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東京都が暑さ対策などの取り組みとして掲げた「東京クールビズ」に注目が集まっています。
「熱中症警戒アラート」「特別警戒アラート」の運用開始を受けて4月上旬にスタートした「東京クールビズ」最大の焦点は、ハーフパンツの着用も推奨されていること。これまでのノージャケット&ノーネクタイに加えて、Tシャツやハーフパンツなどが着用可能になりました。
すでに都庁にはハーフパンツの職員がいますが、この取り組みはその他の公的機関や一般企業にも広がっていくのか。これから気温の上昇が見込まれる中、クールビズはたびたび話題に上がるのでしょう。
「ハーフパンツの着用」について議論は不要
なかでもネットメディア各社が報じ、世間の人々が反応しているのは、男性のハーフパンツ姿に「嫌」「苦手」などの否定的な声が上がっていること。
ネット記事やSNSのコメントを見ていると「キモイ」という言葉が使われ、特に“おじさんのハーフパンツ”がピックアップされ、「生理的に無理」などの強烈な拒否反応も見られました。
なぜハーフパンツをめぐるニュースにこれほどネガティブな声があがっているのか。その背景と、「キモイ」などとコメントする人に欠けた視点を掘り下げていきます。
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【「ハーフパンツ」はシンボリックな存在】
「東京クールビズ」のポスターを見ると、タイトル下の最も目立つ場所に「ハーフパンツ」という文字と写真が配置されています。つまりハーフパンツはこの施策のシンボリックな存在と見えます。
はたして都は、現在のような「嫌」「苦手」「キモイ」「生理的に無理」などの声が上がる状況をどこまで想定できていたのか。多少の誤算はあったのかもしれないものの、都の対応に非はなく、気にする必要性はないでしょう。
前提としてあげておきたいのは、ハーフパンツの着用に問題はないこと。都のように勤務先から判断を委ねられていれば、多少のマナーは必要でも着用は個人の自由であり、過度な干渉に正当性はありません。
一部で「職場での過度な露出はハラスメントではないか」という声もありましたが、ハーフパンツを過度な露出とみなすことは無理があります。
逆に、猛暑対策であり、省エネや仕事効率アップも期待できるなどのメリットは多く、これぞ論をまたないテーマ。それは都が夏期だけでなく「通年での軽装勤務(業務)等へのご理解とご協力をお願いいたします」と問いかけていることからもわかるでしょう。
つまり「それだけ暑さの深刻さや省エネの必要性が増している」ということ。それらが一部の人々による嫌悪感よりプライオリティが高いことは言うまでもありません。
「おばさんのスカートはキモイ」は即ハラスメント
そもそも「嫌」「苦手」「キモイ」「生理的に無理」などとコメントする人々がどこまで本気で思っているかと言えばあやしいところがあります。無記名のため、感覚的に語られることの多いネット上のコメントが、働き方の自由や環境対策を阻み、有効な手段を使わせないとしたら問題視すべきでしょう。
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【若い女性が「おじさんのハーフパンツは嫌」「不快です」】
また、感覚的に語られるからこそ騒動を大きくしているのが、性別や年齢に対する差別。
あるテレビ番組では若い女性が顔出しで「おじさんのハーフパンツは嫌」「不快です」「すね毛を見たくない」などとはっきり語ったほか、女性のMCやコメンテーターが「いいと思う」と許可するような話し方をしていました。これは「差別的発言」「上から目線」などと言われても仕方がないでしょう。
さらにネット上ではそれ以上に差別を感じさせる強い言葉が見られますが、こちらも論をまたないレベル。たとえば「おばさんのスカートはキモイ」「スカートが短くて不快」などと言ったら即ハラスメントで問題視されるでしょう。
女性が「男性に見せるためにミニスカートを履いていない」のと同じように、男性も「女性に見せるためにハーフパンツを履いていない」ことは明らかであり、どちらも「見なければいい」というだけのこと。「それくらい言われなくてもわかっている」という人が多いのではないでしょうか。
「おじさんのパーカー」「おじさん構文」も話題に…
ではなぜ「おじさんのハーフパンツはキモイ」は多くの人が語るような話題になったのか。
これまで何度も「おじさんのパーカーはダサイ」「おじさん構文はサムイ」などが話題になるなど“おじさんイジリ”は一部の人々が盛り上がり、ネットメディアがPVを見込めるテーマとなっていました。その背景には一部の人々による「おじさんなら言いたいことを言ってOK」「“おじさんイジリ”でストレス解消したい」という共通の感覚があります。
やっかいなのは“おじさんイジリ”が遊びのような感覚で行われ、切実さがないこと。目の前の人に親しみを込めて行うイジリではなく、利害関係のない人に多少の悪意を込めて行うイジリだからこそ、ハーフパンツ、パーカー、構文などとイジる対象が広がりやすいところがあります。
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【年齢と見た目に対する基準のあいまいさ】
