Pにプロデュースされる予知夢を見たアイドルたち【下】
【概要】
プロデューサーにスカウトされ、一生を添い遂げる予知夢を見たアイドルたちがグイグイ迫ってくる話【下】
【余談】
【上】【中】必読です。じゃないとラスボス系お姉ちゃんに捻り潰されてしまいます。
マジで更新遅くなってすみませんでした。私生活が多忙すぎて◯んでおりました。やっと書けてすごく嬉しい。
この三部構成SSは構想なしの見切り発車だったのですが、書きながらずっと着地点に悩んでました。危うく失踪しかけましたが、何とかこんな形でお許しいただけると幸いです。どうして世界はこんなにもPを苦しめるのか(困惑)
次回からはいつもの単発になると思います。というか美鈴書きたいので多分美鈴です。
【妹にしたいアイドルランキング】
※独断・偏見厳重注意※
5位:姫崎莉波
ユニット時代は妹キャラをしていたそうですね。ライブも大成功でしたし、寿司にでも行きましょうか──コミュで食い意地張ってる無邪気な描写とかを見るに、あながち前プロデューサーの審美眼も間違ってないよなぁと思います。
4位:花海佑芽
妹です。ただし我々の妹ではなく。一緒にいると疲れそうだけど、可愛げがあって、面倒を見てあげたくなる素質がありますよね。あ、感謝のマッサージだけは遠慮させてくださいだだだだだだだ(断末魔)
3位:真城優
アイドルではないです。でもこの子に「◯◯にぃ(ねぇ)」って呼ばれたいです。表面上はお互いドライだけど、本当は“自分だけの兄(姉)・妹”って思ってると美味しい。帰宅したら勝手にベッドで寛いでる光景まで見えました。
2位:月村手毬
兄(姉)に対しても拗らせてそうですよね。それとも「ママぁ…」みたいに甘えてくるのかな。ブラ(シス)コンとかではなく、素で「それって、私のお兄(姉)ちゃんがクールすぎるってこと?」とか言ってくださまりちゃんの母親はわたしです許しませんよ藤田ことね。
1位:十王星南
「お兄(姉)様」属性でしょ絶対。会長自身がお姉様として慕われつつ、年の離れた兄姉にベッタリしてると最高です。おそらく溺愛されてると思います。なので誕生日には等身大の星南チョコをプレゼントします。え? 気持ち悪い? 失礼だな、姉妹愛だよ。
【追記】
2025/3/16の[小説]男性に人気ランキング81位に入賞していたらしいです。
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初星学園、放課後──
(さぁ──どうする)
(眼前には臨戦態勢の姫崎さん。“勝負する”とは言ったが、真っ向勝負では勝ち目はないだろう。逃走の隙もなさそうだ)
(俺の、勝利条件は──)
「俺が勝ったら。今後、俺の許可なく接近することは禁止します」
「……ふぅん。私が勝ったら?」
「──プロデュースでも“お話”でも、どうぞお好きに」
(──姫崎さんの口角が上がった……!)
(いや、怯むな。この勝負に乗ってくれるなら、俺が確実に勝てる……!)
