいいだろ」
日車「……」
返事はない。ただ、呪符を掻いていた指がトサッとベッドに落ちた。
日下部「だったら、これからも支えさせろよ」
口にした途端、妙に気恥ずかしくなった。窓を見ると、外では蝉がうるせぇくらいに鳴いていた。
日下部「言ったろ。おまえは、俺にとって価値がある」
俺は別に、こいつを自分のものにしたいわけじゃねぇ。感謝されたいわけでも、恩を返してほしいわけでもない。
ただ――こいつが、ほんの少しでも安らいで過ごせる、そんな日々を与えてやりたかった。 - 59二次元好きの匿名さん26/05/21(木) 21:28:35
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- 60二次元好きの匿名さん26/05/21(木) 21:32:56
日下部「別に、大層なこと言ってるわけじゃねぇんだよちゃんと飯食って、眠って、落ち着いて過ごす……まずはそれで十分だろ。術師としてどうするかとか、そんなもんは後から考えりゃいい。」
今の日車に必要なのは、もっと手前のことだ。安心して眠れる場所とか。怯えずに飯を食える時間とか。そういう、普通の人間なら当たり前に持ってるものが必要だった。
日下部「……おまえには、少しくらい普通に生きてほしいと思ってる」
言ったあとで、身体が妙に熱くなった。こんなことを言うのは柄じゃなかった。
日車「俺が……普通に?」
日下部「あぁ」
蝉の声に混じり、日車が息を呑む音が聞こえる。
日車「……普通に、生きる……」
日下部「そうだ、だからまぁ、考えといてくれ」
これ以上この話を続けていると、妙な気分になりそうで、俺は誤魔化すように立ち上がった。
日下部「次、来るときまでに答えを出しといてくれるか?」
返事は返ってこなかった。俺はその沈黙を、これからのことを深く考え込んでいるからだろうと解釈した。
軽く手を上げ、病室の扉へ向かう。
柄にもねぇことを言ったせいで変に落ち着かなかったのだ。
扉を閉める直前、ちらりとだけ視界の端に日車の姿を映す。日車は、俯いたまま微動だにしていなかった。 - 61二次元好きの匿名さん26/05/21(木) 21:34:19
ここからどう今の状態になるんだろうか
- 62二次元好きの匿名さん26/05/21(木) 21:38:13
――――――
―――――
―――
――このとき俺は、日車の顔をちゃんと見ていなかった。
だから、気づかなかった。日車の顔から血の気が引いていたことも、この世の終わりのように絶望に満ちた目をしていたことにも。
俺は、自分に酔っていたのかもしれねぇ。柄にもねぇ台詞を吐いて、勝手に気恥ずかしくなって、日車から目を逸らした。
「普通に生きてほしい」
そんな俺の願望ばかりが先走っていた。
その言葉を聞いた日車が、何を思うのか
そこまで頭が回っていなかった。
――日車がなにを目標として生きていたのかを失念していた。
「自分が犯した罪を蔑ろにしたくはない。法で裁かれ償いたい」
あんなに、あんなにも裁かれることを望んでいたと知っていたのに。そう……聞いて……知っていたのに……
日車「………………し……みず……」 - 63二次元好きの匿名さん26/05/21(木) 21:41:20
アッ地雷!!
- 64二次元好きの匿名さん26/05/21(木) 21:42:49
あかん(あかん)
- 65二次元好きの匿名さん26/05/21(木) 21:42:50
日車を思って掛けた言葉がこうなるか…あまりに切ない
- 66二次元好きの匿名さん26/05/21(木) 21:43:41
何もかもが日車の望みを妨げてくるじゃん、悪意も善意も
お前の願いが叶うわけないだろうって呪ってくるじゃん、呪詛師も呪術師も - 67二次元好きの匿名さん26/05/21(木) 21:44:21
辛すぎて心臓がキュッってなったわ
- 68二次元好きの匿名さん26/05/21(木) 23:32:57
あ…うわっ…マジか…(語彙力の欠如)
- 69二次元好きの匿名さん26/05/22(金) 02:06:20
もう日車も俺らもライフは0だよ…どうしてこんな酷いことに…
- 70二次元好きの匿名さん26/05/22(金) 10:05:14
ここからまた何かあるのか…?11月に狂うのは確定してるけどあと何回こんな辛い目に遭わなきゃいけないんだ…
- 71二次元好きの匿名さん26/05/22(金) 11:35:40
今が7月から9月くらいか
そろそろ来るか? - 72二次元好きの匿名さん26/05/22(金) 17:07:11
いまだによく分かってない点がいくつかある
・11月に封じた元の記憶が戻りやすいのと、それを上書きするための新しい記憶が2、3ヶ月でループするのに関連性はあるのか?
・死滅回游のことすら思い出せないのに呪術や高専、今の人間関係の記憶があるのならかなり捏造された記憶を植え付けられてる?
・記憶の暴走で泣いて怯える日車を虎杖はなぜ知っている?目の当たりにした?
・記憶の暴走で日車が半永久的に封印、閉じ込められることを虎杖はなぜ知っている?周知されてる?
