自国国旗損壊罪、思い出した北欧の旗「国旗は大事でも、規制は違う」

宮坂奈津
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自分が持っている日の丸でも、公然と傷つければ犯罪とする――。そんな「自国国旗損壊罪」の導入議論が進んでいます。「国旗を大切に思う国民の感情を守る」というのが理由です。取材する記者には、刑罰がなくても国旗が広く浸透している国が頭に浮かびました。

国旗が暮らしに根づく国

自民党は「外国国章損壊罪があるのに日本国国旗損壊の罪がない矛盾を是正する」ということで、いまの通常国会で立法すると日本維新の会とともに宣言しています。

これをどう考えればいいのか、社内で議論していたとき、記者(26)は大学時代に留学した「国旗が暮らしに根づいている国」を思い出しました。

北欧デンマークです。

教会や市役所には平日でも国旗「ダンネブロ」が掲げられ、スーパーには国旗を描いたパーティーグッズのコーナーがありました。レタスやキュウリは、ダンネブロ柄の包みにくるまれていました。

長くデンマークで暮らした旧知の建築家・小林一英さん(68)によれば、誕生日ケーキには小さな国旗が立てられ、クリスマスツリーは国旗をひもでつなげたガーランドで彩られるといいます。

国旗は大事でも、規制は違う

なぜそれほどまでに浸透しているのか――。背景を探るため、神戸で有名なホットドッグ店に行きました。

経営するビャーネ・リンボー・ハンセンさん(76)はデンマークから来日して45年。店頭はもちろん、メニューや壁にまでダンネブロがありました。「見るとパワーをもらえる」のだといいます。

「政治的なスタンスは人それぞれだけど、ダンネブロが嫌いというデンマーク人は聞いたことがないね」とハンセンさん。

しかしこの国に、外交関係の悪化を防ぐための外国国章損壊の罪はあっても、自国国旗損壊罪はありません。

北欧の刑法に詳しい松沢伸・早稲田大教授は「政治的な表現の自由を最大限尊重するべきだという国民感情がある」といいます。

少ない人口で長く厳しい冬を過ごさなければならない北欧諸国はそもそも包摂と「個人尊重」の傾向が強く、とりわけデンマークでは「自由で平等な民主主義社会」を説いた思想家グルントビーが大きな影響を与えているといいます。

近代デンマークの父と称される人物で、立場の違いを尊重し議論することを重んじるその哲学は、教育を通じて国民に浸透してきました。

松沢教授は「だから国旗は大事でも、規制は違うという意識が根強い」と指摘します。

「国旗が大切にされるのに必要なものは、何だと思いますか?」とハンセンさんに尋ねると、彼はこう答えました。

「大切にしたいと思う人、みんなの気持ちだよ」

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この記事を書いた人
宮坂奈津
ネットワーク報道本部
専門・関心分野
民主主義、北欧