「それで、プロデューサーくん。勝負って?」
「はい。簡潔に言えば──どちらがお互いの好きなところを多く言えるか、これを競う勝負です」
「……へ?」
(──新米とはいえ、俺はプロデューサーだ。アイドルの魅力を網羅し、それを輝かせるのが仕事。生徒情報に留まらず、幼馴染としての姫崎さんまで熟知しているこの勝負──)
「絶対に、俺が勝ちます」
「……うぅん。私が、どんなに君のことが好きか──心にも、身体にも、いっぱい教えてあげるね」
「えぇ。姫崎莉波がいかに素晴らしいアイドルなのか、俺が自覚させてみせます」
◇◆◇
「──俺は、自由だ」
(あと一歩で、押し切られる寸前だったが──それでも、勝利した。これで、目下最大の悩みも消えた)
「……長い一日だったな」
(濃密すぎて記憶を疑いたくなるが、未だ学園の門をくぐって一日半も経っていない。まぁ悲観せずとも、今は花海姉妹と元SyngUp!メンバー2名と倉本グループから逃げれば良いだけだ。簡単じゃないか。どうということはない)
(明日、何事もなかったかのように麻央さんと契約して、篠澤さんのお見舞いに行き、悠々とプロデューサーライフを始めるだけ。こうして結果だけ見れば、スカウトは大成功と言っていいだろう)
「ん──もう夕方か」
(ぶらりと、グラウンドまで来てしまった。折角だし、気晴らしに散歩でもしようか)
「部活動と……いや、あっちはアイドル科か。初日から自主練とは……精が出るな」
(それだけ熱意がある、ということなのだろう。その姿勢は尊敬に値する。が──)
「……かなり、無理をしているな」
(グラウンドの反対側。二人でランニングしているようだが、一人は体力の限界に見える。片や、体幹の良さに反して不自然に一歩が小さい……)
(倒れたり怪我をしたりする前に、止めるべきだろう)
「……二人も保健室に連れていくのは難しいしな」
(というより、今保健室に向かうと「会いに来てくれたの?」などと言われかねない。全力で回避しよう)
「──えっ!? リーリヤ、疲れてるっしょ!? もうやめときなってば!」
「っ……うぅん。清夏ちゃんが、頑張ってるから……わたしも、負けられない」
「あたしは……ほら、ずっと運動してたし! リーリヤは、無理せずゆっくり体作りした方がいいよ!」
「──それじゃ、間に合わない。わたしは、早く清夏ちゃんと同じステージに立ちたいから」
「……リーリヤ」
「──お二人とも、今は休憩するべきですよ」
「「……え」」
(……なんだ?)
(立ち止まったところに声を掛けただけなのに……何故か、二人とも硬直している。もしや、俺の顔に何かついているのだろうか)
「そんな状態で走っても、体を壊すだけです。練習熱心なのは良いことですが、それでは本末転倒ですから──こちらをどうぞ」
「あ、えと……ありがとう、ございマス」
(見たところ、休憩もロクに取っていない。疲労くらいは自覚しているだろうに、何が彼女たちをそこまで……?)
「体調管理もアイドルの仕事の一つです。水分補給は必ず──」
「あ、あの! どうして、ここまでしてくださるんですか……?」
「……応援したくなっただけです。アイドルが夢を叶えるのを支えるのが、プロデューサーの仕事ですから」
「……っ!」
(担当でもないアイドルにとっては、余計なお世話かもしれないが。それでも、見過ごすことはできないな)
「──Pっち」
「はい?」
「……清夏ちゃん?」
「え? あっ──な、何でもないです! それより、コレ、ありがとうございました! リーリヤも、あたしが休んでって言っても休憩してくれなくて──」
「紫雲清夏さん。葛城リーリヤさん。でしたね」
「────」
「何か、俺に言いたいことがあるんですね? ……いえ、俺の勘違いであれば、それでいいのですが」
(俺を見てから、明らかに目の色が変わった。さらに、二人がお互いの様子を気に懸けているのも気になる)
「勘違いじゃ、ないです。……プロデューサーさんに、お願いがあって」
「はい」
「──リーリヤを、プロデュースしてください」
「──清夏ちゃん!?」
「……葛城さん。紫雲さんは、こう言っていますが」
「ね。リーリヤ……?」
「っ──嫌、です」
「……っ!」
「……理由を、お伺いしても?」
