スギの幹の中心にセシウム蓄積、林業再生には監視が課題 福島大調査
東京電力福島第一原発事故で飛散した放射性物質のセシウムがスギ林にどのように取り込まれているかについて、福島大学の研究グループがとりまとめて報告した。年を経るごとに幹の中心(心材)ではセシウムの濃度が高まっていたが、家屋に使っても居住者の被曝(ひばく)量は低いという。
福島大環境放射能研究所のムヨワ・マイケル・オロスン研究員ら3人が、既存の研究を分析した総説論文を4月に専門誌に発表した。川俣町山木屋、浪江町津島、富岡町でのデータが主に分析されている。
研究グループによると、木の幹の外側にある辺材ではセシウム137の濃度が横ばいか、下がっている。一方、心材では濃度が高まり続けている。心材の濃度は事故直後に辺材の半分だったが、2016年までに逆転し、20年には一部の林で約3倍に達した。グループの難波謙二所長は「濃度はどこまで上昇するか、観測を続けねばならない」と話す。
これはスギだけの特徴で、ヒノキやカラマツでは心材の濃度が高まる様子は見られなかった。スギの心材では元々、セシウムと化学特性が似ているカリウムがたまることが知られていた。カリウムが心材にたまっていくルートでセシウムも移動したのではないかと研究グループは考えている。
研究結果は林業の再生に向けた課題を示した。ウクライナのチョルノービリ(チェルノブイリ)原発事故の森林への影響を調べたこともある同研究所のヴァシル・ヨシェンコ教授によると、チョルノービリ原発事故で放射性物質が飛散した森林のマツなどでは辺材に放射性物質が蓄積されたため、幹の外側を計測すればリスクのある木を避けられた。
だが、福島のスギでは心材まで確認しないと汚染を過小評価する可能性があるという。また、心材にセシウムが多いと、表面の除去や洗浄といった方法では除染できないという。オロスン研究員は「部位ごとの濃度の監視が安全上も重要だろう」と指摘している。
住宅の木材として心材を使った場合、居住者の追加被曝線量は年間0.026ミリシーベルトと推定した。公衆の目安である年間1ミリシーベルトを大きく下回った。また、1日8時間、200日の製材作業に従事すると、0.2ミリシーベルトの被曝が予想され、森林での作業になると、4.8ミリシーベルトまで上昇するという。
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