愛が重いアーモンドアイにキャバクラに行ったことがバレた結果
最強のウマ娘が、初めて独占欲を見せた原因は、たった1枚のキャバクラの名刺だった。
信頼していた担当ウマ娘から向けられる、怒りと、焦りと、異常なまでの独占欲──
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また書く気力が出てきている米問屋です。
アイちゃんがただただめんどくさいウマ娘みたいになっちゃった気もしますが投稿しちゃう。
今回の作品はどうなんでしょうかね?賛否が分かれそうな気がします。良くも悪くも私らしさが出し切れずに長々と書いてしまった感があります。
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その日、トレーナーは失敗続きだった。
朝のミーティングでは資料を忘れ、午後のトレーニングではストップウォッチのボタンを押し損ねた。
普段の彼ならあり得ないミスが積み重なる。
アイ「トレーナー。今日、3回目よ」
そう指摘したのは、アーモンドアイだった。
彼女は整った顔に薄い笑みを浮かべている。微笑んではいる。だが目が笑っていない、とトレーナーはなんとなく思った。
トレ「3回目?」
アイ「ええ。わたしのフォーム確認中に、別のことを考えていた回数」
トレ「そうか…?」
アイ「ええ。貴方の視線はいつも、もっと正確だもの」
さらりと言われて、トレーナーは曖昧に笑った。
トレ「悪い。ちょっと寝不足で」
アイ「そう」
短い返事。だがそれだけで終わらないのが、アーモンドアイだった。
アイ「寝不足の原因、聞いても?」
トレ「仕事だよ。ちょっと付き合いがあって」
アイ「付き合い…か」
その言葉を聞き、さらに問い詰める。
アイ「どんな付き合い?」
トレ「大したものじゃないさ。気にしなくていい」
その瞬間、彼女の耳がぴくりと動いた。
アイ「気にしなくていい、ね」
トレ「アイ?」
アイ「いいえ。続きをしましょう。勝つためにもっとトレーニングしなきゃ」
完璧な笑顔だった。完璧すぎて、かえって何かを誤魔化しているように見えたが、トレーナーはそこまで深く考えなかった。
彼はまだ、知らなかったのだ。
彼女が自分の声色、瞬き、呼吸の間で思考を測るくらい、自分を見ていることを。
〜⏰〜
原因は、昨夜だった。
担当ウマ娘の重賞制覇を祝うと称して、顔の広い先輩トレーナーに半ば強引に連れ出されたのだ。
「情報交換だ」「付き合いも仕事のうちだ」と言われ、断り切れなかった。
連れて行かれた先が、よりによってキャバクラ。
トレーナーは居心地の悪さに終始背筋を固くしたまま、少しずつハイボールを飲んでいた。
早く帰りたい、その一心だった。
だが帰り際、店の女に笑顔で名刺を渡された。
『また来てくださいね、トレーナーさん♡』
丁重に断る間もなく、ポケットに差し込まれたそれを、彼は抜き出し、適当にカバンに入れた。
それが失敗だった。
〜⏰〜 夕方 トレーナー室
トレ「じゃあ今日のメニューはこれで─」
机上のファイルをまとめようとした時、何かがひらりと落ちた。
それを、アーモンドアイが拾った。
アイ「何、これ?」
トレーナーの背中に、ぞわりと冷たいものが走る。
トレ「あ、いや、それは」
アイ「読めばわかるわ。
『CLUB regina 皐月レイ』……素敵な名前ね?」
アーモンドアイは名刺を指先でつまんだまま、微笑んだ。
その笑みは、レース前に見せる勝負師の顔によく似ていた。ただしこちらは、ずっと冷たい。
アイ「キャバクラよね?」
トレ「ああ……付き合いで行った」
アイ「誰との?」
トレ「先輩トレーナーに連れられて」
アイ「何時まで?」
トレ「終電前には出た」
アイ「なんでわたしに連絡をしなかったの?」
トレ「いや、なんでアイにそこまで─」
続きを言いかけて、トレーナーは口をつぐんだ。
アーモンドアイが、一歩近づいてきたからだ。
アイ「ねぇトレーナー。今日はずっと様子が違ったの。わたしを見てるようで見てなかった。そこにこれが落ちた。なら、聞くでしょう?」
トレ「そんなこと言っても、ただの付き合いだよ。俺だって好きで行ったわけじゃないし」
