正社員と非正規社員の間にある不合理な格差を問う声が大きくなっている。同一労働同一賃金の徹底が、日本型雇用の存続にゆさぶりをかけ始めた。両者の垣根を越えた働き方の実現は、日本全体の報酬底上げにもなる。
大企業を中心に、報酬の透明性や納得感を高めようと制度改革の動きが相次いでいる。その背景には、雇用形態ごとの待遇格差是正や、同一労働同一賃金の徹底を求める機運が高まっていることも影響している。
バブル崩壊後の日本企業は、一部の正社員の雇用を守るために、労働コストが安く、かつ調整の効く非正規労働者を活用してきた。終身雇用と年功序列の賃金制度を組み合わせた日本型雇用が生きながらえてきたのは、非正規労働者の存在があったからだとも言える。
しかし、こうした労働市場のゆがんだ構造は、日本企業の生産性低下を引き起こし、低賃金の仕事にしか就けない人を大量生産してしまった。
待遇格差を是正せずして、日本全体の賃上げは実現しない。だが、正社員に対し、働きに応じた報酬制度を設定するほど、非正規労働者との間にある不合理な格差があぶり出されていく。
「同一労働同一賃金の思想を取り入れ、今後も人事制度全体の在り方を見直していく」。日本郵政人事部の安瀬龍一部付部長は、真剣な表情でこう語る。
同社は2023年10月、正社員と期間雇用社員の間にある「不合理な格差」の解消に向けた取り組みをようやく一段落させた。
発端は13年4月の改正労働契約法の全面施行に遡る。その20条に不合理に労働条件を相違させることを禁止するルールが明記された。日本郵政グループは現在、期間雇用社員と無期雇用社員(アソシエイト社員)、計16万人もの非正社員を抱える。彼らと正社員との間には、住居手当や年末年始の勤務手当などで待遇格差があった。
改正法の施行を受け日本郵政は格差是正に取り組んできたが、14年には日本郵便の期間雇用社員が「正社員と期間雇用社員の労働条件に差があるのは不合理」だと訴え、東京、大阪、佐賀の3地裁に提訴した。
正社員の休暇日数にもメス
訴訟に結論が出たのは20年10月。最高裁は一部の労働条件の差異が実際に不合理であると判断した。敗訴した労働条件は6つある(上図参照)。うち住居手当、祝日給の支給などについては判決に先駆けて格差解消に動いた。
対応に時間がかかったのは夏期・冬期休暇の見直しだった。ここで日本郵政は、2年の歳月をかけ、正社員の働き方にもメスを入れた。
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