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Blue sinks in Red(3)/Novel by なち

Blue sinks in Red(3)

4,779 character(s)9 mins

◇◇特殊部隊所属の兄貴と、お家騒動に巻き込まれたアーチャー、以下省略。すいませんバサ雁大好きすぎて…単体では書かないと思うのですがつい手が滑ってしまいました…。◇◇憧れのタグいじりありがとうございます(超笑顔)これはバサ雁エロを期待されているのか、それとも槍弓エロなのか(何故エロ限定…)それとも兄貴をもっと格好良くしろとの尻叩きか、ぜひお知らせ下さい。全力でお応えします。◇◇どっちもタグの方 つnovel/2190758◇◇

2014年10月15日ちょこっと訂正

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 闇が跳躍する。
 ふいに背後から襲って来た男を、腕の一振りで退けると、ランスロットは小さく口角を上げた。
「……良い度胸だな、己の愚行をそのちっぽけな命の果てるまで悔いるがいい」
 がっ、と口腔の中に指を突っ込み、毒を仕込んであるだろう奥歯を引っこ抜く。カラン、と小さな音が、暗殺者の耳に非情に響く。どのような地獄が己を待っているのか、絶望と共に。
 わらわら、と何人かの男が無様に路地裏に倒れた男に群がり、その身を運ぶ。
「主(あるじ)よ、そのように無防備に一人歩きされては困ります」
「……いや、君がずっと付いて来てくれるの、わかってたし」
 くす、と微笑まれて、ランスロットのその青白い頬が微かに色づく。常に鉄のような無表情は、この主の前だけで僅かに崩れる。とても部下たちには見せられないな、と雁夜は思う。もちろん、見せたくない、という独占欲が主だが。
 元ストーカー、と甥が言っていたのを苦笑と共に思い出す。確かに付け狙われていた。雁夜が未だ現役で死神と呼ばれていた頃、年若い彼は自分の力を試すためか、雁夜を殺そうと何度も挑んで来たのだ。その度に雁夜は彼を撃退し――何故自分が殺そうと思えば殺せたのに、命まではとらなかったのかは解らない。けれども今は雁夜が唯一心を許せる相手になった。
 運命というのは気まぐれなものだ、といつも思う。身体を半分失った後に、ほんとうの半身を得られるとは。
「間桐の若君が、下のものを勝手に動かしている件で行かれたのですよね。お諌めになられましたか」
「うーん……」
 困ったように笑う雁夜に、ランスロットは重ねて言う。
「相手は、妾腹とはいえ、正式な衛宮の長子。かの衛宮の当主を敵に回すのは避けた方が無難かと。アインツベルンはおそらく間桐との諍いを望まず静観するでしょうが」
 古い盟約は今現在も生きている。これがアインツベルンの血筋を害するのならともかく、あの長子はその血は外部のものだ。戸籍上はともかく。
「あの男を敵に回すのか……ちょっと嫌だなあ。でもきっと彼は、息子に自分でなんとかしろって姿勢を崩さないと思うけどな。これくらいの困難、乗り越えられないのなら後を継いでもすぐ死ぬだろ」
「主」
「あー、ごめんランス。知ってるだろ、僕、あの兄妹には弱いんだよ。慎二の意向にはちょっとだけ頷けるものがあるし……桜の夫は、アインツベルンの跡継ぎが相応しい。遠坂と結びつかれては間桐も困るんだ」
「では、正式に組織を動かされますか?」
 雁夜の命令なら、それがどんな理不尽で危険なものでもすぐに遂行しよう。
「それもねえ……ガキ一人に大人げないっていうか。ううん、どうしようかなあ」
 それに、と雁夜は一人ごちる。どうやら衛宮の長子はずっと何処かの施設で療養していたらしい。衛宮は継ぐだろうが、アインツベルン――間桐と並ぶ闇を抱える家――まで継ぐとは限らない。慎二が先走ってしまったという可能性が否めないのだ。ただ、災いの種を先に始末するという考えは全く間桐の後継者として正しい資質ではあるだろうが。
 と、雁夜の元に一人の男が歩み寄った。その耳元に、小さく報告をする。
「はああああ、マジで? ちょっとそれ、予想外なんだけど」
 突然の声に、ランスロットが眉を上げる。
「如何致しましたか、主よ」
「砂漠の狼が、彼の側についたって」
「……っ、何故、あの男が」