「はい。わたしは──清夏ちゃんと一緒じゃないと、嫌なんです」
「……ぇ」
(──真っ直ぐな、眼をしている)
「わたし、約束したんです。一緒に、憧れのアイドルになるって──清夏ちゃんと」
「……俺に、その手伝いを頼みたいと」
「はい。センパイにしか、頼めません」
「──とのことですが。紫雲さん?」
「……あたし、は」
「清夏ちゃん。わたしも“見た”よ」
「……っ!?」
「わたしは、諦めたくない。清夏ちゃんが思ってるよりも、ずっと──わたしは、清夏ちゃんが好き」
「……でも! あたしが選ばれたら、リーリヤは──」
「だから、二人で、だよ。無理なんかじゃない。わたしは──センパイを、信じてる」
「リーリヤ……うん……!」
「話は決まったようですね」
(よし)
(──これで、事態が理解できずに取り残されているのは俺だけだ。シリアスでハートフルな空気に全く口出しできなかった)
(信じられて悪い気はしないが、如何せん初対面だ。もう慣れたので驚かないが、やはり俺の知らないところでもう一人の俺が何かをしでかしているに違いない)
「……Pっち」
「センパイ」
“私たちを、プロデュースしてください”
「……少し、待ってください」
「え」
「せ、センパイ!?」
(微塵も断られる可能性を考慮していない二対の瞳は何とも魅力的であり、ぜひ前向きに検討したいところではあるが──)
(まだ正式契約をしていないとはいえ、流石に麻央さんに無断で頷くわけにもいかない。複数のアイドルの掛け持ちを譲歩してくれるのかも、聞いてみないことには不明だ)
(──なお、複数のアイドルを担当することによる俺の負担は考慮しないものとして)
「紫雲さん。葛城さん」
「ぴ、Pっち! あたしのこと──清夏さん、って……呼んで、ほしいな……」
「清夏ちゃん!? え、えっと……! じゃあ、わたしも、リーリヤさんって、呼んでください!」
「は、はぁ……では、清夏さん。リーリヤさん」
(というか、そもそも“Pっち”呼びも“センパイ”呼びも許可はしていないのだが)
(……まぁ、いいか)
「俺に、プロデューサーとしての経験は皆無です。ですから、的確な手助けができるかはわかりません。それでも……俺に、任せていただけるんですか?」
「はい! わたしも、できるだけセンパイを支えてみせます! 清夏ちゃんも、そうだよね!」
「うん! ……あたしと、一緒に強くなろーね! Pっち!」
「……わかりました。お二人の期待に、必ず応えてみせます」
(こんなにトントン拍子で承諾していいのか、思うところがないでもないが──)
(こんなにも魅力的な“一番星の原石”が、俺を信じてくれている。信頼の出処が不明なことは気掛かりだが、追々仔細を尋ねるとしよう)
「では、詳しい話はまた明日以降に。改めてスカウトさせていただきます。紫雲さ──」
「Pっち!」
「……失礼しました。清夏さん、リーリヤさん」
「はい! わたし、頑張ります! センパイ!」
(──いい、笑顔だな)
◇◆◇
「……参ったな」
(──何かが、おかしい。何度も地図を確認しているのに、一向に同じ場所から抜け出せない……)
(一刻も早く帰宅して、体と頭を休めたいところなのだが……焦っても仕方ないか)
(丁度広場に出たわけだし、一度休憩しよう)
「あのぅ……大丈夫ですか?」
「えっ?」
「顔色、悪いですよ? よかったら、保健室に──」
「それだけは遠慮させてください」
「へ? ……はぁ」
(……声を掛けられるほど暗い顔をしていたらしい)
(俺に地獄行きの片道切符を押し売りしようとしてきた相手は……アイドル科の生徒らしく、とても整った容姿をしている──が)
「お気遣いは嬉しいのですが。休むべきはそちらかと思いますよ。藤田ことねさん」
「はい──って、え? な、なんで、あたしのこと……!?」
「アイドル科の生徒の情報は全て把握していますので。失礼ですが、かなり疲労が溜まっているのではないですか?」
「や、これはその──……はぁ。そっちから、来ちゃうんですね。プロデューサー」
「はい?」
「あ、こっちの話です! ……じゃあ、エット。プロデューサー。ちょっと、話聞いてもらってもいいです?」
「……俺で良ければ」