今の日車ってどういう扱いなんだ、次暴走したら身体ごと封印される不発弾みたいな扱いなのか - 73二次元好きの匿名さん26/05/22(金) 17:57:50
日車との面会を終えたあと俺は呑気に眠っていた。
その間、あいつに何かあったかも知らないで。
その後も、「考える時間が必要だろう」とか、「日車を迎える準備で忙しかった」とか。今になれば全部言い訳だ。結局、俺は数日間病院へ顔を出さなかった。
5日が経ち、面会へ行こうと動けば、急な任務が入り、次の日は退院前の検査で面会禁止。その翌日には補助監督から直接的に「今日はやめた方がいい」と忠告を受けた。
妙に、嫌な予感がした。制止を無視して病室へ向かった俺は――そこで、地獄を見た。
虚ろな表情、乾いた唇、光の無い瞳。
外されたはずの拘束具が、また身体を縛っていた。食事が取れるようになって不要になったはずの点滴まで、腕から伸びている。まるで、最初の頃へ逆戻りしたみてぇに……
伊地知「日下部さん」
俺を追ってきた伊地知の呼びかけに振り返ることもできなかった。視界が、ベッドへ縫い付けられたみてぇに動かねぇ。
伊地知「……失礼します」
そんな俺に埒が明かねぇと思ったのか、伊地知は廊下と病室を隔てる扉に手をかけた。レールを滑る音と共に、日車の姿が閉ざされる。
動悸が収まらなかった。喉が浅く鳴る。息の吸い方を忘れたみてぇに、肺が上手く動かねぇ。さっき見た光景が、頭の中で何度も反芻される。
まるで、壊れているみてぇだった。
いや、違う。壊れていた。妹と同じように……俺が、目を離している間に……
日下部「何が……あった?」
伊地知はすぐには答えなかった。押し黙り、代わりに目配せで廊下の先を示す。病室の前でする話じゃないと暗に示され、嫌な予感が濃くなった。
俺は促されるまま歩き出した。足音がやけに大きく響く。しばらくすると病棟の廊下の明かりが途切れ、薄暗い非常口の前で伊地知が止まる。振り返れば廊下の端に日車の病室が見えた。数十歩しか離れていないはずなのに、ひどく遠く感じる。
伊地知「……日車さんは、自殺未遂を図りました」 - 74二次元好きの匿名さん26/05/22(金) 18:51:48
もう皆壊れるて…こんなの…
- 75二次元好きの匿名さん26/05/22(金) 18:58:25
下には下がある
地獄に底はない - 76二次元好きの匿名さん26/05/22(金) 19:54:33
描写が丁寧で日下部の内心と日車の状態を思うと胸が痛い
この後どんな思いで記憶抑え込んだ日車と一緒に過ごしたんだろ - 77二次元好きの匿名さん26/05/22(金) 22:43:41
今すぐにでもあの呪詛師をぶち○しに行きたい
なんで日車も周りも辛い目にあってるんだ
目を離した間に、どころか自分の発言がトリガーになったって知ったら日下部はどんな… - 78二次元好きの匿名さん26/05/23(土) 03:13:28
耳鳴りがした。伊地知の声は聞こえているはずなのに、意味だけが上手く頭へ入ってこねぇ。
日下部「……悪い……なんて言った?」
なんでわざわざ聞き返した? 聞き間違いであってほしかったのかもしれねぇ。伊地知は一瞬言葉を詰まらせた。それでも、絞り出すように続ける。
伊地知「シーツをベットの柵へ括り付けて、首を吊ったそうです」
――どうして!!
理解が追いつかねぇ。息を吸ったはずなのに、空気が上手く入ってこねぇ。指先が、じわじわ冷えていく。
シーツ、柵、首、単語だけが、ばらばらに頭の中へ落ちていった。
日下部「いつ……いつだ……いつ……」
まともに舌が回らない。喉が張り付いて、肺さえまともに動かねぇ。何故、何故、何故、何故ばかりが頭の中を巡る。
伊地知「8日前の夕方頃だそうです」
8日。その数字が、鈍器みてぇに頭を殴った。
その日は俺が最後に面会に行った日だ。夕方頃ということは……俺が帰った直後じゃねぇか?
――次、来るときまでに答えを出しといてくれるか?
その答えがこれか?
お前には価値があると伝えた。普通に生きてほしいって伝えた。お前だって、俺に支えられて嬉しかったって言ったじゃねぇか!
……なのに、なんでだ。
日下部「……俺に……教えなかったのは?」
なんで隠した。なんで止めた。なんで俺を病院へ来させようとしなかった。
伊地知は押し黙った。現実感がない。足が震えて立っているのもやっとだ。苦しい。でも、日車の方がもっと苦しいはずだ。 沈黙の後、伊地知は苦いものを吐き出すみてぇに口を開いた。 - 79二次元好きの匿名さん26/05/23(土) 03:34:07
伊地知「……上層部に止められていました。日下部さんを刺激するなと」
日下部「……はは」
掠れた笑いが漏れる。意味が分からねぇ。日車は首を括ったんだぞ。死のうとして、失敗して、今もベッドへ縛り付けられてる。いつかバレることだろうに、先延ばしにしてなんになるんだよ。俺を刺激するな?逆効果だ。
日下部「ふざけんなよ……早く、知っていれば……」
怒鳴りたいのに、肺がまともに動かねぇ。喉が焼けるみてぇに痛い。
知っていたところで、何ができたのかは分からねぇ。けど、それでも。何も知らなかった八日間が、どうしようもなく罪みてぇに思えた。
伊地知「……日下部さん、今日は帰りましょう」
日下部「帰れるわけねぇだろ……会う……」
伊地知「いいえ、会わせられません」
日下部「うるせぇ!!」
伊地知「日下部さん!!」
衝動のままに叫ぶと、即座に伊地知が鋭い声で制した。伊地知は息を乱したまま、それでも必死に言葉を繋ぐ。
伊地知「今の日車さんは、人と会うのに耐えられないんです……!」
日下部「……っ」
伊地知「親しい人であればあるほど拒否反応を示します。まだ私相手だと業務的に対応できるようですが、日下部さんだとパニックを起こす可能性があります。食事も拒否して、点滴で繋いでいる状態です。これ以上刺激を与えると、どうなるか分かりません……」
否定したかった。俺が行けば、少しは違うんじゃないか。俺なら、まだ、そう思いたかった。しかし、8日前の現実が喉へ突き刺さる。俺が言葉を残して帰った、その直後、日車は首を吊った。その事実が、何より重かった。
日下部「……なら、ずっと拘束されたままか? 8日間ずっと?」
伊地知「……今回は事情が違いますので、1級術師が立ち会っていても拘束は外せません。なので、日下部が側で立ち会っていても日車さんを自由にはできません。」
あぁ、そうか、今回は……暴れるからとかではなく、死のうとするから拘束してんのか。妹もそうだった。最愛を失い狂った妹も、タケルの後を追おうとした妹も、そうだった。
あいつも妹と同じ末路を?いや、妹は最終的に、そんな気も起こせねぇくらい壊れた……壊れちまった……。 - 80二次元好きの匿名さん26/05/23(土) 06:28:41
正しく裁かれて罪を償いたいって言ってたのに
普通に生きるなんて許されないし清水もいないし、ジャッジマンも出せないからって自分自身を裁いた結果がこれ…? - 81二次元好きの匿名さん26/05/23(土) 09:10:14
日下部は身近に壊れてしまった人がいるから余計に応えるわな…つら…
- 82二次元好きの匿名さん26/05/23(土) 11:20:23
日下部が帰った直後なのか…もう本当に全部が辛いわ…そんななら発狂して暴れるから拘束してる方が救いだったよ…
- 83二次元好きの匿名さん26/05/23(土) 11:22:39
直前に清水って呟いたのが少し不思議だったけどこういうことだったのか…ちょっと本当に救いがなさすぎる
- 84二次元好きの匿名さん26/05/23(土) 11:25:23
自分の言葉がトリガーになって大切に思ってる人が432図るなんて日下部も狂っても全然おかしくないぞ
- 85二次元好きの匿名さん26/05/23(土) 13:51:13
- 86二次元好きの匿名さん26/05/23(土) 13:54:39
伊地知さんが支えてくれているからこそ最悪を免れたんじゃないかな
ここまで読んで、伊地知さんはさり気ないけどめちゃくちゃ重要な役割を果たしていると感じた
普段怒らなそうな日下部に怒鳴られるとか相当怖いだろうに二人を守るために盾になっていて格好いいよ伊地知さん……
- 87二次元好きの匿名さん26/05/23(土) 14:00:09
日下部は精一杯寄り添おうとしていたし日車も最初の殺人からずっと精神的にギリギリだったからそこに身体的なトラウマが加わってこうなるのも理解できるしもうね…つらい
- 88二次元好きの匿名さん26/05/23(土) 18:04:21
こんな惨状から話せて歩けて、ご飯も食べられて、ひとりで寝起きして身支度が整えられる状態まで回復したの?