アイ「でも行ったじゃない」
トレ「それはそうだけど…」
アイ「その人、綺麗だった?」
トレ「ん?」
アイ「皐月レイ。綺麗だったのかって聞いてるの」
トレ「別に、よくわからなかった」
アイ「ふーん。話はしたの?」
トレ「それは、まぁ」
アイ「貴方は笑った?」
トレ「愛想笑いくらいはしたけど」
アイ「触られた?」
トレ「……肩を少し」
アイ「へえ」
へえ、の二文字がやけに重かった。
アーモンドアイは名刺を机に置いた。丁寧に、折り目ひとつつけずに。
なのに、その所作のほうがよほど恐ろしかった。
アイ「トレーナー」
トレ「なんだ」
アイ「わたし、貴方がそんな人だなんて、思ってもみなかったわ」
トレ「そんな大げさな…」
アイ「大げさ?」
彼女の声が、すっと低くなる。
アイ「わたしがどれだけ貴方を見ているか、知らないくせに」
トレ「アイ?」
アイ「知ってる?今日の貴方、わたしが話しかける度に返事が半拍程遅れたの。目も真っ直ぐ見てくれてなかった」
トレ「わかった。悪かったよ……」
アイ「断ればよかったじゃない」
トレ「そう簡単に言うなよ」
アイ「簡単よ。わたしなら断るもの」
トレ「立場が違うだろう?」
アイ「どんな立場でもわたしなら断るけど?」
トレーナーは思わず額を押さえた。言い合いなんてしたくなかった。
なぜここまで責め立てられなければならないのか、その理不尽さが少しずつ胸に溜まっていく。
トレ「……そんなに怒ることか?」
アイ「怒るわ」
トレ「なんでさ?」
アイ「わからないの?」
アーモンドアイはそこで初めて、ほんの少しだけ表情を崩した。
怒りの下にあるものが、ちらりと覗く。傷つき。焦り。独占欲。けれどトレーナーはそれを、単なる担当としての不満だとしか受け取れなかった。
アイ「だって貴方は─!」
トレ「アイ、落ち着けって」
アイ「……落ち着いてる」
トレ「落ち着いてないだろ。さっきからずっと─」
アイ「落ち着いてるってば!」
感情的な声に、トレーナーは我慢ができなくなった。
トレ「……アイ、もういい加減にしてくれ」
部屋がしんと静まる。
アーモンドアイは瞬きひとつしなかった。
トレーナーは続ける。言ってはいけない言葉を。
トレ「悪かったとは言ったし、反省もしている。だけどな、これ以上君にどうこう言われる筋合いはないだろ」
沈黙
長い、長い沈黙だった。
アーモンドアイは何も言わない。ただ、静かにトレーナーを見ていた。その瞳から温度が消えていくのを、彼は見た。
トレ「……あ」
まずい、と気づいた時には遅かった。
彼女の中で、何かが完全に切れた。
アイ「そう…」
声は驚くほど穏やかだった。
アイ「筋合いが、ないのね」
トレ「いや、今のは言い方が悪かったな。その─」
アイ「ええ、よくわかったわ」
アーモンドアイはふっと笑った。柔らかく、美しく、ぞっとするくらい静かな笑みだった。
アイ「つまり貴方は、担当ウマ娘に踏み込まれるのが嫌だったのね」
トレ「アイ、俺は─」
アイ「なら、もう担当として言わない」
彼女は一歩、また一歩と距離を詰める。
アイ「一人の女として言うわ」
トレ「……?」
アイ「貴方が他の女に触れられるの、嫌。」
トレ「アイ?」
アイ「他の女に笑うのも、話をしているのも、全部嫌」
トレ「何を言って…」
アイ「ずっと嫌だった。ずっと我慢してた」
トレーナーは言葉を失った。
アーモンドアイは静かに続ける。
アイ「貴方が誰に優しくしても、仕事だからって思ってた。誰に時間を使っても、トレーナーだものって納得してた。でも、そうやってわたしの知らない場所で、知らない女の匂いをつけて帰ってくるのは違うでしょう?」
トレ「だからおかしいって、俺達は─」
アイ「ええ。まだ何も始まってない」
トレ「なら」
アイ「だから今から始めるの」
彼女は机の上の名刺を拾い上げ、二つに折った。さらに四つに、八つに。丁寧に、丁寧に。
トレ「アイ、やめろ」
アイ「嫌」
トレ「店の人に悪いだろ」
アイ「わたしには関係ないわ」
トレ「そういうのは常識として─」
アイ「常識?」
アーモンドアイの目が細まる。