(……彼女は、中等部から鳴かず飛ばずのアイドルだった。それでも諦めず、高等部への進学を選んだのは、何か事情があるのかもしれない)
(今、その話を持ち掛けられているのだろう)
「立ち話もなんですし、座りましょうか。ところで、藤田さんはどうしてここに?」
(放課後の広場となれば、自主練にも直帰にも無縁な場所だろう。事実、周囲には友人と雑談している生徒やスカウト目的であろうプロデューサーしか見当たらない)
「いつもならバイトしてる時間なんですケド……今日は、お店の方が都合悪くなっちゃって。あたし、いっつもバイト三昧でして。するコトないナーって思ってたら──」
「俺が通りかかった、と」
「ですです。ホントは……レッスンとか、したいんですケド」
「……なるほど。それで、藤田さんはアイドルになりたいんですね」
「まぁ、はい──って、アレ? あたし、まだ全然説明してないですよね?」
「いいえ。そして、俺はあなたを誤解していたようです」
(ここまで弱ってしまうほどに過密なスケジュール。そうして稼いだ金額の割に、さほど豪勢をしているようにも見えない。慢性的に資金難であり、次第に首が回らなくなってアイドルとしても燻っている──)
(それでも、熱意を失っていない。確かに疲労は目につくが、それを打ち消して余りある愛嬌、さらには身体の筋も良さそうだ。きっと──いや、確実に。磨けば、相当に化ける)
「藤田ことねさん。あなたには、アイドルの才能があります」
「え」
「あなたが窮屈な環境で燻っているのは、とても見過ごせません。あなたが羽ばたくところを、俺は見てみたい」
「ちょ、ちょっと待ってください! プロデューサー、それって──」
「えぇ、スカウトです。もちろん、藤田さんさえ良ければ、の話ですが──藤田さん?」
(──何だ、この絶妙な表情は)
(確実に頷いてもらえる、などと傲慢に考えていたわけではないが。その場合でも、拒絶なり驚愕なり、ともかくこんな表情にはならないだろう)
「あ、イヤぁ……人生初スカウトを、一日に二回受けるとは思わなくて、ですね?」
「……既に、契約してしまったと」
(──盲点だった。何も、倍率が高いのは学年首席だけではない。藤田さんは成績こそ散々だが、中にはその魅力を見抜くプロデューサーもいるだろう)
(先を越されてしまうとは、何たる不覚……!)
「や、断ったんですケド」
「はい?」
「なんか、急に“私のモノになりなさい!”って言われて……嬉しかったんですケド。驚きが、勝っちゃいまして」
「……随分と、大胆なスカウトを受けましたね」
(状況によっては普通に犯罪認定されかねない。それも唐突にとなれば、藤田さんが逃走するのもやむなしだろう)
「──でも、プロデューサーのことは信頼できそうです」
「それは……スカウトの承諾、と受け取っても? 俺は、特に何かをしたわけではありませんが」
「そうでもないですよ? ちゃんと、あたしを理解してくれる人がいるんだって、わかりましたから! それに──」
「……それに?」
「……えと。プロデューサーには、これから特別なコト、いっぱいしてもらうので!」
「……はぁ」
(少々、腑に落ちないものの。ともかく、スカウトは成功らしい。というより、ここまで成功率100%なのも地味に凄いのではないだろうか)
(何か、俺から敏腕プロデューサーっぽい雰囲気を感じ取っているのかも──)
「──その契約、ちょっと待ちなさい!」
「で、出たぁ!?」
「見つけたわ! ここにいたのね、ことね!」
「……藤田さん、お知り合いですか?」
(やけに演技がかった仕草で、さながら結婚式の闖入者ばりに花嫁を奪取しに来たらしい。もしかしなくとも、藤田さんの初めてを奪ったというプロデューサーだろう)
(──いや、プロデューサーというか)
「……一番星が、藤田さんに何のご用で」
「それはもちろん──ことね! 私のモノになりなさい!」
(これは──失敗して至極当然なスカウトだな)
◇◆◇
「や、そのぉ……すご〜く、言いづらいんですケドぉ」
「恥ずかしがることはないわ! さぁ、私の手を取りなさい、ことね!」
「エット……もう、契約しちゃいまして」
「──は?」
(途端、一番星──生徒会長、十王星南の目つきが険しくなる。焦燥やら困惑やらを隠そうともせずに、駆け寄ってきた)