何なら日車は一度死んで日下部に一から育て直してもらったといっても過言ではないのでは
手中の珠じゃん - 89二次元好きの匿名さん26/05/23(土) 18:12:46
>>88 多分これが一番正解に近い気がする……
- 90二次元好きの匿名さん26/05/23(土) 18:45:43
このレスは削除されています
- 91二次元好きの匿名さん26/05/23(土) 18:47:35
伊地知「帰りましょう、日下部さん」
日下部「……嫌だ」
子どもじみた駄々だった。みっともねぇ。情けねぇ。でも。
日下部「せめて……もう一回、顔だけでも見させてくれ……」
伊地知はすぐには答えなかった。
非常口の薄暗い灯りの下で、苦しそうに目を伏せている。止めるべきか否かまよっているのだろう。 しばらくして伊地知は何かを言いかけて、結局、飲み込むように唇を閉ざした。
伊地知「……少しだけですよ。先に私が確認して、眠っているようでしたら、顔だけ見て帰りましょう」
俺は返事もできねぇまま頷いた。
足の感覚が曖昧だった。それでも伊地知の後を追って廊下を歩く。病室までの数十歩が、途方もなく遠い。ようやく辿り着いた病室の前で、俺は立ち尽くしたまま、伊地知が中へ入っていくのを眺めていた。
心臓が嫌な脈を打っている。
逃げ出したいのか、今すぐ駆け寄りたいのか、自分でも分からねぇ。しばらくして、伊地知が病室から出てきて小さく手招きした。
入れ替わるように病室へ足を踏み入れる。
視界に日車が映る。虚ろだった表情は眠っているからか幾分穏やかに見えた。光の無い瞳は閉ざされ、薄く胸だけが上下している。その姿に目頭が熱を持った。ベッドへ近づくたび、視界が狭くなる。
白い首元をる見ると、紐ではなかったからか、痕は残っていなかった。
でも、それでも――理解した瞬間、胃の奥が捻じれた。
日下部「……っ」
必死に声を抑える。日車の顔へ震える手を伸ばしかけて――止めた。
触れていいのか、分からなかった。触れてしまうと、もう手離せなくなりそうだった。 - 92二次元好きの匿名さん26/05/23(土) 19:46:47
日下部、まさかお前攫ったのか…?
いやこれ攫っただろ…じゃなきゃ危険視されてる日下部のところに日車が預けられるわけがない… - 93二次元好きの匿名さん26/05/23(土) 23:40:42
伊地知さんがいてくれて良かったな
ここから日下部がどうやって記憶を封印して日車を子供の姿?にしたのだろう - 94二次元好きの匿名さん26/05/23(土) 23:44:01
子供の姿はあくまで結果で実際は別物だと思う
- 95二次元好きの匿名さん26/05/24(日) 01:43:04
- 96二次元好きの匿名さん26/05/24(日) 09:28:56
ただでさえ心が死んでるのに呪術師としても使い物にならなくなったから秘匿死刑の対象にされそうな日車だ
もしくは頭を弄られて誅伏賜死を運用するだけの人形にされそう
それらを知った日下部が激怒して日車を隠したとか
ふたりの逃避行も実は2ヶ月以上の時間が過ぎてる可能性もある、あれが2ヶ月で回復するとは思えない… - 97二次元好きの匿名さん26/05/24(日) 10:32:11
今追いついた、part1に誘導してくれた人本当にありがとう
それはそれとして辛え、高羽呼びたい - 98二次元好きの匿名さん26/05/24(日) 10:38:31
さすがの高羽もこの状況を笑いに変えることはできねえよ…ウケる要素ゼロだもん…
- 99二次元好きの匿名さん26/05/24(日) 12:56:49
どうしたらいいのか分からなかった。
日車のためにできることを考えて、考えて、考えて、――もう、何も分からなかった。
病院を出たあと、伊地知に付き添われて高専へ戻った。残っていた書類仕事に手を出したが、紙の上を滑る文字はまるで頭に入らず、時間だけが無意味に溶けていく。
見かねた伊地知に「今日はもうご自宅へ帰って下さい」と言われたが、到底そんな気にはなれなかった。それでも、これ以上無様な姿を見せ続けるのも悪くて、重い腰を上げる。伊地知は家まで送りたそうにしていたが、「一人になりたい」と断った。
気づけば、足はまた病院の方へ向いていた。向かったところで、会えるわけでも、助けられるわけでもねぇ。ただ、少しでも日車の近くにいたかった。
何時間歩いただろうか。気づけば、病院が見える公園のベンチに腰を下ろしていた。 - 100二次元好きの匿名さん26/05/24(日) 16:30:16
夜風が生暖かく、頭を冴えさせるには物足りなかった。途中、コンビニで買った煙草を口に咥えて火をつけようとして、やめた。
味がしねぇことは分かってたし。肺に煙を落としても何も満たされねぇ。それに、今禁煙を破ると、それが日車のせいになるようで気が引けて、火がない煙草を指の間で弄ぶだけになる。
遠くで車の走る音がする。誰かの笑い声も聞こえた気がしたが、頭に入ってこなかった。
日車が……あいつが、死のうとした。
あいつの身に起きたことを考えれば無理もねぇ。頭では分かるが、最近は……笑うことだってあった。長い時間をかけてでも、もとに戻れると思えた……思い込んでいただけだったのか……
指先の煙草がくしゃりと潰れる。力を入れたつもりはなかった。
……俺のせいなんだろうな。
俺の何らかの言動が切っ掛けになったんだろう。もしかすると、俺の元に来ること自体、負担だったのかもしれねぇ。
なのに。それでも、日車の傍にいたかった。後悔が際限なく湧いてきても、手放したくなかった。
大切だった。誰にも傷つけられたくなかった。穏やかに生きてほしかった。
――奪われたくなかった。あぁ、これは……
天啓のように、自覚した、これは独占欲だ。俺のものですらねぇのに、日車を自分のものにしたかった。結局俺は、あいつの気持ちより、自分の独占欲を優先していたんだ。俺は、あいつのことを見ていたつもりで、見ていなかった。
『ずっと支えてくれて、嬉しかった』
脳裏にあの日の声が蘇る。吐息交じりで、掠れて、弱々しくて。それでも確かに、日車はそう言った。俺も、嬉しかった。終わりにしたくなかった。支えたかった、自分を肯定することができねぇあいつを抱き締めて、価値があると教えて込んでやりたかった。少しでも、幸せにしてやりたかった。