アイ「わたしより他の女を優先しておいて常識を語るの?」
トレ「優先なんかしてない!」
アイ「したわ。少なくとも昨夜は」
トレ「だから付き合いだって言っているだろう?」
アイ「その結果が今日の失敗続きじゃない」
その一言に、トレーナーは返せなかった。
アーモンドアイは畳みかけるように言う。
アイ「貴方は鈍いから教えてあげる。わたしは、貴方が思ってるよりずっと、貴方のことが好き」
トレ「……」
アイ「好きで、好きで、好きでたまらないの。勝ちたいレースがあるのと同じくらい、いえ、それ以上に」
トレ「アイ」
アイ「だから他の女に取られるのは困るのよ、トレーナー?」
彼女は彼のネクタイを指先でつまんだ。引き寄せるでもなく、ただ逃がさないと示すように。
アイ「今日のこと忘れないで。次に同じことをしたら、もっと貴方にわからせないといけなくなる」
トレ「わからせるって……」
アイ「貴方が誰のものかをね」
トレ「俺は物じゃないだろ?」
アイ「そうね。だから手に入れるの。正式に」
トレーナーの喉が鳴った。
目を見ればわかる。アーモンドアイは本気だった。
トレ「……とにかく、今日は帰ってくれないか」
アイ「帰るわ」
トレ「ちゃんと休んで、頭冷やして」
アイ「ええ。でもその前に」
彼女は硬く折り畳まれた名刺を、彼の手にそっと押し込んだ。
アイ「捨てて」
トレ「アイ」
アイ「貴方が自分で捨てて。わたしの前で」
トレーナーは深く息を吐いて、近くのゴミ箱にそれを落とした。
ぽす、と軽い音がした。
アーモンドアイはそれを見届けると、ようやく満足そうに微笑んだ。
アイ「よくできました、トレーナー」
トレ「子ども扱いするなよ……」
アイ「だって、教えないとわからないでしょう?」
扉の前まで行って、彼女は振り返る。
アイ「明日からもよろしくね?」
トレ「……ああ」
最後の一言だけ、妙に甘かった。
扉が閉まる。
静けさが戻る。
トレーナーは椅子に座り込み、再び大きく息を吐いた。
トレ「なんだったんだよ、いったい…」
静まり返った室内で、彼女が最後に見せた、慈しむような、それでいてすべてを支配するような瞳が脳裏に焼き付いて離れない。
トレ「一人の女として、か…」
その言葉の重みを、彼はようやく理解し始めていた。
彼女は誰よりも勝ちにこだわるウマ娘だ。
その冷徹なまでの勝利への執着が、自分という人間に向けられた時、これほどまでに逃げ場のない圧迫感を生むとは思いもしなかった。
ふと、机の隅に視線をやる。そこには、彼女が丁寧に、丁寧に、折り目ひとつ狂わずに折った名刺が、ゴミ箱の底で静かに横たわっていた。
彼女は「捨てて」と言った。
そして、彼はそれに従った。
その事実が、主導権がどちらにあるのかを無言の内に告げていた。
〜⏰〜 翌朝
トレーナーは重い足取りでトレーニングコースへ向かった。
昨夜は一睡もできず、鏡の中の自分は酷い顔をしていた。
アイ「おはよう、トレーナー。顔色が悪いわね?昨夜はよく眠れなかったの?」
アーモンドアイは、昨日までの棘を一切感じさせない、澄みきった笑顔でそこに立っていた。
昨日の激情も、冷たい独占欲も、まるで悪い夢だったかのように。
トレ「……ああ。少しな」
アイ「そう。でも、今日は昨日みたいなミスはしないでね。貴方の視線は、わたしだけを追っていればいいんだから」
彼女はそう言うと、彼の胸元のネクタイを指先で軽く整えた。昨夜と同じ、逃がさないと告げるような、微かな接触。
アイ「行きましょう。世界に見せつけてあげる。わたしがトレーナーと、どこまで行けるのかを」
歩き出す彼女の背中は、いつも通り凛としていて、誰よりも美しい。
けれど、その影が自分を包み込むように長く伸びていることに、トレーナーは気づいていた。
もう、逃げ道はなかった。
最強の彼女が定めた"ゴール"は、もはやレースだけではないのだから。
その日、トレーナーのストップウォッチが刻むタイムは、一度たりとも狂いはなく、完璧な数値を刻み続けた。
終わり
ララT、ラヴズT、グランT、クロノT「おいアイT、一緒にキャバクラ行こうぜー」 アイT「うん!」 ???「「「「「…」」」」」 この後どうなりましたか?