「教えなさい、ことね。一体、どこの誰に誑かされたのかしら? まさか、貴女が私以外のプロデューサーと結ばれるなんて──そんなこと、あってはならないもの」
「重っ!? じ、十王会長? すっごい、見られてるんですケドぉ……!」
「あら。それは素晴らしいことね。私のことねの魅力に、皆もようやく気がついたということよ」
「あ、あはは……そう、なんですかねぇ……?」
(「ゼッタイ違うだろぉ!」との声が隣から聞こえた。幻聴だろうか。俺も疲れているようだ)
(……それはそれとして、周囲は星南会長の誘いを蹴った藤田さんに冷たい視線を浴びせている。流石に、俺が助け舟を出すべきだろう)
「それで、どうかしら。ことね。私の愛を断ってまで、誰の誘いを受けたというの?」
「そ、それはぁ……っ、もうムリ! 助けてくださいプロデューサーっ!」
「──あら。先輩、いたのね」
「初めからここに座っていましたが……?」
(どれだけ藤田さんに心酔しているのか、軽く恐怖を覚えてしまった)
「ともかく、十王さん」
「──先輩? どうしてそんなに余所余所しいのかしら。私のことは星南さん、と呼んでくれていたじゃない」
「はい?」
「ちょっ!? どういうことですか、プロデューサー!」
「い、いえ。俺にもわかりません。えぇと、星南さん?」
「えぇ、それでいいわ。……でも、先輩? いくら先輩でも、ことねを盗るのはダメよ」
「それは……違います。藤田さんは、藤田さんの意思で俺を選んでくださったはずです」
「……強引に、言い寄ったわけではないと。そうなのかしら、ことね?」
「は、はい! プロデューサーはちゃんとあたしのこと、わかってくれて──」
(まるで、ちゃんとわかってくれない人がいるかのような言い方だな……?)
「そう。……やはり、こうなってしまうのね」
「星南さん」
「わかっているわ、先輩。先輩が……ことねを、幸せにしてあげるのよ」
「かかか会長!? あ、あたし、まだそんなんじゃ──」
「フフ……恥ずかしがらなくていいのよ、ことね。大好きな私をフってまで選んだプロデューサーに──」
「わあああぁぁぁっ!! お願いなんで黙っててくださぁい!」
「……だ、そうよ。先輩に、我慢できるかしら?」
「いえ。そもそも、担当アイドルとプロデューサーの関係ですから」
「っ──そーですよ、会長!」
「あら、つれないわね」
(……なんというか、食えない人だ。時折、俺への態度にも違和感を感じるし──)
「──あぁ。私としたことが、大切なことを忘れていたわ」
「何ですか?」
「大したことではないのだけれど……この契約書に、サインしてほしいのよ」
「……何の冗談ですか?」
(手渡されたのは婚姻届であり、何故か夫の欄に十王星南と記名されている)
「──ごめんなさい、これはことね用だったわね」
「えっ」
「先輩にサインしてほしいのは──こっちよ」
「……あの、星南さん。俺にはあなたをスカウトした記憶がないのですが」
(どうして、ナチュラルに俺が担当することになっているんだ……?)
「──先輩も、ひどいことを言うのね。私だって傷つくのよ?」
「そう言われましても、身に覚えが……」
「……仕方ないわね。先輩がどれだけ熱烈に私を口説いたのか、思い出させてあげるわ」
「──ちょっと待ってください! 会長!」
「ことね?」
「プロデューサーは、あたしがいいって言ってくれたんです。会長の言う先輩っていうの……やめてください。プロデューサーは、あたしのプロデューサーです」
「……そう。それは、私はプロデューサーに手を出すな、ということね」
「はい」
「──それはダメよ。いくらことねでも、先輩は譲れないわ」
(さっきから、異様に独占欲が強いな。というか、この展開は、もしかしなくとも──)
「星南先輩。どっちがプロデューサーを想っているか、勝負しませんか?」
「えぇ。受けて立つわ! ことね!」
(花海家の姉妹喧嘩の再来か──!)
◇◆◇
「……何だこれは」
(突然、藤田さんと星南さんの所有物争いが始まったかと思えば──)
(生徒会長の奇行が騒ぎになって、あっという間に人混みができてしまった……! 包囲されて、逃げることすらできないぞ……!?)
