『史上最大のヒモ 濡れた砂丘』(©東映)
『史上最大のヒモ 濡れた砂丘』(©東映)

土曜ワイド劇場では火野正平がヒモ男に

『史上最大のヒモ 濡れた砂丘』、愛欲に溺れるベテラン銀行員の行く末は……(ラピュタ阿佐ヶ谷にて7月5日~7月12日上映/©東映)

『史上最大のヒモ 濡れた砂丘』は2011年の銀座シネパトス「生誕70年 川谷拓三映画祭・3000回殺された男」においてニュープリントが作成され、色あざやかなフィルム上映が行われた。その後、2013年のラピュタ阿佐ヶ谷・東映ニューポルノ特集で上映される予定が脚本家・深尾道典の抗議により封印……この度ようやく解禁されて同館でのリベンジ上映が果たされた。

本作に主演したのち、東映の大部屋仲間と「ピラニア軍団」を結成した川谷拓三は、萩原健一主演のドラマ『前略おふくろ様』をきっかけにお茶の間のスターとなり、『3年B組貫八先生』では桜中学に赴任した。

いささか脱線して東映時代の代表作をひとつ挙げるなら1976年の『狂った野獣』である。銀行強盗に失敗した二人組がバスを乗っ取ってのパニック模様、ピラニア軍団総出のアクションコメディだが、犯人の片割れが拓ボン。走る密室の支配者だったはずがクセ強な乗客たちに翻弄されてしまう、その哀感、その愛嬌……みるみる野獣と化す人質・渡瀬恒彦との対比も一興だ。

折しも8月末にはピラニア軍団によるアルバム、その名も『ピラニア軍団』がCDとアナログで復刻される。『狂った野獣』にも登場した歌手の三上寛と中島貞夫監督がプロデュースを務め、若き日の坂本龍一も編曲で参加したレア盤であり、主役を「食った」ピラニアたちの歌声がよみがえる。

ピラニア軍団のアルバム『ピラニア軍団』、8月28日にキングレコードより復刻リリース

さて、本筋に話を戻そう。痴情からの横領ゆえポルノ向きの事件だが、その後しばらくして真打ちともいえる2時間ドラマ『滋賀銀行九億円横領事件 女の決算』が登場。テレビ朝日・土曜ワイド劇場で1981年に放映された本作は、貢ぐ女が大楠道代、貢がれる男が火野正平というキャスティングからして万全である。

人生に疲れた女の「貌」、ギャンブルに憑かれた男の愛くるしい「貌」、その説得力は余人をもって代えがたく、芸能界のモテ男たる火野がヒモ役を引き受けたことがまず至高。「徳村麻子」に扮した大楠も本人と見まごうばかりの再現性であり、さらに究極は両者の欲望が相まみえて歯止めなく堕ちゆく姿をたっぷり丹念に描いていくことだ。

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和久峻三のドキュメントノベルを原作に『深川通り魔殺人事件』など犯罪ドラマの名匠・千野皓司が監督した本作は、2018年に「実録・昭和の事件シリーズ」の一編として待望のDVD化が実現。警視庁出身の長谷川公之によるシナリオは『負の肖像 同時代ドキュメント・ドラマ集』に収録されている。名を変え、髪型を変え、逃亡先のボロアパートでふっと「風」を受ける大楠道代、その「貌」のすがすがしき貫禄を見てほしい。

DVD「実録・昭和の事件シリーズ」、『滋賀銀行九億円横領事件 女の決算』ほか全6作を収録(発売元:ベストフィールド)

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