不意に、思い至った。
そもそもあいつは幸せなど望んでいなかった。あいつの辛気臭い面を見て前々から思ってたじゃねぇか、あいつの人生にハッピーエンドはねぇなって。
あいつは呪術師に後悔の無い死など無い中で、後悔の無い死に辿り着くために生きていたようなもんだ。
罪を悔い罰を受けるために抗っていた、法で裁かれ償いたい、その結末が死でも構わねぇって。 - 101二次元好きの匿名さん26/05/24(日) 16:34:43
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- 102二次元好きの匿名さん26/05/24(日) 16:39:13
でも……同時に、死にたいわけではないとも言っていた、死ぬことはない、壊れねぇって言っていた。だから、生きてくれたらと願ってしまった。
――それの何が悪い
言い訳ばかりか巡り、己を正当化しようとしてしまう。そういう奴らのせいであいつは追い詰められて呪術師になり、その果てにこんな状態になったっていうのに。
日下部「あいつ……どうなっちまうんだろう……」
病院の窓をぼんやり見上げる。消灯時間は過ぎているはずなのに、まだ灯りの点いた窓がいくつか見えた。その中に日車の病室もあるのかもしれねぇと思うと、妙に息が詰まった。
今、あいつは何を考えている。また、自分を傷つけようとしていないか。呪符に巻かれた細い手足と拘束具に縛られた身体が脳裏に浮かぶ。思わず奥歯を噛み締めた。あと少しで、退院だった……いや、おそらく退院自体はするのだろう。身体の状態そのものは安定している。なら、自宅に戻される。妹の時がそうだった
1人では何にも出来なくなって、無気力に横たわっているか暴れるか、一生病院から出らねぇだろうと思っていた。それでも、一度は退院して家に戻ってきた。
妹は、壊れたままで戻ってきた。
呼びかけても反応が薄く、焦点の合わねぇ目で天井を見上げている日もあれば、突然泣き叫んで物を投げる日もあった。
夜中、物音で飛び起きて部屋へ向かえば、爪が割れるほど壁を掻き毟っていたこともある。
俺は、それを止めることしかできなかった。抱え込んで、暴れる腕を押さえて、「大丈夫だ」と繰り返すことしか……何が大丈夫なのか、俺自身分かっていなかったのに。
……そんな状態でも、退院はするんだ。俺の元へ来ないなら日車はどこへ行っちまうんだろう。
上の連中は信用できねぇ、宿儺との戦いに協力したとはいえ、本来日車は秘匿死刑に処される立場だった。それを死刑にしない、犯した罪は不起訴にする。そのかわり呪術師として働けと、日車の意思をまるっきり無視して突き付けてきた奴らだ。本当に……本当にどんな扱いを受けるか分からねぇ。
下手すりゃ……脳みそ弄られて上層部の都合のいいように動く人形にされちまう……
そこまで考えて吐き気がした。あり得る、あり得てしまう。 - 103二次元好きの匿名さん26/05/24(日) 17:50:09
日車って自分に向けられたものを拒めないんだろうなぁと思った
善意も悪意も全部受け止め続けてついにひび割れて穴が開いたのが死滅回游
全体にひびが入っても辛うじて形だけ保っていたのがあの事件
それで今回の未遂で元の形が分からなくなるくらいバラバラに崩れた
これから日下部が欠片をひとつひとつ拾い集めて、日下部の望む形の日車を復元していくんだろうな
金継ぎされたひまわりの柄のティーカップみたいだ - 104二次元好きの匿名さん26/05/24(日) 18:04:35
言い方が悪いのかもしれないけど思ったよりアツヤの自責の念が強すぎないことに安心した
- 105二次元好きの匿名さん26/05/24(日) 18:42:49
記憶を弄る術式だって、精神へ干渉する呪具だって存在する。上の連中が判断すれば「危険だから管理が必要だ」という名目で、どんな処置をされたっておかしくねぇ。 従順になるように。反抗しねぇように。都合のいい呪術師として使えるように……
楽巌寺さんが止めても、やってしまったもんはしょうがねぇと強行されれば止められねぇ。嫌だ、嫌だ、嫌だ、日車……
『……上層部に止められていました。日下部さんを刺激するなと』
頭を抱えた瞬間、ふと思い出した。
伊地知が、そう言っていたことを――
「日車さんが人に会える状態ではなかったので言い出せませんでした」とか 「日下部さんがショックを受けると思って」とかじゃなくて、上からの指示で、俺に日車の状況を話すなと、上層部に、俺を刺激するなと指示された――そう、言っていたよな。
何でわざわざ、上層部が俺を刺激するなと伊地知に指示するんだ? 伊地知が個人的に俺を心配していたとかなら納得はできねぇが、まぁ、わかる。そりゃ俺を刺激したくねぇわな、何をするか分からねぇから。
でも上層部が出張るのはおかしい、上層部が俺を気遣う理由なんざ、ねぇ。なら、俺を刺激するなという判断は――俺を危険視し、警戒したってことだ。
日下部「……何を警戒した?」 - 106二次元好きの匿名さん26/05/24(日) 19:01:57
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- 107二次元好きの匿名さん26/05/24(日) 19:03:47
タバコが地面に落ちた。全身から冷や汗が吹き出し、悪魔のような想定が流れ込んでいく。
俺が、シン・陰流の当主として、日車の身元を引き受ける案を出したとき、上層部は難色を示していた。でも下の意見に難色を示すのは五条による粛清前からそうだった。
だから、そんなもんだろと、あまり気に留めなかったが……よく考えると、俺が日車を引き受けるのは上層部にとって都合が良くねぇか、だって……言いたくねぇが……戦力として使い物にならねぇ呪術師を上層部が管理するのは手間だろう。
適当な施設に放り込むのは無理だ、日車は才能も実力も一級品の呪術師だ、相当腕の立つ術師が張り付くか、今のように呪符で抑え込むしかない。あいつらが丁寧に日車の世話をするとは思えなかった。だからこそ俺が引き受けてやりたかった。
……なんで難色を示したんだ? 日車で何かしたいことがあったのでは?