(しかも、極めつけは──)
「──ようやく見つけたわよプロデューサー! さぁ、早くわたしを選びなさい!」
「プロデューサーさんっ! お姉ちゃんじゃなくて、あたしを選んでくれますよねっ!」
「プロデューサー! わ、私というものがありながら、浮気するなんて──どういうつもりなんですか!?」
「まぁ……ふふ。まりちゃんも、プロデューサーが大好きなんですね」
「先生! わたくし、やっぱり諦めきれませんわ〜!」
「ふ、ふふ……ライバルが、こんなに。助けて、プロデューサー」
「あっ……いた! Pっち! あたし──信じてるからね!」
「センパイ……! わたし、センパイと一緒なら……頑張れる、気がするんです……!」
「め、めっちゃ集まってきた!? プロデューサー! あたしが一番可愛いですよね!?」
「……先輩、意外にプレイボーイなのね。いいわ。私こそが先輩の一番星だと、思い知らせてあげる!」
(何故ここで集大成を発揮してしまうんだ……! こんなに大勢、そう都合よく通りかかるなんて有り得ない。特に、篠澤さん……!)
(幸いにして、姫崎さんは見当たらないが──)
「──で、電話? こんなときに……!」
『もしもし、プロデューサーくん?』
「ひ、姫崎さん!? どうしたんですか!」
『確かに、私は君に近づけないけど──電話なら問題ないよね。プロデューサー君は、ちゃんと私のところに帰ってくるんだよ? じゃあ、それだけだから!』
「ちょっ、何を──」
(切られてしまった──昔はあんなに傍若無人な人じゃなかったぞ……! 何が、彼女をあんな風に──)
「くっ……! 助けてください麻央さ──」
「プロデューサー、お困りですか? ボクにできることであれば、何でも頼んでくださいね」
(ど、どこから現れたんだ……!? 白馬の嘶きどころか、音もなく背後に立っていたんだが──)
「た、助かります……! 彼女たちは全員、俺に担当してもらいたいようでして……でも、俺には選べません!」
(中にはこちらからスカウトしたアイドルもいるとは言え、この惨状を見るにどちらにせよ迫られていたことだろう)
「なるほど……うん、そうですね。では、プロデューサー。ボクはどうですか? プロデューサーが……こんなにアイドルを誑かす浮気性の人でも──ボクは、許してあげますよ」
「ま、麻央さん? ……怒っていますか?」
「まさか。ただ──最後に隣にいるのはボクですし、プロデューサーのこと、もう逃がしませんよ?」
「は、はは……そう、ですね」
(詰んでいる、のか。昼間の誘拐未遂事件が、もはや遥か昔の出来事に感じるが──この距離では、麻央さんから逃げられない)
(かくなる上は、いっそのこと倉本グループにでも匿ってもらった方が──?)
「あ! 麻央先輩! 抜け駆けしないでくださぁい!」
「っ……離れなよ。プロデューサーは、わわ私の、モノだから……!」
「えぇそうよ! プロデューサーは、わたしの専属になりたいに決まってるでしょう!?」
「え、えっと……センパイは、わたしと清夏ちゃんが輝くステージを見たいって、言ってました……!」
「うん、だよねリーリヤ! Pっちも、迷う理由とかないっしょ!」
「ふっふっふ──どうですの、先生! わたくしなら、先生のお望み、全て叶えられますわ!」
「あ゛〜っ! ずるいよ千奈ちゃん! プロデューサーさんは、あたしとトップアイドルを目指すんですよねっ!!」
「……プロデューサー、困ってる。ふふ、ままならない、ね」
「はい、本当に。どうでしょう、プロデューサー? わたしは、貴方とならまりちゃんを共有してもいいと思っています」
「全く──ことね以外、聞くに堪えないわね。いいかしら。私は、先輩と一生を共にする未来を見たのよ。ならば、先輩は私を選んで当然ではないかしら?」
(鶴の一声のように、星南さんの発言で場が静まり返る)
(──というか、やはり星南さんも夢を見ていたのか)
「──会長、それは聞き捨てなりません。ボクだって、プロデューサーと……その、結婚、とか……するんですから……!」
「えっ?」
(──担当がどうこう、とは次元が違う単語が出てきたぞ)