 砂漠の狼、と呼ばれた男。
 アイルランド系の移民である彼は、わずか十四歳で大学を卒業しアメリカ軍に入隊した。その後三年でとてつもない戦果をあげ十七歳という史上最年少で特殊部隊への入隊を果たした。
 頭脳明晰、冷静な判断力、とてつもない身体能力。彼が優れているのはそれだけではなく、共に闘う仲間をとても大切にし――彼と共に戦場に出たものはそのカリスマ性に惹かれ信望者となる。
 その通り名の由来にもなっているあの戦い――砂漠に取り残された仲間を救うためにただ一人単身で敵軍と渡り合い、全ての命を救った――の後、彼が救った要人は数知れない。対テロリスト戦では特に戦果を挙げ、彼を護衛にと望む声は多かったが、ただ一人に飼われるのは嫌だとそのまま軍に所属し、地位があがると面倒だと昇進も断っているという。今も最前線に出るし、教官としても若い軍人たちを導いている、という話だ。
 いわば、生きる伝説。米軍の英雄ともいえる彼が、いったいどうして。


「話というのは大げさに伝わるものだから、半分に割り引いて考えてもね、彼が素晴らしい戦士だというのは間違いない、と」
 雁夜は苦笑する。その英雄とやらが何故慎二の殺そうとしている相手についているのか。
 とことん、慎二は運がない男なのだろう。
「黙って見守ってやろうと思ってたけど……ちょっとこれは見過ごせないかもね。ランス?」
 かしこまりました、とランスロットは首肯する。
「私の部下に、彼と共に戦う機会を得たものもおり、絶賛しておりました。そのものは今回の作戦から外しましょう」
「……手の内を知る者をわざわざ外すと?」
「かの者は、伊達に英雄と呼ばれてはいません。そのカリスマ性は敵であろうとも影響する可能性があります。寝返りはしないでしょうが、その手が鈍ることは間違いない」
 嫌だなあ、そんなピカピカの英雄。雁夜はそういったまっとうな正義が苦手だった。天敵を思い出す。
「ああ、まかせるよ。……それにしても、めんどくさい相手に喧嘩売ることになっちゃったなあ」
「あまり大げさにすると衛宮の当主が黙ってはいないでしょうから、アインツベルンの面目を潰さない程度の規模で行います。主、私が直接出向いても?」
「許す。かの英雄だって、君が負ける訳ない。僕のランスロットは最強なんだ……だろう?」
「主……カリヤ」
 くす、と雁夜が悪戯めいた笑みを浮かべ、手を差し出す。
「先にご褒美をあげたくなっちゃうな。おいで、ランス。君がまだ僕を欲しいなら、だけど?」
「……意地悪ですね、カリヤ。私はいつでも、貴方を欲しがって『よし』を待つ犬なのに」
 カリヤの手を取り、そっとその指先に口付ける。
 まるで聖女に触れることを許された殉教者のごとく震える口付けに、雁夜は小さく微笑む。
「いいよ、ランス。僕を壊して……」
 僕の愛しい猟犬。僕だけの。


