相次ぐ高齢者施設の事故 公表は一部 情報集約なく実態把握困難
全国で高齢者施設での事故が相次いでいる。しかし、国が事故件数などの情報を集約した統計はなく、実態を把握する仕組みが整っていない。
厚生労働省は2027年度を目標に全国の介護現場で起きた事故などについて、件数やそれぞれの概要をデータベース化して公開する方向で検討している。
介護施設などでサービス利用中に事故が起きた場合、事業者は速やかに自治体に報告するよう厚労省令で義務づけられている。
ただ、自治体から国に報告する義務はなく、事故の概要を公表する自治体も一部にとどまっているのが現状だ。
大阪市は22年度から事故報告統計の集計を始めた。個別事故の背景を分析し、事業者を対象とした指導などに活用する予定という。
市によると、24年度の事故件数は4805件で3年連続で増加している。死者は171人だった。担当者は「事故報告書の提出に対する事業者の意識が定着したことが増加の一因にある」と推測する。
事故種別は転倒が47・9%で最も多く、その他19・2%、誤薬14・7%と続いた。
死亡事故だけに限ると誤えんが約3割で高い割合を占めた。死亡事故の発生場所は半数以上が居室で、食堂や浴室も多かった。
専門家「国が対策提示を」
福祉施設での勤務経験がある松宮良典弁護士(大阪弁護士会)は「仕事が立て込むなど介護士に余裕がなくなり、利用者から気がそれた隙(すき)に介護事故は起こる。特に食事や入浴中は命に関わる事態になることが多い」と指摘する。
事故を減らすためには職員教育の徹底が必要だが、個々の施設の取り組みに任せるには限界がある。
松宮弁護士は国がデータを分析して対策を示すことが重要だといい、「ヒューマンエラーへの対策や事故を防ぐための設備導入など、効果的な取り組みを実施している施設に対して介護報酬を加算するなど、実効性のある対策を国が示すことが必要だ」と話した。【斉藤朋恵】