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プロデューサーが昔アイドルだった世界/Novel by 草薙

プロデューサーが昔アイドルだった世界

4,630 character(s)9 mins

久々に少し長めの二次創作です!最近円香の湿度の高さが好きで描いてしまいました。もっと鮮明に描けるよう頑張ります!

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「ふぅ……」

今日は一日ノクチルで仕事があり、少し前に透達と解散したあとプロデューサーに用があった私は事務所へと足を運んでいた。
まぁCHAINでも良かったんだけどどうせ帰り道通るついでだし。
「あれ〜樋口さん?お仕事お疲れ様です〜どうかしたんですか?」
と事務所に入ると声をかけてきたのははづきさんだった。
「ありがとうございます、プロデューサーいますか」
パッと事務所を見る限り彼の姿は見当たらない。どこかに出ているのだろうか。
「プロデューサーさんですか〜たぶんレッスン室にいるんじゃないですかね」
レッスン室?この時間に誰か使っているのだろうか。こんな遅い時間までやるなんてすごく熱心____
そこで私もWING前この時間まで練習していたことを思い出した。隠れてやっていたのに全部彼にはバレていて。本当、そういうところが嫌い。
「ありがとうございます、行ってみます」

そうしてレッスン室の前へと来たのだが、なにやら中で話し声が聞こえる。話しているのは彼と……最近新しく来たダンストレーナー?
数日前に一度だけ顔を合わせた程度だが、確か彼の昔の知り合いだとかなんとか。盗み聞きなんて趣味が悪いことは分かっているが、一体何を話して……

「どうですかうちの子達は」
「みんな優秀ですよ。流石にあなたに見てもらっているだけのことはあります」
「はは、やめてくれ。俺は何もしちゃいないさ。全部彼女達の努力の賜物だよ」
「相変わらず謙虚ですね。でもまさかあなたがプロデューサーになるなんて驚きましたよ」
「俺もだよ。結局この業界が好きだったのかもしれないな」

この業界?プロデューサーになる前似たような仕事をしていたのだろうか。いやでも転職してるにしてはかなり若いような。

「せっかくレッスン室にいるんですからどうですか、久々に」
「勘弁してくれ、もう昔のようには踊れないさ。何なら教えてほしいくらいだ」
「何言ってるんですか。僕より上手かったでしょう」
「昔の話さ。こういうのは継続が大事だからな。っとと、もうこんな時間か。閉めておくから先に出てくれ」
「ええ、ではお先に」

あ、まずい。そう気づいた頃には遅くて。レッスン室から出てきたトレーナーと目が合ってしまった。
「あれ……樋口円香さん?どうしてこんな時間に?」
「………少しプロデューサーに用があったもので」
「ああ、なるほど。……ところで今の話聞いてた?」
「…………」
何も聞いていないと言えたら良かったのだが、この状況で誤魔化しても無駄だと思ってしまって無言で返すことしか出来なかった。
「気になるかい?昔のプロデューサーさんのこと」
「……別に。私には関係のないことですから」
正直言えば気にならないわけがない。踊るという言葉も聞こえてきたし、彼はいったい……
そんな私を見透かしたかのようにトレーナーは鞄を漁り、
「お、あった。はいこれ。一応渡しておくよ」
「これは……?」
「彼の昔の映像さ。せっかくだから持ってきたんだ。別に返す必要はないから、まぁ他の子と見るなり自由にしてくれ。それじゃあ僕は行くよ」
「……ありがとうございます」
そうして手をヒラヒラと振って去っていった。
とりあえず私は渡されたものを鞄へとしまった。

「あれ、円香?どうしたんだ?今日は外で仕事だったよな?」
トレーナーは気づいたというのにこの人は気づく様子は0。ミスター・鈍感。
「たまたま帰りの通り道だったので一応色々報告しておこうかと」
「ははっ、そうか。俺の元にも連絡届いたよ。大活躍だったみたいじゃないか」
「別に。私は言われたことを普通にやっただけです」
「自分に厳しいな円香は。ちょうど俺も帰るし送ってくよ。車の中で色々話そう」

それから車に乗り仕事の話をしているけれど、やはり私の頭の中にはさっきのことが気になる自分がいた。
「……そういえばあなたはこの業界に来てどのくらいなんですか?」
「急な質問だな。うーん……まぁ2〜3年くらいじゃないか?円香を見つけた時はまだまだ新人だったけど、今思うと見る目があったと思うよ」
この人はすぐこういうことを……それはいいとしてやっぱり誤魔化された。でもプロデューサー歴が2〜3年ということはおそらく彼が10代の頃にこの業界にいたことがあるということ?だとすると一度彼が去ったのは……
結局考えがまとまる前に彼は私を家まで送り届けて帰っていった。

自室へと腰を落ち着けた私は鞄の中から先ほど渡されたものを取り出す。いつもであればすぐに寝支度を済ませて寝るところだが、やはり気にならないわけがなかった。
透達と見る_____という選択肢もあったが、絶対ややこしいことになるし別に私は彼に迷惑をかけたいわけではない。
そんなこんなで私はテレビをつけ映像を再生する。
彼の昔の映像……一体どんなものが……


〜次の日〜
「おっ、円香おはよう!今日はやけに早いな」
「………おはようございます」
「どうした?元気なさそうだけど何かあったのか?」
「いえ別に。これから練習ですので失礼します」
そう言うと足早に立ち去ってしまった。
「俺何かしたかな……?」