(うーん、お家騒動か……日本じゃそう簡単に動かせないから、この国におびき寄せてって事か。旅行者が事故に巻き込まれてって事にしたい、と)
 ベットに横たわるアーチャーを見下ろして、ランサーは煙草をくゆらせた。
 ここ数日、まともに寝ていないのだろう。ランサーに事の経緯をひととおり話すと、そのままベットに撃沈した。
 シャワーを浴びたせいか、その後ろに撫で付けていた前髪がはらりと額に落ちて、ますます幼い顔を際立たせる。
「可愛い顔してンな無防備に寝ちまって……俺が悪い大人だったら、どうするつもりだコラ」
 ランサーにその手の趣味はないが、キスした時の柔らかい唇と、その後の真っ赤に染まった頬は大変可愛らしかった。本当は舌まで入れる気はなかったのだが、つい役得、と思ってしまう程度には。
 アーチャーは家の名前を出さなかった。
 けれどもランサーにはわかってしまう。これでも世界の情勢にはめっぽう詳しい。
 お家騒動で暗殺集団を動かす事の出来るレベルといったら、そう数は多くない。せいぜい数百。
 そして東洋系に関わりがあり、この国でなら暗殺ももみ消すことが出来る――軍か、あるいは政府につながりがある――となるともっと数は絞られる。
 もし相手がプロであるのなら、生け捕りにしても自殺するか白状させるのにも色々と面倒だな、とランサーは今後どうするか幾通りものプランを思考する。
 一番良いのは首謀者を捕らえることだが、たった一人で彼を守りながらというのでは心許ない。
 日本大使館にでも彼を送り届けるのが一番なんだろうが、そこに敵が潜入していないとも限らない。敵がどの程度の規模かわからない今、一番最悪な事を想定しなくてはならない、とランサーは煙草のフィルターを噛んだ。
 足になる車はなんとか手に入れたが、性能はたいして良くない。銃撃戦に備えてなるべく鉄板が厚いタイプを選んだが、エンジンを何処かで替えられれば、といくつかの顔が利く修理工場を思い浮かべる。どこもランサー個人と付き合いがあって、信頼出来る――少なくとも金で自分を売るような奴はいない――相手だ。自分で載せ替えることも出来たが、プロに任せたほうがいい。
 それと、武器。丸腰では心元ないので、もの影で襲って来たチンピラをのすついでにバタフライナイフを奪った。それと、小型の投げナイフを幾つか。
(銃が欲しいな。こいつでも扱えるような軽いヤツ――うーん、てか、アーチャーはどの程度戦えるんだ? 今まで一対一の護衛ってのはやったことねェから、こいつにも動いてもらえると助かるんだけど)
 身体能力が素晴らしいのは、逃げる途中での行動でわかった。
 知りたいのは、格闘技や戦闘術をどれだけ身体に覚えさせているか。
 全くの素人ではないだろうが――少なくとも度胸はある――それと。
 ランサーは壊れたガラスに目をやる。
 あの時、コップが触れていないのに浮いていた。その前のボールペンといい、もしかして、アーチャーも自分と同じ『手品』が使えるのかもしれない。
 自分のそれは精度が低いためまったくもって役に立たない――武器やら自分の身体やら使ったほうが手っ取り早いし、正確だった――が、アーチャーはもしかしてそれを使いこなせるのかもしれない。
「だとしたら、そっち方面からの襲撃ってことも、あり得なくはないなあ」
 可能性はとても低いが。超能力を軍事利用しようとする組織、ぶっちゃけて言うとアメリカ政府だが、そのようなものも存在するのだ。
「難儀なガキだな。いろンなもんを背負ってる、のか?」
 日本人だというのに、褐色の肌と白に近い銀髪、鋼色の瞳という、変わった色彩を持つアーチャーはきっと、母国でも浮いていただろう。あの国は異邦人には冷たい。
 まあこの国も、移民には生き辛いけどよ。
 低く呟いて、ランサーは煙草を灰皿に押し付けた。誰かが近づいたら音が鳴るように部屋の周りにトラップを仕掛けたし、行動には注意したから、今日の今日でこの場所に辿り付けないと判断し、少し自分も眠ることにする。鍛えた身体は何昼夜かの不眠での行動も可能だが、眠れる時に寝ておくのも大切だ。
「ちょい、隣あけろ」
 そうして固いソファーではなく、どうせならきちんと身体を休められるベットで眠るのも。ダブルベットだから大柄な男二人が横たわっても大丈夫だろう。
 アーチャーをそっと押しやり、その横に滑り込む。
「……だ」
 薄い唇から、吐息と共に何かが洩れ出る。
 悪夢でも見ているのだろうか、アーチャーの眉がきつく寄せられ、吐息が呻きに乱れる。
 伸ばされた手を。
 ランサーは思わず取っていた。
 ぎゅ、と幼い子供のようにランサーの手を握ると、アーチャーはほっとしたように小さく息を吐く。その額に思わずキスを落として、ランサーは自分の行動にうろたえた。
(……ガキが)
 なんだろう、この、胸の痛みは。
 ランサーはついぞない感情に、きゅっと唇を噛んだ。
「守ってやるさ、アーチャー。俺が、おまえを」

Comments

  • そー
    October 5, 2017
  • 水菓子
    January 16, 2016
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