喉がひゅ、と嫌な音を立てる。嫌な想像ばかりが次々と噛み合っていく。
日車は強い。術式も厄介だ。しかも頭が切れる。
従順なフリして強情なタイプで、上の命令を素直に聞く人間でもない。だからこそ、今なら――今の抵抗できねぇ状態なら――都合のいいように弄くられて、加工されて、上層部の命令を何でも聞く人形にされかねぇ。
日下部「……っ」
このまま、日車に会わなかったらどうなる。次会ったとき、日車はどうなってるんだ、いや、そもそも……会えるのか?
その疑問が浮かんだ瞬間、急に世界の輪郭が曖昧になった。
違う。こんなことをしていいわけがねぇ――理性が遠のいて、感情さえもぼやけていく。
ただ、泥のように全身をまとわりつく重い衝動が、公園のベンチから己の体を遠ざけた。 - 108二次元好きの匿名さん26/05/24(日) 19:05:31
あーーー!!だから被害者だの加害者だの罰って言ってたのか!!
- 109二次元好きの匿名さん26/05/24(日) 19:15:25
うぉおおおだいぶ進んだ!!
個人時に日下部が日車の自○理由に気づいてくれたの良かったと思った…まぁ自分の言葉のせいってのは辛いだろうが
そして上層部はやはり腐ってんな - 110二次元好きの匿名さん26/05/24(日) 19:31:39
本能で動き出しちゃったね
- 111二次元好きの匿名さん26/05/24(日) 23:31:35
気になりすぎて心拍数がえげつない
- 112二次元好きの匿名さん26/05/25(月) 01:14:43
病室は変に明るかった。夜だというのにカーテンが空いており、月明かりが窓から差し込み日車の顔を照らしている。
月の光は白い肌をなおさら青白く見せる。昼間は躊躇して、触れることができなかった痩せた頬に指を添わせると、思っていたよりも温かな体温がじわりと伝わった
監禁されていた地下室で、傷だらけの肉体に触れた時に感じた頼りなさとは違う、確かな熱がそこにはあった。
生きている……指先が震えた。あの時は、触れた瞬間にも壊れてしまいそうだった。血に塗れて、呼吸すら曖昧で、腕の中で消えていくんじゃねぇかと恐ろしくて仕方なかった。
けれど今、日車はここにいる。痩せ細って、呪符に巻かれて、拘束具まで付けられて、それでもまだ、生きていた。頬に触れたまま視線を落とすと、伏せられていた瞼がゆっくり持ち上がる。
黒い瞳が、ぼんやりと俺を映した。そして大きく見開かれる。何故ここにいる、と問い掛けるみてぇな目だった。ちゃんと、俺を認識している。そのことに、どうしようもなく安堵する。
日車「……日下部?」
小さい……けれど思っていたよりずっとしっかりした声だった。それだけで、胸の奥に歓喜が沸き上がる。
日車「夢……違う……日下部だ……なぜ、いるんだ……」
あぁ、まだ届く。まだ、俺の声が届いている。
日下部「答えを聞きに来た」
ベッドへ腰を下ろすと、スプリングが小さく軋んだ。
日車はまだ混乱しているのか、焦点の定まりきらねぇ目で俺を見ている。逃げようとも、看護師を呼ぼうともしなかった。ただ、理解が追いつかねぇみてぇに呼吸が浅い。
日車「……答え……?」
日下部「あぁ、次に来るときまでに答えを出しといてくれるかって言ったよな」
視線が揺れる。まだ意識がはっきりしていねぇのか、それとも俺の言葉の意味をゆっくり噛み砕いているのか分からなかった。
呪符を巻かれた細い腕に重なる拘束具が、無性に目障りだった。こんな状態になって……もうここへ置いてはおけなかった。咄嗟に日車の布団を剥いで、刀に手を掛ける。 - 113二次元好きの匿名さん26/05/25(月) 02:56:33
うわああああ!!こんな早く強行手段に出ると思わなかった!!刀身に青白い光と困惑した日車の方が写るとこまで見えた!!
- 114二次元好きの匿名さん26/05/25(月) 07:57:46
日下部の予想が正しいなら時間かけてらんないしな
- 115二次元好きの匿名さん26/05/25(月) 12:35:54
日下部「目を閉じてろ」
日車「?……っ!……まて!何を!」
得物を持って出てきてよかった。こいつを解放してやれる。
鋭い一閃、抜刀音が静かな病室に短く走る。月光を弾いた刃が白く閃き、日車の右手首を固定していた拘束具を断ち切った。硬い革と金具が裂ける鈍い音。切断されたベルトの端が跳ね、呪符の貼られた腕が弾む。
日車「っ――」
息を呑む気配を無視して刃を返す。左手、次いで両足、日車を捕らえていた拘束具に刃が走るたび呆気なく断ち切れていく。月明かりの下、拘束から解放された日車の四肢が力なくシーツへ沈んだ。
日車「……な、にを……」
その問いに答える余裕はなかった。最後に残った腰の固定具へ刀を滑らせる。ベッドと身体を繋いでいた太いベルトが張り詰める。刃が食い込み、硬い繊維を断ち切っていく感触が腕へ伝わった。
ぶつり、と鈍い音。腰を拘束していたベルトが切れ、反動で金具がベッド柵へぶつかって甲高い音を立てる。それで全てだった。日車の身体を縛っていたものが、ようやく消える。刀を下ろしたまま、荒い呼吸を吐く。
日車「っ……どう……したんだ……いったい……なぜ……」
拘束が外れたはずなのに、日車の身体は逆に強張っていた。逃げようとしているのか、無意識なのか、解放された腕が、縋るみてぇにシーツを掴む。
その目に浮かんでいたのは困惑だけじゃない。明確な怯えだった。
日下部「……悪い、もうしねぇ。もうお前に刃を向けることはねぇ」
日車「……なら……何を、するつもりだ……」
日車は身体を起こそうとせず、ひたすら警戒していた。怖がらせたいわけじゃなかった。こんな顔をさせたかったわけじゃなかった。俺は……
日下部「迎えに来た」
日車「……は……?」
日下部「お前を連れていく」
日車「……連れて……いく……?」 - 116二次元好きの匿名さん26/05/25(月) 12:59:14
うおおお〜!!激アツ展開!!
