〈社説〉緊急事態条項 三権分立を損なう恐れ

2026年5月22日 07時42分
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 衆院憲法審査会で、大規模災害など緊急時に備えた「緊急事態条項」創設に向け、改憲のイメージ案を基にした議論が本格化した。
 国会議員の任期延長に加え、内閣による法律と同一の効力を持つ緊急政令の制定権も盛り込まれたが、三権分立を損ない、憲法によって権力を縛る立憲主義にも反する。内閣の権限拡大を安易に認めず、慎重に議論するよう求める。

国会で開かれた衆院憲法審査会。中央は古屋圭司会長=21日、東京・永田町で(佐藤哲紀撮影)

 イメージ案は、緊急事態における憲法のあり方について、衆院憲法審で各党から出た意見に基づいて衆院法制局などがまとめたもので、条文化に向けた「たたき台」と位置付けられている。
 ▷大規模な自然災害
 ▷感染症の大規模まん延
 ▷内乱
 ▷外部からの武力攻撃
 ──などの緊急事態が起き、国政選挙の実施が広範な地域で長期間困難な「選挙困難事態」と内閣が認定すれば、国会議員の任期を延長できるとする内容だ。
 さらに「国会による法律制定を待ついとまがない」場合には、内閣が法律と同一の効力を持つ「緊急政令」の制定を可能にすることも盛り込まれた。
 ただ、こうした改憲内容には問題が多い。

 まず、国会議員の任期延長は国民の選挙権を一定期間制限する一方、国会議員から選ばれる首相の任期が延長され、民主的正当性を欠く内閣が続くことになる。
 国政選挙の実施を「広範」「長期」に困難と判断するのは内閣だが、その基準は明確でなく、延命を狙う内閣が憲法を恣意(しい)的に解釈して運用する懸念は拭えない。
 現行憲法は「参院の緊急集会」を規定し、災害対策基本法などは「参院の緊急集会を待ついとまがない」場合の対応も明記する。現行の法体系で対応は可能だ。
 さらに、内閣が緊急事態を名目に、国会での議決を経ず、法律と同一の効力を持つ緊急政令の制定が可能になれば、内閣の行政権が肥大化し、恣意的な権力行使を抑制できなくなる恐れがある。
 議員任期延長が国会機能の維持を目的とする一方、緊急政令は国会が機能しない場合を想定しており、矛盾している。
 自民党などが条文化に向けた議論を急ぐ背景には、来年の党大会までに改憲発議のめどを立てたい高市早苗総裁(首相)の意向があるのだろうが、立法事実の乏しい改憲を、期限ありきで強引に進めることは断じて許されない。

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    みんなのコメント6件

  • ユーザー
    大手町の従業員 17 時間前

    国会議員の任期延長については検討に値しますが(※)、
    「緊急政令」など論外です。

    ”歴史を学んだ”結果なのかもしれませんが、憲法改定を考えるより、自分の欲望を抑えることを学んだ方がいいでしょう。

    ※衆議院と参議院の任期が重複する場合は、参議院の半分しかいないこともありえるので、そのケースを規定するのは許容できます。ただし、現在出ている案は反対です。条件が緩すぎますし、一度実施した場合のインターバルを決めておかねば、例えば延長が完了した1日後に再び宣言するといったように、繰り返して悪用することが考えられるからです。

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    • ユーザー
      ムジナ 18 時間前

      憲法に緊急政令の明記は必要ない。緊急事態関連の法制定で対処可能だ。
      フランスには憲法に大統領の非常大権があるが、行使されたのは過去一回、1961年のアルジェリア戦争の時だけだ。パリ同時多発テロやコロナ禍も緊急事態法で対処できている。
      憲法に内閣の強力な権限を明記してしまえば、韓国の戒厳令のような恣意的な行使のおそれが生じる。国会で事前に審議し、法律で定めておくのが、ベストだ。
      現状の強い与党による改憲の動きは、ナチスと同様、独裁への野望を疑った方がよい。

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    • ユーザー
      いとっちょ 5月22日8時52分

      大規模災害に備えるというまやかしの理屈で憲法に緊急事態条項を創設するなどもってのほかだ。
      現行の法体制で対応できることをなぜわざわざ憲法に新たに書き込むのか、説明できないだろう。
      憲法改正を既成事実化するために、とりあえずハードルが低そうで目眩しの理由をでっち上げられる項目を考えた?としか思えない。改憲の本丸は9条改正だろうから、決して油断してはいけないと思う。

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