国連安保理が緊急会合 「ベネズエラの次」恐れる加盟国から批判相次ぐ
【ニューヨーク=吉田圭織】国連の安全保障理事会は5日、米国のベネズエラ攻撃を巡って緊急会合を開いた。米国はベネズエラに対する軍事作戦や同国のマドゥロ大統領を拘束したことを正当化した。一方、米国が介入を示唆する加盟国からは国際法や国連憲章への違反だとする批判の声が相次いだ。
米国大使は軍事攻撃を正当化
国連のディカルロ事務次長はグテレス事務総長の声明を読み上げ「 (米国による)1月3日の軍事行動に関して、国際法が尊重されなかったことを深く懸念している」と述べた。
米国のウォルツ国連大使は「トランプ米大統領は外交の機会を提供し、緊張緩和を試みた。だがマドゥロ氏はそれらを拒否した」と自国の行動を正当化した。そのうえで「マドゥロ氏は単なる起訴された麻薬密売人ではない。彼は非合法な大統領であり、国家元首ではなかった」と述べた。
ベネズエラのモンカダ国連大使は「1月3日の出来事は国連憲章に対する米国政府の明白な違反だ」と非難した。「国家元首の拉致や主権国家への爆撃が容認されるのであれば、武力こそが国際関係の真の仲裁者であるという(誤った)メッセージを世界に送る」とも警告した。
コロンビアやデンマーク、イランが反発
緊急会合では「ベネズエラの次」を懸念する加盟国から批判の声が目立った。トランプ氏は複数の国や地域に不満を表明しており、一部は領土獲得への意欲を示している。
コロンビアのザラバタ国連大使は「(米国の行動は)ベネズエラの主権や政治的独立、領土保全の明白な侵害であり、武力行使を正当化する根拠は存在しない」と批判した。そのうえで「常任理事国である国が国際法を無視するのであれば、この理事会は何の役割を持つのだろうか」とも問いかけた。
トランプ氏は麻薬対策が不十分だとして、コロンビアにも軍事行動を取ると威嚇している。
グリーンランドを領有するデンマークのマルクス・ラッセン国連大使は「危険な前例となる。国際法や国連憲章は全ての加盟国が尊重すべきだ」と非難した。トランプ氏はグリーンランドを「国家安全保障の観点から(米国領として)必要だ」と述べている。
イランでは政府に対して抗議デモが続いており、トランプ氏が介入を示唆している。イランのイラバニ国連大使は「米国の違法行為は国家テロリズムであり、国連憲章への明白な違反だ」と強く批判した。
中米パナマのアルファロ国連大使は「ベネズエラ国民の意思が無視されたまま状況だけが進んでいる」との見方を示した。国連憲章の原則である主権国家への不干渉や領土保全の尊重、武力行使の禁止を順守すべきだと強調した。トランプ氏は「中国の影響下にあるパナマ運河を取り戻す」と主張している。
中ロも批判、英国は直接非難避ける
常任理事国では中ロが激しい非難を浴びせた。ロシアのネベンジャ国連大使はマドゥロ氏と妻の即時解放を要求した。中国の孫磊国連次席大使は「米国は安保理の常任理事国でありながらも、国際社会の深刻な懸念を無視し、ベネズエラの主権や安全保障、正当な権利を恣意的に踏みにじった」と批判した。
フランスのダルマディカリ国連次席大使は「(米国の)軍事作戦は紛争の平和的解決や武力行使の禁止の原則に反するものだ」と批判した。
一方、英国のカリウキ国連臨時代理大使は「ベネズエラ国民の意思を反映した正当な政府への安全かつ平和的な移行を望んでいる」と述べるにとどめた。2024年のベネズエラ大統領選の不正などを挙げ、米国への直接非難は避けた。
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(更新)- 詫摩佳代慶應義塾大学法学部教授分析・考察
2022年2月、ロシアのウクライナ侵攻後に開催された国連安保理では、ロシアが拒否権を行使し、非難決議案は採択されませんでした。しかしその直後に国連総会の緊急会合が開催され、賛成多数でロシアに対する非難決議が採択されました。つまり、ロシアに対しては、国連として曲がりなりにも非難のメッセージを突きつけることができました。他方、今回は米国の友好国が米国への表立った非難を避けており、国際社会としてまとまったメッセージすら出せていない状況です。ロシアの時以上に、法の支配をめぐる状況は深刻であると感じます。
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