覚悟を決めた日下部は更にかっこいいね
日車は素直についてきてくれるのか - 117二次元好きの匿名さん26/05/25(月) 13:10:47
理解が追いついてないようだった。
日車「……君、自分が……何をしているのか……分かっているのか……」
いや、分かっているな。これは……その上で……
日車「今なら間に合う……見つかる前に、出ていってくれ……」
――俺を止めようとしている。自分がどうなるかじゃなく、俺の心配をしてやがる。この期に及んで俺を庇おうとしている。
日下部「俺のことは気にするな。それより俺はまだ聞いてねぇ」
日車に被さるように身を乗り出すと、日車の口から「ひっ」と悲鳴が漏れた。
……何してんだ。迎えに来たんじゃなかったのか。助けたかったんじゃなかったのか。なのに今、目の前の日車は、呪詛師でもなく上層部でもなく、俺に怯えている。
それでも、止められなかった。腕を伸ばし日車の肩を抱く。抱き寄せた瞬間、日車が身を竦ませる。逃げようとしたのか、押し返してきた手は、力なく俺の胸元に触れただけで落ちた。明確な拒絶だった。それでも腕を緩めることができねぇ。あの日と同じように懇願する。
日下部「嫌がらないでくれ、頼む、俺んとこに来てくれ…… 」
日車「それは……」
日下部「頼む、頷いてくれ、無理強いはしたくねぇんだ、でもな、そうも言ってられねぇ」
日車の喉が音もなく上下する。俺を説得したいのか、それとも何も考えられなくなっているのか分からねぇ。ただ、抱き込まれた身体だけが、逃げ場を探すみてぇに強張っていた。
日車「……日下部……どうして……」
日下部「……怖かった……お前、次会う時には、もう居なくなってそうで……怖かった」
抱き締めた身体は細く、熱だけがやけに生々しい。地下室で見つけた時の感触が、まだ腕に残っている。血塗れで、冷たくて、息も浅くて。それでも体温があって……それすら失われると思うと耐えられなかった。 - 118二次元好きの匿名さん26/05/25(月) 13:19:18
この日車は「俺を助けると思って攫われてくれ」だったら頷いてしまうタイプと見た
- 119二次元好きの匿名さん26/05/25(月) 13:49:23
ここまで怯えている日車にこれ以上の強要をアツヤがするか?って思ったけどそれすら利用しそうではあるな
- 120二次元好きの匿名さん26/05/25(月) 14:25:12
日車は日下部の言葉きっかけで自殺しようとしたけど、病室に急に現れた日下部には意外と普通に喋れたんだな。なんとなく自殺しようとしたことを怒られるから怯えたってよりは、日下部が連れ出すことで上層部から睨まれることに対しての怯えのようにみえる
どかまでも他者なんだよな日車は… - 121二次元好きの匿名さん26/05/25(月) 15:48:06
日下部「覚えてるか、価値があるって、俺にとってお前は価値があるって言ったの、覚えてるか」
日車「それ……は…」
日下部「終わりにしたくねぇ、だから、お前を連れて行く。お前が何と言おうとどれだけ嫌がろうと連れて行く……でもな、無理強いしたくねぇ、頼む……頷いてくれ……」
言い終えたあと、喉の奥が焼けるみてぇに熱かった。
脅しているのと変わらねぇ。拒否権なんて最初から残していないくせに、それでも頷いてほしいと願った。救いようのないほど身勝手で矛盾していた。しかし、どうしても、建前でも、頷いてほしかった。
日車「……何を言っても無駄なんだろうな……」
諦めたような声だった。呆れにも聞こえた。けれど次の瞬間、日車の腕が俺の首へ回される。合図だと思った。
背中と膝裏へ手を回してその身体を抱き上げる。軽すぎる重みに、一瞬だけ息が詰まる。だが立ち止まれなかった。日車を腕に抱いて病室を後にする。日車は何も言わなかった。
病室には切り裂かれた拘束具と、置き去りにされた白いシーツだけが残っていた。 - 122二次元好きの匿名さん26/05/25(月) 16:26:13
日車やっぱり頷いてしまうよな…
今ではこの選択が良かったと思えたらいいが
それにしてもスレ主の表現力が凄いな
文書に引き込まれるって改めて思った
続きも楽しみだ - 123二次元好きの匿名さん26/05/25(月) 16:33:24
>けれど次の瞬間、日車の腕が俺の首へ回される。合図だと思った。
ここでもうお姫様抱っこだって予想させる描写だしスレ主の手腕が光る
んでトドメの
>背中と膝裏へ手を回してその身体を抱き上げる。
情景がありありとうかんできて…
- 124二次元好きの匿名さん26/05/25(月) 16:50:32
退院を促されてはいたけれど絶対に健康体ではないんだよな日車
頬もこけてて手足も細くなって体重だって随分軽くなって…
良くも悪くも恐らく世界で一番安全な日下部篤也一級術師の腕の中にしまわれてしまったね
あたたかい檻の中に自分から入ったんだ、そう簡単には出られないし出してもらえないぞ - 125二次元好きの匿名さん26/05/25(月) 17:37:02
- 126二次元好きの匿名さん26/05/26(火) 00:34:46
ここから短い期間だけど穏やかに二人で過ごせた時間があったんだよな…
- 127二次元好きの匿名さん26/05/26(火) 08:26:41
短期間だけどその間って総監部にバレなかったのかな?1〜2週間ってわけじゃなさそうだしバレてなにかしら対処されそうだけどお目溢しされてたのかな
- 128二次元好きの匿名さん26/05/26(火) 08:48:52
日下部も総監部に利用されてた可能性
今の状態の日車だと精神も肉体も虚弱すぎて人形にしてもすぐに使い物にならなくなるから、
入れ込んでる日下部に世話をさせてある程度回復してから奪取しようと計画されてたとか
- 129二次元好きの匿名さん26/05/26(火) 09:40:34
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――――――
――――
日下部「あの日、日車を攫ったことは後悔してねぇ、間違ったことだとも思ってない」
日下部「ただ、目を離してしまったことは致命的な間違いだった。誰にも相談せず、一人で全部抱え込もうとしたこともな」
日下部「あいつ、笑ってたんだよ。憑き物が落ちたみてぇに穏やかに……だから、一日くらいなら大丈夫だと思っちまった」
日下部「馬鹿だろ」
日下部「あいつは俺を解放したかったんだ。自分が居る限り、俺を縛るって本気で思ってやがった」
日下部「呪ったのは……俺だと言うのに……」
日下部「でもな、今は生きてるだろ……生きて、動いて、笑ってる……ならいいじゃねぇか、狂ってるってわかってんだよ、でもな……」
日下部「あいつの人生をあんな風に終わらせたく無かったんだ……」
日下部「……綺麗事だな、単に俺が喪失に耐えられなかった」
日下部「あいつを失うことを、最後まで認められなかったんだ」
END分岐
日下部は日車をどこへ連れて行った?
①日下部の自宅
②シン・陰流の屋敷
安価>>134
- 130二次元好きの匿名さん26/05/26(火) 09:54:43
えっEND分岐!?ここで!?
