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少子化や婚姻減は「静かに苦しんでいる」中間層以下の声なき悲鳴/平均賃金アップなど言ってる場合ではない

独身研究家/コラムニスト/マーケティングディレクター
提供:イメージマート

ここ10年で減った中間層家族

少子化とは、婚姻減によるものであり、その婚姻減は、中間層が結婚できなくなったからである。より正確に言うならば、「結婚したいと思っている若者のうちの経済中間層が結婚できなくなったから」である。

しかも、それはここ直近10年で急激に進んだ。

その証拠に、2003年と2013年では、0-1歳の子どもを産んだ年収別世帯分布はまったく変わっていないが、2013年から2023年の10年間において、世帯年収600万未満だけが激減しているからだ。もっとも減少しているのは300-500万円台のいわば中間層世帯であり、ここが結婚および出産ができなくなったがゆえの少子化なのである。

以下に、過去記事にも掲載したグラフを再掲するが、明らかにかつての家族のボリューム層だった中間層の子ども有世帯が、ここ10年で少なくなっているのである。

平均賃金アップなど無意味

中間層の空洞化。それこそが今の日本の経済的問題であるのだが、今までの岸田~石破政権も、判で押したように「賃上げ」としか言わなかった。

現在、連日報道されている自民党総裁選の政策議論でも「物価上昇を上回る賃上げ」とか「平均賃金100万円アップ」とか言っているわけだが、そもそももはや平均値なんてものに意味はない。たとえば一部の上位層の賃金があがっただけでも全体があがったように見えてしまう。

賃上げ率平均〇%アップなどと報道されても、大企業や官公庁であればその賃上げを実感しているかもしれないが、それ以外の7割にあたる就業者は、そんな賃上げされている実感はないだろう。

というのも、確かに額面の給料はあがったかもしれないが、それと同等に税・社保料負担も増えていて、何より直近の物価高によって「なんか生活が楽にならないんだけど…」と思っているだろう。

状況を客観的に把握するためには、名目賃金ではなく、物価高を勘案した実質賃金で見るべきだが、より生活者の実感に寄り添うのであれば、税・社保料を除いた名目可処分所得に物価高を勘案した実質可処分所得で見るべきだろう。

しかも、それほ全体一括りでみるのではなく、経済階級ごとにどうなっているかを把握するべきである。

所得階級別の実質可処分所得推移

家計調査総世帯(勤労者のみ)の統計から、所得五分位階級別の2007年から2024年までの実質可処分所得の推移を2007年を基準=1とした場合でグラフ化したものが以下である。

見やすくするために、上位20%層(青)、中間層(黄)、下位20%層(赤)の3つに絞ったものとした。

ここ1-2年、政府は賃上げの成果をドヤ顔で訴求するが、実質可処分所得ではむしろ物価高に追いついておらず、2024年でいえば上位層だけが2007年よりわずかに上回っているだけで、それ以外は2007年の実質可処分所得にすら届いていない。

数字上賃上げされていても生活が全然楽にならないと感じるのはこういうことである。

そして、何より所得上位20%とそれ以外の格差が如実に開いてきていることがわかる。

冒頭に掲出したグラフにある通り、2014年以降で中間層が家族を持てなくなっているが、実質可処分所得は2014年あたりまでは上位も中間も下位もどの所得階級もマイナスである。これこそがデフレの最悪な姿そのものであり、いわば「皆が平等に貧しくなった」時代でもある。

しかし、2014年以降に、下位層だけがさらに低迷する時代となった。これはこれで問題ではあるが、それでも上位層と中間層は踏みとどまって上昇基調に転じている。が、それも2020年以降に上位層と中間層との差が広がりはじめ、2024年には中間層は階層と同じレベルに落ちた。

つまり、ここ10年で起きたこととは、先に下位層が、遅れて中間層が没落し、上位層だけの1人勝ち状態に陥ったということである。これが、所得上位層だけが結婚や出産ができて、中間層以下ができなくなった状況を示している。

課題は中間層の底上げ

とはいえ、だからといって上位20%層の足を引っ張る意味もない。

かつてイギリスのサッチャー首相がいった通り「金持ちを貧乏にしても、貧乏な人が豊かになるわけではない」からだ。

問題は、この中間層の没落であり、ここの底上げがなければこのまま上位とそれ以外の格差は広がり続けるだけだろう。具体的な、どういう状況がすでに起きているかといえば、所得の中央値では結婚できなくなっている状況である。

参照→【中間層の婚姻激減の真相】中央値の年収では結婚できなくなった日本「若者から安心を奪い続けたツケ」

中央値とは全体の半分である。半分が結婚できないということは、すなわち未婚率50%の時代の到来となる。未婚が増えれば、当然出生数も減る。

「婚姻減は経済的理由だけではない」という声もあるが、とはいっても、結婚したいのにできないという不本意未婚の半分は「経済的理由でできない」と訴えていることも事実だ。

大企業や官公庁に勤める上位層は放っておいても勝手に結婚するし、子どももうけるだろう。実際、大企業や官公庁勤めの男性の未婚率は増えていないし、富裕層夫婦の元には3人や4人の子がいる場合が多い。

それはそれでいいのだが、この没落してしまった中間層の底上げがない限り、少子化も解決しないばかりか経済成長もないだろう。

写真:イメージマート

経済階級制による社会の空洞化

大事なのは名目の賃上げではない。

せめて生活が苦しいと感じなくなるような実質可処分所得の実現に目を向けてほしいものである。賃上げ以外にも、減税などで実質可処分所得をあげる方策はあるし、何よりそれこそが政府が実践すべき政策だろう。

政治家や官僚、学者や有識者、メディア関係者もテレビに出ているMCもコメンテーターも揃って経済上位層で、自分の周りに中間層以下との付き合いはないかもしれない。しかし、社会の構成上中間層以下が大多数で、ずっと「静かに苦しんでいる」という視点が必要ではないか。

上位層の上位層による上位層だけのお仲間政治では、より経済階級制が際立ち、社会は益々空洞化するばかりだろう。、

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独身研究家/コラムニスト/マーケティングディレクター

広告会社において、数多くの企業のマーケティング戦略立案やクリエイティブ実務を担当した後、「ソロ経済・文化研究所」を立ち上げ独立。ソロ社会論および非婚化する独身生活者研究の第一人者としてメディアに多数出演。著書に『「居場所がない」人たち』『知らないとヤバい ソロ社会マーケティングの本質』『結婚滅亡』『ソロエコノミーの襲来』『超ソロ社会』『結婚しない男たち』『「一人で生きる」が当たり前になる社会』などがある。

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