日本人女性初のGI制覇 「パパっ子」今村聖奈がオークスに感じた縁

内田快 松本龍三郎

 中央競馬の3歳牝馬(ひんば)クラシックレース第2戦、第87回オークス(1着賞金1億5千万円)が24日、東京競馬場の芝2400メートルコースで行われ、今村聖奈(せいな)騎手(22)が5番人気のジュウリョクピエロに騎乗して、優勝した。日本人女性騎手として初めてGIに勝利した。

 最後の直線では後方から馬群を割るようにして、先頭でゴールした。約4万5千人の地鳴りのような歓声に、右拳を突き上げて応えた。「本当に夢を見ているみたいです。私はすごく幸せ者だなと思います」と話した。

 滋賀県出身の今村騎手は2022年3月にデビューし、新人騎手の勝利数として歴代5位となる年間51勝を挙げた。父は01年に中山大障害を制した元騎手の康成さん(47)。皐月賞、日本ダービー、菊花賞、桜花賞、オークスの5大クラシックレースに女性が騎乗するのも、今レースの今村騎手が初めてだった。

我慢したゴーサイン 引き出した末脚

 最終コーナーを回る。ジュウリョクピエロは自ら馬群の外へと進路をとり、駆け出そうとした。これを今村はなだめた。そして、勝負のときをじっと待った。

 最後の切れ味を生かす。そのために「我慢させられるところまで我慢する」。22歳は腹をくくっていた。約500メートルの直線も半ばになって追い出した。

 ほぼ最後方からだった。前には馬が居並んでいた。「どこに行こうか」と迷ったが、今度は「馬が導いてくれた。つかまっていただけだった」。人馬一体となって、強豪馬たちの隙間を駆け抜ける。2着馬にクビ差をつけたところがゴールだった。

 「日本競馬史に残るレース」と場内実況が叫ぶように伝えれば、観衆は口々に「おめでとう」。歓呼に迎えられた今村は涙をぬぐった。

 父・康成さん(47)は元騎手だ。「パパっ子」だったから、小学6年生で騎手になると決めた。競馬学校に入るための試験の時から、「歴史に名を刻めるようなジョッキーになりたい」と言っていたという。

 父は騎手を引退し、調教助手となった。その直後に手がけた馬が名牝(めいひん)メイショウマンボ。2013年のオークスを勝っている。「すごく縁のあるレース」で、日本人女性騎手初のGⅠジョッキーとなった。目指す騎手像までには「まだまだ時間がかかる」。けれど、まず一つ、日本競馬に自らの名を残した。

自身の手綱でつかんだオークスの挑戦権

 GⅠレース出走馬の鞍上(あんじょう)を巡る争いは、限られたトップジョッキーの中で繰り広げられる。GⅠ優勝経験があろうと、実績を残し続けなければ、容赦なく別の騎手へと乗り代わる厳しい世界だ。

 今村は今年、オークスまでの勝利数が5。全体の60位台でGⅠ常連の騎手とは差があった。クラシック参戦がかなったのは所属厩舎(きゅうしゃ)の管理馬ジュウリョクピエロを自らの手綱で勝たせてきたから。

 4月の前走・忘れな草賞を豪快な追い込みで勝利し、一躍オークスの優勝候補となった。別の騎手を起用しても不思議ではない中、馬主と調教師は今村の可能性を信じた。馬の力を引き出す安定した騎乗フォームと、大一番でも物おじしない強心臓に期待をかけた。

 JRAの所属騎手は約140人で、女性はそのうち6人。短期免許で来日した女性騎手では、2025年フェブラリーステークスで英国出身のレイチェル・キングがGⅠ勝利を挙げている。一方、日本人女性では今村を含む3人が7レース延べ8頭で参戦し、5着が最高だった。3度目となったGⅠ挑戦で、壁を破った。

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この記事を書いた人
内田快
スポーツ部
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スポーツ
松本龍三郎
スポーツ部
専門・関心分野
競馬、バスケットボール
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    平尾剛
    スポーツ教育学者・元ラグビー日本代表
    視点

    ゴール前の叩き合いでは、ジュウリョクピエロだけが違って見えた。超のつくスローペースで、前を走る馬がしぶとく粘る展開だったことを考えれば、驚異的な瞬発力だった。最後に首差だけ差した相手が、今年もリーディングを直走るC.ルメール騎乗のドリームコアだったことを思えば、見事な騎乗だと言っていいだろう。 レース前のパドックではかなりイレ込んでいる様子だった。それを見た多くのファンはおそらく評価を下げたに違いない。万全な状態でレースに臨んだわけではないのにこの勝ちっぷりなのだから、騎手の手腕が存分に発揮されたといえよう。最後の直線で、馬場の真ん中あたりを選んだコース取りも見事で、これとは対照的に内側に進路をとらざるを得なかったエンネとの比較においても、それは際立っていた。 今年ここまで5勝の若手、しかもいまだかつてG1レースを勝ったことがない女性騎手。かくいう私も、まさか勝つとは思わなかった。まったく見る目がなかったと反省している。 日本人女性初のG1レース勝利に興奮が冷めやらない。 今村聖奈騎手、おめでとうございます!

    2026年5月25日 08:32

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