うーん目を離したことを凄い後悔しているから自宅がいいのだろうか…
でも総監部から逃れるには屋敷の方がすぐには見つからないのか?
こっこれは悩む〜!!! - 131二次元好きの匿名さん26/05/26(火) 09:59:16
起こったことを後悔してるからどっちを選んでも結果は変わらないのか?というか本当にEND分岐か?まだ仕掛けがあっても不思議じゃないぞ
- 132二次元好きの匿名さん26/05/26(火) 10:07:34
屋敷と呼ばれる規模の家が完全に無人ってことあるか?使用人とかいてそこから話漏れない?
自宅じゃないかなぁ、個人所有のセーフハウスとかも自宅のひとつと含めていいのなら - 133二次元好きの匿名さん26/05/26(火) 11:10:24
屋敷で完全に1人にしてしまうシチュエーションって考えにくいからやっぱり自宅かな
でも安価があるの気になるんだよなぁ - 134二次元好きの匿名さん26/05/26(火) 12:57:05
悩ましいけど①日下部の自宅で
- 135二次元好きの匿名さん26/05/26(火) 13:36:31
というか安価でスルーしかけたけど
日下部のセリフ不穏すぎるんだけど…… - 136二次元好きの匿名さん26/05/26(火) 13:38:23
どこ?
- 137二次元好きの匿名さん26/05/26(火) 14:04:38
1日くらい大丈夫だと思って目を離してしまったあたり?
たった1日で致命的だというほどの何かが起きたのは何となく分かる
でも何がと問われると思い当たる節が多すぎる答えられん
日下部の言う通り日車は確かに生きているのにどうしても死の匂いがぬぐえないのは何故 - 138二次元好きの匿名さん26/05/26(火) 22:50:12
整理のためにパート1から読み返した
・日車が子供の姿になったのは廃病院
・それから2ヶ月は日下部の家にいた
・最近中庭付きのマンションに引越し
・そこで日車が呪霊に襲われるが日下部が居たので無事
・↑のことで日車の事が総監部にバレる
・日下部が処罰され京都に送還
・日車は高専で記憶を思い出し中
ってところか。
ここから導き出されることはスレ主は神ってことだけだ。後は無能な俺にはどうなるか分からん
スレ主の投稿に感謝 - 139二次元好きの匿名さん26/05/26(火) 22:53:51
確かに日下部の誘拐監禁は加害性ありではあるんだけど、上層部の方がもっとヤバいことしそうだからこうなったわけで…
でも上は日車に対して何かすると明言してはいないからね、ひたすらに日下部が可哀相な役回りだ
日下部お前も大分自己犠牲的だぞ - 140二次元好きの匿名さん26/05/27(水) 03:19:43
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- 141二次元好きの匿名さん26/05/27(水) 06:58:56
このレスは削除されています
- 142二次元好きの匿名さん26/05/27(水) 07:05:34
病室から連れ出した後、日車はずっと黙ったままだった。俺を問いただすことも、逃げようとすることもなく、ただ、酷く疲れ切ったみてぇに静かだった。それでも、身体の強張りはもう無かった。怯えられていないことに喜びが滲む。
人気のない街を駆けると夜風が頬を撫でていった。日車の負担にならないよう慎重に、それでも人目に触れないよう地面は避ける。抱え込んだ熱を逃がしたくなくて、腕に自然と力が入った。
日車の細かい睫毛がふるりと揺れ、重そうに瞼が伏せられていくのを見て、「寝てていい」と小さく声を掛けると、首へ回された腕からゆっくり力が抜けていった。脱力した身体の重みが腕へ沈み込み、胸が刺すように痛む。
このまま日車の存在を感じていたい。時間が止まればいい、そうしたら、もう日車は苦しまなくて済む。ただ、こうして腕の中に居てくれるだけでいい、それだけでいい……。
やっとのことで辿り着いた自宅の扉を開け、そのまま真っ直ぐ寝室へ向かう。ベッドへ横たえたところで、ようやく浅く息を吐いた。
ここへ連れてくる予定がなかったため、シーツを交換していなかったのが悔やまれるが、そうも言っていられない。
せめてと、クローゼットにしまい込んでいた夏用の薄い布団を引っ張り出し、そっとかけてやる。日車は目を覚まさなかった。
……連れて来ちまった。
今さら実感が押し寄せる。じき騒ぎになる。捜索も始まる。十中八九俺に疑いの目が向くだろう。しばらく高専には戻れねぇ。
だが、どうにでもなる。
面倒だと思っていたが、立場ってのはこういう時に役立つらしい。
出世はしとくもんだと思った。妹の時は、どれだけ足掻いてもそんな土俵にすら入れなかった。だから端から頭になかった。今は違う。大切な存在を守るため、上に行くことが出来るんだ。
日車の口元へ手をかざす。静かで温かな吐息が掌へ触れた。ずっと、ずっと、守ってやる。誰も、誰も、こいつを奪い去らないでくれ…… - 143二次元好きの匿名さん26/05/27(水) 11:10:17
昔の日車は衝動に任せて他者を害したり溢れ出る言葉をそのまま叩き付けたりしてたけど、
この日車からはもう何も出てこないんだね
手術を繰り返して反転をかけ続けて見た目は綺麗になったけど、元の日車に戻ったわけじゃないんだろうな
テセウスの船みたいだね日車 - 144二次元好きの匿名さん26/05/27(水) 19:23:55
日車に降りかかった惨劇とか日下部が京都に連れて行かれた原因とか、
大体みんな知ってるんだろうなって考えると
高専預かりの日車の扱いめちゃめちゃ難しかっただろうな
どれだけ隠しても生徒たちはみんな聡いし虎杖はお見舞いで狂気の一端を見てるし、
何よりあの日下部先生があんなことをしたって知ったら芋づる式に真実に辿り着きそう - 145二次元好きの匿名さん26/05/27(水) 23:39:47
様子のおかしい日車を遠目で見て寄ってきてくれたパンダも錯乱した日車の状況知ってるから様子伺いに来たし抱っこされるのに不安があったんだよな
日車が正気を保ったまま記憶を思い出そうと努めているのは応援したいけど、完全に記憶戻った時に高専メンバーにどんな接し方をするのかって考えたら胸が痛くなる - 146二次元好きの匿名さん26/05/28(木) 08:05:12
朝保守
- 147二次元好きの匿名さん26/05/28(木) 13:51:50
ここから日車守るために工作活動するって日下部もメンタルガタガタなのに大丈夫なのかな
- 148二次元好きの匿名さん26/05/28(木) 18:36:33
てかマジであの呪詛師はなんなん?あと車に残ってる時に現れたあいつ
- 149二次元好きの匿名さん26/05/29(金) 00:37:23
前スレに
俺が殺したはずだった、しかし、とどめを刺しきれなかったのか、何らかの縛りの影響か…奴は呪霊に転じ、未だ日車に執着している。
↑この記述があるから呪詛師と呪霊は十中八九同一存在で呪詛師の役割はもう終わってんじゃない?
