高市早苗首相は、筒井義信経団連会長と官邸で面会した際、経団連が提言する科学研究費助成事業(科研費)に関連し「研究費が倍増する形を目指す」との方針を示したという。
科研費は、人文・社会科学から自然科学まで全分野を対象とする国内最大の競争的研究資金で、総予算は2500億円程度だ。
目的は研究者の自由な発想に基づく学術研究を格段に発展させることで、日本国内の全大学・研究機関を対象とする。文部科学省が基本方針を定め、独立行政法人日本学術振興会(JSPS)が審査・交付を担当している。年間約8万~9万件の応募があり、うち約2万件が採択されている。科研費の助成額は研究種目に応じて細かく分かれているが、数十万円から数千万円程度だ。
採択率は2割程度なので、数年応募していると、採択される可能性がある。ただ、筆者は大学教員を十数年務めているものの、残念ながら採択されたことがない。応募テーマは毎年「文科省による天下りに関する研究」なので、採択されるはずないと仲間からは言われている。ここまでくると、このまま同じテーマで応募しようと思っている。
筆者の場合、他の収入があるので研究費に困ることはないが、一般の研究者にとって科研費をもらえるかどうかは死活問題だ。倍増といっても2500億円程度なので予算全体から見れば小さな金額だ。それで、日本の研究者のモチベーションが高まるのであれば安いものだ。
これは未来への人的投資として考え、国債を財源とするのがいい。この考え方については、教育国債ということで財務省関係者では知られた考え方だ。
便益が大きく、その効果が長期に及び、十分な資金確保が必要なので、税財源に依存するのは適当ではないからで、実はその考え方は、財務官僚が書いた財政法のコンメンタール「予算と財政法」にも書かれている。
ただ、投資なので効果が高く確実なものに絞るべきだとして、投資効率の高いテーマに絞るのは間違いだ。
研究費は、何が当たるかは事前に判断できないが、広くばらまくと一定数は社会貢献のある研究に当たるので、全体としてみた投資効率は必ずしも悪くない。しかも、研究費は企業で回収できないが社会では意味のある外部効果が大きいので、民間よりも政府が率先すべき投資だ。
(たかはし・よういち=嘉悦大教授)