「麻央っち先輩! あ、あたしたちも、Pっちと結婚して、それでっ……こ、子どもも、つくって……!」
「わたし、センパイと幸せな家庭を、築きたいんです……!」
「あ、アイドルのプロデュースという話では!?」
(このままでは、誰を選ぶか、というより──)
「プロデューサーは、あたしと結婚してくれますよね……? えっと、もうチビどもにも、兄貴ができるぞーって、言っちゃってて……」
「何言ってるのよ! プロデューサーはわたしにプロポーズするんでしょう!? わたしならトップアイドルを目指しながら花嫁修業だってできるわ!」
「っ……ぷ、プロデューサー! 私を、もらってくれる物好きなんて、プロデューサーしかいないから……! だ、だから、その──」
「心配いりませんよ、まりちゃん。まりちゃんは必ず、わたしとプロデューサーが幸せに養ってあげます」
「先生! ぜひ、倉本家に婿入りするべきですわ! 先生なら跡継ぎも任せられると、お祖父様も仰っておりましたの!」
「ううん。プロデューサーは、わたしが好き。それに、わたしならアイドルとして失敗しても、学者としてプロデューサーを養ってあげられる、よ?」
「プロデューサーさんっ! あたしと結婚したら〜、え〜っと……毎日マッサージし放題? お、お姉ちゃんに料理を教えてもらってきます!」
「俺はまだ結婚するつもりはありません!」
(誰も選べない、という振り出し──いや、もっと悪化している……!)
「──そう。あなたたちも、夢を見たというわけね。なら、これ以上言い争っても意味はない」
「せ、星南さん? まさか、戦って決着を……?」
「いいえ。代わりに、提案があるのだけれど」
(──何だ?)
(この、久しく感じていなかった強烈な“嫌な予感”は──)
「私たち全員で、プロデューサーを共有する──というのは、どうかしら?」
「────」
(そんな、倫理に反したことが──まさか)
「……その方が、良いかもしれませんね。ボクたちが争うのは、きっとプロデューサーも望まないでしょうから」
(今、それ以上に望まないことが可決されかけているんですが)
「……仕方ないわね。わたしは賛成よ」
「お姉ちゃんと勝負できないのは残念だけど……じゃあ、あたしも賛成します!!」
「ま、会長には勝ち目薄いし──あたしも賛成でーす!」
「わたしも、賛成。ふふ。幸せ者だね、プロデューサー」
(俺の意思が介在しない幸せなんて、そんな──そんな、ことが……?)
「わたしは……清夏ちゃんと、センパイと一緒なら。賛成、します……!」
「リーリヤに同じく。でも、ちゃんと構ってくれないと寂しいからね?」
「わたくしも賛成ですわ! 先生も皆様も、ぜひ倉本の屋敷でお過ごしになってくださいませ!」
「ふっ……よかったね、プロデューサー。私と結婚できるなんて、光栄なことだよ」
「あら。まりちゃん、勝ちを確信するにはまだ早いですよ? わたしが最初に、プロデューサーの子どもを──」
「おーい、プロデューサー君〜!! わたしが〜!! 手取り足取り〜!! 教えてあげるね〜!!」
(どう考えても大声で叫ぶ内容じゃない……! 接近禁止の意味もないじゃないか……!?)
(──いや、もう今はそれどころではなさすぎる。どうにか……! 本当にどうにかして、事態の収集を図らねば──)
(俺は──終わる!!)
「皆さん、まずは落ち着いてください。俺にまだ結婚するつもりは──」
「──話は決まったようね」
「はい? い、いや、俺はまだ……!」
「先輩も、異存はないわね。なら、こちらの契約書にサインを」
「いえ、俺には異存が──何で婚姻届を持ち歩いているんですか!?」
「あら。そちらはちゃんと先輩用のはずよ?」
「いえ、そういう問題では──ぁ」
(皆さん、どうして獲物を見るような目を──?)
“プロデューサー”
「……な、何でしょう……?」
“わたしを、プロデュースして──”
「は、はい」
“そして”
「え」
“──結婚して、一生隣にいてください!”
「…………ハイ」
──(Pは)終わり
とっても好きな展開でした!それぞれの口調など丁寧に描かれていて、どのキャラかすぐにわかるも良かったです!