- 150二次元好きの匿名さん26/05/29(金) 00:51:39
このレスは削除されています
- 151二次元好きの匿名さん26/05/29(金) 00:55:13
日下部も大分精神が参っちゃってるけど、守りたいもののために何でも使ってやると
濁った正義を滾らせるところ覚悟決まってていいね
早く監禁生活でひろみ呼びしてるところが見たいぜ - 152二次元好きの匿名さん26/05/29(金) 04:30:01
日車「日下部、日下部」
肩を揺すられる感覚に、ふっと意識が浮上する。頭を起こすと眼前に日車の顔があり黒い瞳とかちあった。
日下部「えっ、あぁ、朝か……」
どうやらベッドに突っ伏したまま寝落ちたようだ。身体を起こすと体の節々が鈍く軋んだ。
部屋はまだ薄暗い。窓へ目を向けると、カーテン越しに朝日がぼんやり滲んでいた。夜が明けたばかりらしい。
視線を戻すと、日車がぼんやりした顔付きで俺を見ていた。眠気に落ちそうな瞼を震わせながら持ち上げている。
昨晩、無理に病院から連れ出したばかりだ。身体も気力も、とっくに擦り切れているんだろう。もう少し眠らせてやりたかった。
まだ眠っていろと、肩へ手を添えてゆっくりベッドへ押し戻そうとした瞬間、手首へ柔らかな力が絡みついた。
日下部「どうした?」
問い掛けてから気づく。そういえば昨晩から日車は何も口にしていない。喉が乾いているだろうと、腰を浮かせかけた瞬間、掴まれていた手首に僅かに力が籠もった。
日車「……行くのか?」
掠れた声がひび割れた唇から発された。まるで置いて行かれることを恐れているみてぇな響きを持っていた。
日下部「水取ってくるだけだ。すぐ戻る」
日車「……いい、自分で行ける……」
日下部「いいよ、寝とけ、すぐ戻るから」
日車「駄目だ……だって……痛いだろう……こんなところで寝て身体が……俺が……いく……」
何言ってんだこいつ。
起き上がろうとした日車を慌てて押さえると、日車は抵抗する力も無いみてぇに簡単にシーツへ沈んだ。それでも俺の手首に縋る掌は離れず。弱々しくもがいていた。
意味がわからなかった。
まともに歩けるかも怪しいくせに、なんで俺の心配をしてんだ。 - 153二次元好きの匿名さん26/05/29(金) 04:31:31
日下部「余計なことを考えなくていい、自分のことだけ考えろ」
宥めるように額へ触れると、日車は苦しそうに眉を寄せた。
日車「……でも……君、ずっと此処に……」
日下部「平気だって」
実際多少は肩も痛ぇし身体は重い。だがそんなもん、今の日車に比べりゃどうでもいい。
掠れた呼吸を繰り返す姿を見ていると、まともに立てもしねぇくせに俺を気遣っていることが苦しくて、痛々しくて、息が詰まった。
どうしてこいつはこうなんだ。
自分の方がずっとボロボロなのに、真っ先に他人のことを考える。擦り減って、摩耗して、壊されて、それでも……
日下部「……水持ってきたら戻る。絶対戻るから、ちょっとだけ待ってろ」
そう言って指を包むように握り返すと、瞬間、日車の顔がぐしゃりと歪んだ。駄目だと、思った。この場を離れると、日車が深く傷ついてしまう。
日下部「……少し立ってみるか。支えてやる。ちゃんと立てたら一緒に行こう」
離れたら駄目だと、直感した。
日車は呆然としたように俺を見ていた。黒い瞳が揺れる。信じていいのか迷っているみてぇな目だった。
日車「……一緒に?」
日下部「あぁ。ほら、ゆっくりな」
日車は俺を見つめ、唇を引き結んで小さく頷いた。 - 154二次元好きの匿名さん26/05/29(金) 10:24:38
1人で置いてかれることの恐怖があるけど日車の性格からそれを口に出せないよね…でも日下部はちゃんと読み取ってくれているのさすがだね
これは側にいなきゃってってなるよ - 155二次元好きの匿名さん26/05/29(金) 11:47:05
不安型愛着障害だ!ここから抱っこ癖がついていくのかな
日下部がところ構わず抱えてたのかと思ったけど先に日車の方から手を伸ばしたんだ…
今もその癖抜けてないんだ… - 156二次元好きの匿名さん26/05/29(金) 16:55:11
日車お前…水取りに行く恐らく1〜2分だろうに心配でたまらないんだな…ここは日下部の家で、人がほぼ訪れない病室にいたから1人になることには耐性があるはずなのに
- 157二次元好きの匿名さん26/05/29(金) 17:14:14
優しさと不安と弱りが全部混ざった日車幼いな、本当に甥っこみたいだ
- 158二次元好きの匿名さん26/05/30(土) 00:28:57
日下部「立てそうか?」
日車は恐る恐る身を起こした。背中を支え、ゆっくり足を床へ下ろさせる。白い足が床へ触れ、日車が俺にしがみつきながら膝に力を入れた瞬間、日車の身体がぐらりと傾いた。
日下部「っ、おい」
慌てて腰を抱き寄せる。
日車は苦しそうに額を俺の肩口へ押し付けた。
日車「……すまない……」
日下部「謝んな。無理すんな。ゆっくりでいい」
そう声を掛けると、日車は小さく息を吐いた。足に力を入れようとしているのは分かる。だが、膝が折れてまともに体重を支えられていない。少し動いただけで息が乱れている。
日車「……ふぅ……ふっ、うぅ……」
日下部「日車?」
日車はゆっくりと顔を覆った。見開かれた目から涙は落ちない。けれど、無音の嗚咽が引きつけみてぇに喉を震わせていた。
……結局、傷つけてしまった。こいつに自分の身体がもう以前みてぇには動かないことを、真正面から突き付けてしまった。当たり前みてぇに出来ていたことが、出来ない。そのやるせなさに日車は打ちのめされている。
謝ろうとして、慰めようとして、口をつぐんだ。プライドを切り裂いてしまう気がした。
どうすることもできず、日車が落ち着くのを待った。倒れ込みそうな日車を支え、背中を擦り続けた。やがて日車の嗚咽は浅い呼吸へ変わり、全身から力が抜けていく。
限界だったんだろう。眠るように意識を落とした身体を抱え直し、砂糖細工のように慎重にベッドへ戻した。