中学生(14)が「非常用ドアコック」操作で逮捕、常習的犯行か…“億単位”とも言われる電車遅延の損害賠償「子ども相手」でも“責任”問える?
加害者が子どもでも、列車の遅延について損害賠償責任を負うのか?
冒頭の事案において、列車を遅延させたのは14歳の男子中学生でした。中学生などの子どもでも、列車の遅延について損害賠償責任を負うのでしょうか? この点、民法712条では「責任能力」のルールが定められています。未成年者(18歳未満の者)が他人に損害を加えた場合、本人が責任を負うかどうかは、責任能力の有無によって決まります。 「責任能力」とは、自己の行為の責任を弁識するに足りる知能を意味します。冒頭の事案で言えば、「非常用ドアコックを勝手に操作すると、鉄道会社に迷惑をかけるかもしれない」ということを理解できるかどうかが、責任能力の有無の分かれ目です。 一般に、年齢的な責任能力のボーダーラインは「10~12歳程度」と考えられています。したがって中学生であれば、知的発達が遅れているなど特段の事情がない限り、責任能力は認められる可能性が高いです。 責任能力があれば、中学生であっても、列車を遅延させた本人が鉄道会社に対する損害賠償責任を負います。 これに対し、未就学児や小学校低学年の子どもについては、責任能力が認められない可能性が高いと思われます。責任能力がなければ、本人に対して損害賠償責任を問うことはできません。 ただしこの場合は、保護者(両親)などの監督義務者が本人に代わって損害賠償責任を負うものとされています(民法714条1項)。
中学生本人が支払えない場合、親に請求できる?
前述のように、中学生が列車を遅延させた場合は、責任能力が認められ、本人が損害賠償責任を負うことが多いと考えられます。しかし、中学生が多額の損害賠償を支払えるだけのお金を持っているケースはほとんどないでしょう。 責任能力がある以上、損害賠償責任を負うのは本人であり、鉄道会社は本人に対してのみ損害賠償を請求できます。両親などに対して損害賠償を請求することは原則としてできません。 ただし実際には、両親が任意で損害賠償を肩代わりするケースもあると思われます。 両親が肩代わりをせず、本人もお金を持っていない場合は、鉄道会社がすぐに賠償金を回収することは難しいです。分割で支払わせるなどの対応を検討することになるでしょう。 なお、本人が自己破産をしたとしても、故意に列車を遅延させたことによる損害賠償責任は免責されない可能性が高いと思われます(非免責債権、破産法253条1項2号)。 ■阿部由羅(あべ ゆら) ゆら総合法律事務所代表弁護士。西村あさひ法律事務所・外資系金融機関法務部を経て現職。企業法務・ベンチャー支援・不動産・金融法務・相続などを得意とする。その他、一般民事から企業法務まで幅広く取り扱う。各種webメディアにおける法律関連記事の執筆にも注力している。
阿部由羅