今回の件で言えば、「おじさんのハーフパンツはキモイ」とイジるのではなく、「おじさんもスーツやワイシャツではなく、もっとカジュアルな服装でいいのでは」とフォローする声が出ることこそ、差別やイジリのない健全な社会ではないでしょうか。
「おじさん」は何歳からで、どんな見た目か
もう1つ、「おじさんのハーフパンツはキモイ」というテーマで見逃されがちな視点としてあげておきたいのは、年齢と見た目に対する基準のあいまいさ。
そもそも「おじさんとは何歳以上のことなのか」「年齢を知らないとき、どんな見た目がおじさんっぽいのか」などの基準があいまいであり、「キモイと感じるポイント」も含め個人差があります。
今回の騒動を見ていると、基準があいまいなままネット上で議論している人の多さに気づかされました。
たとえば「30歳前半からおじさん」と思っている人と「40代前半からおじさん」と思っている人がネット上でコメントを書き合っている。あるいは、ある人が「このおじさんの見た目は好感が持てる」と思っていても、別の人から見たら「このおじさんの見た目は好感が持てない」のかもしれない。
筆者が近所の公園で犬の散歩仲間の女性たちと話しているときにこんなことがありました。
ある30代女性が少し離れたところにいる顔見知りの男性を見て「40代前半で水色のハーフパンツ履いてるなんて、おじさんにしては若いよね」と言うと、別の30代女性は「ピンクじゃなくてよかった」、さらに別の30代女性が「似合うかどうかじゃなくて着た者勝ちだよ」と続け、その後も「でも、おじさんっぽいんだよね」「あれくらいなら、ギリおじさんではないんじゃない?」などと談笑していました。
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【なぜ女性たちはそのようなことを言ったのか】
それを聞きながら筆者が感じていたのは、「やわらかく言っているけど小バカにしているかも」「おじさんの基準もバラバラだから、ハーフパンツが似合うかどうかの基準もバラバラなんだろうな」ということ。
悪意なく行われる“おじさんイジリ”
ちなみに筆者はその男性より年上であるうえに、犬の散歩時にはよくハーフパンツを履いていました。女性たちは筆者の実年齢をはっきりと知らないものの、悪気はないままその男性にとっても筆者にとっても手厳しい“おじさんイジリ”をしていたのです。
ではなぜその女性たちはそのようなことを言ったのか。前述したような「おじさんはイジっていい」に加えて「私たちのほうが若い」という少しの優越感があるように感じました。
しかし、女性たちはその男性や筆者から「自分よりちょっと若いだけで中身がない」などと甘く見られているかもしれません。また、男性や筆者から年齢以外のところで「おばさんっぽい」などと思われている可能性もゼロとは言えないでしょう。
実際、筆者はそう思っていませんが、多少の差別やイジリを受けて「では自分たちはどうなの?」と感じてしまいました。
年齢と見た目に対する基準には個人差があり、無理に決める必要性はありません。また、「死までの年月はどちらが長いのか」「心身の老化はどちらが早いのか」などがわからない以上、年齢と見た目の若さにさしたる優位性はないでしょう。
「おじさんだけど」「年齢の割には」「見た目はいいのに」などと上から目線のレッテルを貼らないようにしたいところです。
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【「嫌」「不快」などと語る若い女性の姿に感じた“危うさ”】
最後に言及しておきたいのは、ビジネスライクなネットメディアの存在。「キモイ」「不快」を強調した報じ方は、無用な争いを生むなど目に余るものがあります。
前述したように「“おじさんイジリ”で数字を稼ごう」という戦略も、「一部の人の意見を多くの人々が言っているように見せよう」という編集も、確信犯的。そして、それを見る人々は「何となくわかっていながらけっきょく乗せられてしまう」という状況が続いています。
これは「もう性別や年齢のイジリに反応して、数字稼ぎに加担しない」という、1人ひとりの行動で変えていくしかないのかもしれません。
「ハーフパンツ」は近いうちに慣れる
また、そんなメディア報道を見ていて、あるテレビ番組のインタビューで「嫌」「不快」などと語る若い女性の姿に危うさを感じました。そのインタビュー映像は切り抜かれてネット上に残るリスクが大きく、今回のネガティブなコメントはデジタルタトゥーに近いものを感じさせられます。
そもそもテレビの街頭インタビューは、「このような流れにしたい」という台本に沿う形でコメントが切り取られやすく、基本的に映像の確認はできません。だから若年層や高齢層などの無防備そうな人が声をかけられやすいのですが、SNSへの書き込み以上に慎重な姿勢が求められます。
ハーフパンツでの勤務は慣れの問題で、違和感がある人もいずれ薄れていくでしょう。これは他の服装、髪型、体形、話し方、表情、仕草、振る舞い、持ち物なども同様であり、性別や年齢のギャップを感じるものでも徐々に慣れていくものです。
ただできれば、慣れる前から個人それぞれの選択を尊重し、自分の感覚で語らないようにしたいところ。それが自分を尊重してもらうことにもつながりますし、自分の感覚を優先させて包容力に欠けがちな社会に必要なことではないでしょうか。