
70年~80年代、山口百恵、薬師丸ひろ子、原田知世など、主演映画の主題歌も歌い、その楽曲はヒットチャートを飾る、いわゆる「アイドル女優」が活躍した。と同時期に、正統派の美しさを兼ね備えた大人の女優たちもレコードをリリースし、歌番組の出演やCMのタイアップでヒット曲を出し、音楽業界に彩を添えていた。
たとえば、松坂慶子。TBS系のドラマ「水中花」(79)では主題歌も歌い、話題になると、歌番組「ザ・ベストテン」の〝今週のスポットライト〟のコーナーに登場した。スリットの大きく入った黒のドレスを召した、当時27歳の松坂は艶めかしく、魅せる歌唱はさすが女優、と感嘆する存在感があった。その後「愛の水中花」がトップテン入りすると、黒の網タイツにバニーガール風のセクシーな衣装で登場したが、決して下品にならず妖艶な美が絶賛された。ドラマの原作者でもある作家・五木寛之による「これも愛 あれも愛 たぶん愛 きっと愛」は、一度聴いたら耳を離れないインパクトのある歌詞だった。オリコン週間2位を獲得する快挙。それまで、NHK大河ドラマの「国盗り物語」(73)の濃姫役や、「草燃える」(79)の小夜菊役などで、清純で儚げな美人女優のイメージから「水中花」でセンセーショナルに〝大人の女〟への脱皮を果たした。そして今では、コミカルなおばさん役もこなす、息の長い女優として活躍している。
もう一人は、女優の多岐川裕美だ。最近、映画『続・愛と誠』を観る機会があり、ヒロインの早乙女愛と対決する、影の大番長・高原由紀役を演じた多岐川に目を見張った。それとともに「酸っぱい経験」(80年9月21日リリース、作詞:三浦徳子、作・編曲:小笠原寛)の、冒頭「シャツのボタン……」と歌っている多岐川の眩しいような美しさが蘇ってきたのである。

女優・多岐川裕美といえば、都会的でハイセンス。80年前後、「男が連れて歩きたい女性」と言わしめ、雑誌のグラビアやメディアで絶大な支持を受けていた。目鼻立ちがはっきりとしたクールビューティーで、隣に並んで街を歩くと周囲の人が振り返る、そんな男性のプライドを満たしてくれる存在で、独特の華やかさがあった。
多岐川は、喫茶店でアルバイトをしていた短大生のときにスカウトされ、『聖獣学園』(74年、監督・鈴木則文)で主役デビュー。母の死の真相を探るため修道女になった主人公・多岐川魔矢を演じ、バイオレンス映画で見せた冷徹な美しさが話題になった。さらに前述した『続・愛と誠』の高原由紀役など個性の強い役が続いた。その後、梶芽衣子の当たり役、「女囚さそりシリーズ」の松島ナミ役に抜擢され、『新・女囚さそり701号』(76)に出演した。本作で主題歌の「あいつの残影」(作詞:山口洋子、作曲:平尾昌晃、編曲:竜崎孝路)を歌い、76年11月1日リリースしていたとは、知らなかった。







