気候・環境

2026.05.24 16:00

AI需要で急増するデータセンター、気温を「4度上昇」させる可能性

stock.adobe.com

stock.adobe.com

人工知能(AI)、ソーシャルメディア、デジタルサービスへの需要が急増するなか、データセンターは米国各地で増え続けている。データセンターがエネルギーと水の供給に与える影響は広く知られているが、一連の新たな研究により、もう1つの潜在的な影響が明らかになった。

データセンターが周辺の気温に影響を与えるほどの熱を発生させ、「データセンター・ヒートアイランド(DCHI)」を生み出している可能性があるというのだ。

ヒートアイランドとは何か

この記事を読んでいる多くの人は、都市ヒートアイランド現象についてすでに知っているだろう。私はキャリアを通じて都市が気象プロセスに与える影響を研究してきたため、この発見は科学者として非常に興味深いものだった。都市には一般的に、暗い色の舗装や屋根、少ない植生、そして自動車のエンジンや空調(HVAC)システムなど廃熱を発生させる人間活動がある。そのため、周辺の郊外や農村部よりも気温が高くなり、都市ヒートアイランドが形成される。

データセンターが気温を上昇させる仕組み

新たな研究は、この廃熱の要素に焦点を当てている。歩道に立っているときにバスが通り過ぎ、熱気を感じた経験があるなら、それも廃熱だ。デビッド・セイラーは世界有数の都市気候の専門家の1人である。アリゾナ州立大学地理科学・都市計画学部の学部長も務めている。同氏は同僚らとともに、「Journal of Engineering for Sustainable Buildings and Cities」誌に「新たな都市の熱リスクとしてのデータセンター廃熱:近隣地域規模の気温への影響に関する初の現地測定」と題する研究を発表した。

セイラーは私の同僚であり共同研究者でもあるため、詳細を聞くために連絡を取った。私がこの研究に特に興味を持ったのは、今年初めに同様の主張をする研究が査読プロセスの途上で公開されたが、研究コミュニティからは懐疑的な見方もあったためだ。

「データセンターは膨大なエネルギーを消費する。したがって膨大な廃熱を放出する。しかし、近隣地域への直接的な熱影響は、これまでほとんど測定されてこなかった。今、それが変わろうとしている」。セイラーはLinkedInの投稿にこう記した。「169MWの単一のデータセンター施設は、約20万世帯が排出するのと同等の廃熱を、数百ブロック(区画)に満たない限られた住宅地に相当する面積に集中して放出している」と同氏は続けた。彼らの研究では、フェニックス地域の4つのデータセンターの風下で顕著な気温上昇が確認された。セイラーのチームは、施設から最大500m離れた地点でも、風下の気温上昇が摂氏約0.8〜2.2度(華氏1.5〜4度)の範囲に及ぶことを見いだした。

次ページ > これはデータセンターと熱影響に関する一連の研究の始まりに過ぎない

タグ:

ForbesBrandVoice

人気記事

気候・環境

2026.04.11 16:00

2026年、歴史的な「スーパーエルニーニョ」が発生する可能性 専門家が警鐘

stock.adobe.com

stock.adobe.com

予報官らによると、ラニーニャ現象は終息に向かいつつある。今週初めに米海洋大気局(NOAA)が発表したブリーフィングによれば、東中部太平洋の水温は依然として平年をわずかに下回っている。しかし、このNOAAのブリーフィングで注目すべきは、秋までにエルニーニョへ移行すると予想されており、しかもそれが特に強力なものになる可能性があるという点だ。実際、「スーパーエルニーニョ」の可能性を指摘する声も上がっている。その意味するところを解説しよう。

「2026年5月中にラニーニャからENSO中立(エルニーニョ現象でもラニーニャ現象でもない状態)への移行が予想され、5月から7月にかけてはENSO中立が優勢となる見込みである(確率55%)」とNOAAの気候予測センターは発表した。さらに「2026年6月から8月にかけてエルニーニョが発生する可能性が高く(確率62%)、少なくとも2026年末まで持続する見通しである」と続けている。

両現象は、エルニーニョ・南方振動(ENSO)サイクルと呼ばれるより大きな循環の一部だ。エルニーニョは、貿易風が弱まり、暖かい水が海の東側へ戻ることで、東太平洋の海面水温が高くなるのが特徴だ。これにより、深層の冷たい水が湧き上がる「湧昇」も抑えられてしまう。

ラニーニャの期間中は貿易風が強まるため、暖かい海水は西太平洋へ押しやられる。湧昇により、より深い場所から冷たい海水が上昇する。NOAAの国立海洋局によると、「エルニーニョとラニーニャはいずれも、世界の気象、山火事、生態系、経済に影響を与える。通常は9〜12カ月続くが、数年間持続することもある」という。エルニーニョとラニーニャの発生周期はおよそ2〜7年だが、変動がある。両位相とも大気中のジェット気流パターンに影響を与えるため、世界の気象が左右される。

次ページ > 過去1世紀以上で最強のエルニーニョになる可能性

タグ:

advertisement

ForbesBrandVoice

| あなたにおすすめの記事

人気記事

北米

2026.05.15 09:30

「AIデータセンターより原子力発電所の近くに住む方がまし」米世論調査

米バージニア州ストーンリッジの住宅地に建てられた米アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)のデータセンター。2024年7月17日撮影(Nathan Howard/Getty Images)

米バージニア州ストーンリッジの住宅地に建てられた米アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)のデータセンター。2024年7月17日撮影(Nathan Howard/Getty Images)

