召喚室につき、ドアに鍵をかけて
ずるずると座り込む。足に力が入らない。
涙が勝手にでてくる。
つらい。悲しい。寂しい。
そんな感情が頭をぐるぐる回る。
俺だけに向けられていた笑顔が他人に向けられていた。ただそれだけの事なのに俺は悲しくてしょうがない。
自分だけのサーヴァントだと思っていた。
大事な、大事な。大好きで何物にも変え難い英霊達。
でもロビンやエミヤ。みんなほかの人をマスターと呼んでいたのだ。
分かっていたことなのに、胸が苦しくて仕方ない。
涙は止まらなくて、苦しくて、堪らなくて。
もういっそ、ここから出ていってしまえばいいんじゃないか。目を背ければいい。そう思った、その瞬間。
突然、部屋全体が虹色の光に包まれた。
びっくりして顔を上げると
そこには俺の大事な、大好きな。
俺だけの、
「お、うさま。」
それだけでなく、まだ呼んでいないのに召喚サークルからオルタや、オジマンディアス。マシュの言っていたエクストラクラスやバーサーカーがでてきた。
「、なんで、皆っ!?」
「たわけ、我のマスターはお前だけだろう、立香?」
涙がぼろぼろ際限なくでてくる。
王様は優しく俺を撫でてくれて、ロボは俺に擦り寄ってきて。
みんなみんな優しく俺をマスターと呼ぶから。
何だか安心して、1年間張り詰めていた糸がぷつっと切れるように俺は瞼をとじた。
先輩が召喚室へ行ってしまった。
1年ぶりにみる先輩はなんだか少し背が高くなったような気がする。海を閉じ込めたような綺麗な蒼い瞳は憂いを帯びていて、少し、ほんの少しだけ知らない男の人にみえてしまった。
顔色が悪かったので
大丈夫かと聞けば大丈夫だというけれど、本当だったのか。
先輩が時計塔に行っていた1年間、カルデアと時計塔は一切通信等を禁止されていて、お互いの事を何も知ることはできなかった。
新しいマスター、つまり魔術協会からきた魔術師達ににこりと笑顔で挨拶した先輩。
新しいマスター達は先輩をみて、無視したのでエミヤさんやロビンフッドさんは顔を顰め、クーフーリンさんに至っては青筋をたて、宝具展開しようとしたので必死に止めた。
しかしその事を先輩は全く気にしていないようで、どこかへ行こうとする。
どこへ行くのか
と聞けば、座に還られてしまった方々を呼びに行くのだという。
座に還られてしまった方々はみんな、個性的で人理修復に協力する、というより先輩の頼みだから協力する、という感じだったので、座に還ってしまった時も納得したし、
ほかのマスターがいくら呼んでも召喚されないのも分かっていた。
しかし、そんなことを知らない新しいマスター達は、口々に先輩に出来るはずが無いと言った。
召喚室に行こうとしていた先輩は、振り返って見たこともない冷たい顔を見せた。
笑いながら、
「そりゃあね?あの人たちは俺の。俺だけのサーヴァントだから。君たちなんかに呼ばれちゃあ困るし呼ばせないよ。」
と言った。
きっと無意識なんだろうけれど、その言葉には殺気がこもっていて、サーヴァントも、新しいマスター達も固まってしまった。
先輩が召喚室へ行って暫くすると、膨大な魔力が感じられた。
それを感じとった新しいマスター達は驚き、納得のいかない顔をしていた。
次に私達の前に現れたのは
眠ってしまっている先輩を抱き上げたオルタさん、キャスタークラスのギルガメッシュ王の2人だった。
よくみると先輩の顔には泣いた跡があって、
抱き抱えているオルタさんとギルガメッシュ王の有無を言わさぬただただ真っ赤な瞳が私達の方を睨みつけていた。
召喚室で何があったのか。と質問したかったけれど、2人の赤い瞳に睨まれている私は動けなかった。
蛇に睨まれた蛙とはこんなものなのかと、正常に働かない頭でそんな事を考える。
「おい、そこな雑種。」
雑種、雑種とは、誰を指しているのだろうか。
ギルガメッシュ王は先輩のことやファラオ、オジマンディアスには名前やら太陽の、と呼んでいるが、
その他大勢には雑種。の一括りだ。
さて、この場合の雑種は誰を指しているのか。
しかしサーヴァントも新しいマスター達も誰1人返事しないので、私がするべきだろう。
「は、はいっ!なんでしょうか。」
「マシュはよい。我が呼んだのはそこの後ろにいる雑種よ。」
後ろ、というとサーヴァントの皆さんと新しいマスター達か。
「現在を持って藤丸立香は我を筆頭とするサーヴァントのマスターだ。マスター、と呼んでいいのは我らだけ。これはもうお前らのマスターではない。心得よ」
時間が止まった、そんな気がした。