「おっ早いね円香さん。もしかして昨日のもう見たのかな?」
「……彼はいったい何者なんですか」
渡された映像は衝撃のものだった。今から5、6年ほど前と思われる彼がステージの上で歌って踊っていた。そう、まるでアイドルのように。
「あの人は昔業界じゃそこそこ有名なアイドルだったんだ。ビジュアルはまぁ、アイドルの中じゃそこそこ止まりといった感じだが、あいつは表現力の高さが半端じゃなかった」
実際、目を惹かれた。歌が上手い、ダンスが上手いというより、それらは一つとなって綺麗な一体感を生み出しているようなそんな雰囲気があった。
「僕もね、彼に魅入った1人なのさ。彼のステージを見て僕もこうなりたいと思って必死に努力したもんだ」
「……そうですか」
実際、彼のプロデューサーとしての側面しか私は知らない。おそらく私だけじゃない。彼は自分のことを語ろうとはしないし、聞こうとしても上手く躱されてしまう。私たちにはプライベートな面まで心配するくせに。本当、ずるい人。
「これ、お返しします」
「僕の分は別にあるし、返さなくてもいいよ?」
「いえ、一度見れば十分です。ありがとうございました」
「まぁ円香さんがそういうならいいけど」
「……あまり他の子には見せないでください。きっと面倒なことになりますから」
「そうか、分かった。ならこれは円香さん以外には秘密にしておこう」
「ありがとうございます。……では」
そう言って立ち去ろうとした時、
「……あいつのこと頼んだぜ」
そんな呟きが聞こえた。
これから私が何をするのかを見透かされているようで、さすが彼に憧れただけはある、と少し笑った。


「プロデューサー」
「おお、円香じゃないか。どうしたんだ?」
「立ってください」
「え?」
「聞こえなかったんですか?」
「いや、聞こえたけどさ」
そうして言われた通り立ち上がった。
「失礼します」
「ま、円香?近づいて何を……」
私は彼の腰へと手を回した。……やっぱり。
「これ、なんですか」
「あーえっと……」
「嘘をついたり誤魔化して隠すのはなしです。ミスター・シークレット」
「ちょっとこないだ腰をやっちゃってな。サポーターをしてるんだ。ああ、でもそんな酷くないから仕事に影響は……」
「嘘をつくのはなしと言ったはずです」
彼が腰にサポーターをつけているのは今日が初めてではない。とはいえど、普通に接していたら気づくことはほぼほぼ不可能なレベルで目立たない。私がそれに気づいたのは以前グラビアの撮影で海に行った時、私が水着でシャワーを浴びていた時偶然見えてしまったのだ。このミスター・ジェントルマンはあの時ずっと目を閉じていたので、見えていることに気づかなかったのだろう。むしろよくそれまで隠し通していたと思う。その時はあまり気にしなかったけれど、今もつけているということは完治していないということ。そんな酷くないなんてよくもまぁそんなことが言えるものだ。
「えっと……言わなきゃダメか?」
「ここまで来て言わない選択肢があるとでも?」
流石に観念したのか、彼はゆっくりと話し始めた。
「実は俺も昔アイドルをやっていた時期があったんだ」
「そうですか」
知ってる、とは言わない。あくまであれは私とトレーナーの秘密だ。
「ずいぶんあっさりした反応だな、まあいいか。で、それなりにちゃんと活動してたんだけど、ある日思いっきり腰を強打しちゃってな。打ちどころが悪かったのか結構な怪我で、今はまぁそこまで痛むわけじゃないんだが、一応サポーターをつけて過ごしてるって話さ」
「それで?」
私が言わんとしてるところを察したのだろう。諦めたように彼は話を続けた。
「まぁ当然踊れないからしばらく休止ってことになった。今まで割とアイドル一本だった俺はどうしようかと思って色んなことをやってみた。けどそのどれもがしっくりこなくて、やっぱり自分にはアイドルしかないのかなって思った。そんな時社長からアイドルのライブに行かないかって連絡が来たんだよ。社長とはアイドルやってた頃に面識があってな。お世話になってたしせっかくだからと思って行ってみたんだ。そこで俺は女性アイドルの美しさに引き込まれた。実は当時あんま女性のアイドルって見たことがなかったんだ。意外と接点もなくてな。社長はきっと俺がそうなることを分かっていたんだろうな。283プロを立ち上げるからプロデューサーにならないかって言われたんだ。もちろん自分でアイドルやりたい気持ちもあったから悩んだよ。けど、アイドルだったからこそあのステージで歌って踊る楽しさをもっと広めていきたいって思ったんだ。それでアイドルを引退してまぁ今に至るって感じだ」
「……なんで秘密にしてるんですか」
むしろ隠さない方が色々指導しやすいのではないだろうか。きっと歌も踊りも彼の思うところは今までいくつもあっただろう。しかしあくまで彼が何かを言うことはあまりなかった。
「それはまぁ対等にいたいから、かな。元アイドルのプロデューサーにプロデュースされることをプレッシャーに感じる子もいるだろうしさ。プロデューサーとしてプロデューサーの目線でみんなと接してたいと思ったんだ。まぁ今日円香にはバレちゃったけどな」
どこまでも人のため、か。本当にお人好し。
「そうですね、弱みを一つ握ってしまいましたね」
「あの、円香今のこと他の子には……」
「言いませんよ。私を何だと思っているんですか?ただ約束してください。……無茶はしないで。何かあったら人を頼って」
「円香……ありがとうな」
「あなたに倒れられたら私達が困るので。教えてくれるんでしょう?私たちにステージの楽しさを」
「……!!ああ、任せろ!」
初めは信用のならない大人だと思っていた。なぜこんな人に透はついていくのだろうと思った。けど今なら分かる。この人は本当に真摯に私たちと向き合ってくれている。価値観は本当に私と合わないけれど、でもだからこそ彼を少し信用してもいいと思った。
これからもよろしく、プロデューサー。
と心の中で呟いた。

Comments

  • miwk9900

    他のアイドルだとどうなるのか気になります!

    February 23, 2024
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