米調査会社ギャラップが13日に公表した最新の世論調査結果によると、人工知能(AI)データセンターが地元に建設されることに反対する米国人は71%に上った。

一方、地元に原子力発電所が建設されることに反対すると答えた回答者は53%で、データセンターの建設に反対する割合が大きく上回った。なお、米国では人口の3分の1以上が、原子力発電所から80キロ圏内に居住または勤務している。

回答者の70%は、膨大なエネルギーと水を消費するデータセンターが地域の環境に与える影響を懸念していると答えた。回答者の4分の1近くは、生活の質や光熱費をはじめとする物価への影響に対する不安の声を上げた。その他の懸念事項としては、騒音、光害、大気汚染、水質汚濁のほか、倫理的問題、雇用の安定性、AI規制の不備など、AI全般に関する懸念が挙げられた。特に、女性や民主党支持層は共和党支持層よりデータセンターの建設に強く反対する傾向が見られた。

他方で、自宅近隣にデータセンターが建設されることに「強く賛成」と答えた割合はわずか7%にとどまり、「ある程度賛成」と答えたのは20%だった。これらの回答者は賛成の理由として、雇用の創出や税収の増加など、主に経済的な利益を挙げた。

データセンターは、AIモデルの大規模な学習を可能にするために特別に設計された専用施設だ。AIが登場する以前は、データセンターの規模は1万平方メートル程度で、主にインターネット事業の運営やクラウドコンピューティングに利用されていた。ところが、膨大なエネルギーを消費するAIの台頭により、近年は数十ヘクタールに及ぶ巨大施設が建設されるようになった。

AI学習に必要な数十万個の画像処理装置(GPU)を収容するデータセンターでは、機器の稼働や冷却、保管にかかる電力需要が数十万世帯分に相当することもある。大規模データセンターが1日に消費する水の量は約1900万リットルに及び、人口1万~5万人の町が1日に使用する量に匹敵する。

データセンターの建設は特にテキサス州、バージニア州、ジョージア州で急速に進んでおり、OpenAIやオラクル、ソフトバンク、アマゾン、マイクロソフトといった企業が大規模な施設の建設を計画している。

米西部ネバダ州の電力会社NVエナジーは、地元シエラネバダ山脈にある人気観光地、タホ湖周辺の住民約5万人に対し、来年から電力供給を停止すると通知した。米誌フォーチュンによると、同社は電力を同州北部のデータセンターに向ける予定だという。同地域は全米で最も成長著しいデータセンター集積地とも言われ、グーグル、マイクロソフト、アップルが施設を建設済み、あるいは建設を計画している。住民は来年5月までに新たな電力会社を探す必要がある。

forbes.com 原文

翻訳・編集=安藤清香

タグ:

advertisement

ForbesBrandVoice

| あなたにおすすめの記事

人気記事

テクノロジー

2026.05.19 12:00

AIデータセンター建設ブーム、電力・需要・立地の3重リスクに直面

stock.adobe.com

stock.adobe.com

数字は驚くべきものだ。米国の5大クラウド事業者は、2026年だけでデータセンター建設に6500億〜7000億ドル(約102.7~110.6兆円。1ドル=158円換算)を投じることを約束している。これは2025年の水準のほぼ2倍に当たる。テレビ番組『シャーク・タンク』の投資家ケビン・オリアリーは、ユタ州にマンハッタンの2倍を超える面積のデータセンター複合施設を建設する計画を立てている。その消費電力は、現在のユタ州とネバダ州を合わせた電力消費量に匹敵するという。

それでも、AI業界の内部からさえ、業界は完全には実現しないかもしれない未来を前提に建設を進めているのではないかという疑問が出始めている。分散型AIインフラ構想に関する最近のインタビューで、テザー(Tether)のCEOを務めるパオロ・アルドイノは、「私たちが現在前提としている計算のあり方が今後も続くかどうかは、まったく明らかではありません。その場合、これほど多くのデータセンターは必要ないかもしれません」と述べた(編注:テザーは、ドル連動型ステーブルコイン「USDT」の発行体。同社はノートPCやスマートフォン上での動作をうたう分散型AIインフラ「QVAC」および「QVAC Fabric LLM」を手がけている)。

業界は、成長が続くだけでなく、今後何年にもわたり指数関数的な増加が続くことを前提にした規模で資本を投じている。規模の大きさだけが戦略の正しさを証明するのであれば、これは米国史上で最も合理的な建設計画ということになる。だが、実際にはそうではない。

2033年に175ギガワット不足、延期されるAIデータセンター建設

大々的に発表された投資計画にもかかわらず、ブルームバーグなどの報道によると、2026年に向けて発表された米国のデータセンターの多くは、すでに延期または中止されている。理由は需要が揺らいでいるからではない。データセンターを実際に稼働させるために必要な物理的条件が、計画地の多くで単に整っていないためだ。

一方で、大量の電力を使うデータセンターを米国の送電網に接続するまでの待ち時間は、数カ月ではなく数年単位になっている。さらに悪いことに、米国の送電網は、旧産業時代に合わせて設計された老朽化した3つの相互接続網の寄せ集めであり、このような需要に対応できる状態にはない。フランスのエネルギー技術企業シュナイダーエレクトリックによると、米国のピーク時の電力供給は2028年までに不足に陥る見通しで、その不足幅は2033年には推定175ギガワットに達するという。

電力制約を回避するため、イーロン・マスクは宇宙空間に軌道上AIデータセンターを開発する計画を発表している。ただし、それが実際に建設されるかどうかは、需要が今後どう伸びるかに左右される。当面、マスクは地上で大規模なAIインフラを建設しており、ミシシッピ州とコロラド州には巨大な新データセンターを整備している。

次ページ > 建設の前提となるハイパースケール需要、過大な見積もりの可能性

翻訳=酒匂寛

タグ:

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事