米国政府が、生食用ジャガイモの輸入解禁を日本に求めている。米国は3月末、解禁に向けた協議が進展しているとの報告書を公表。日本の産地は、病害虫のまん延防止に神経をとがらせている最中だけに、拙速な解禁に踏み切らないよう、日本政府には毅然とした対応を求めたい。
米国産の生鮮ジャガイモは、大幅な減収をもたらすジャガイモシストセンチュウ(Gr)などの侵入リスクを踏まえ、日本政府はポテトチップス用として輸入を限定してきた。生食用の解禁も求める米国政府に対し、リスク管理措置が必要な害虫の特定に向けて協議を開始。米国通商代表部(USTR)が公表した外国貿易障壁報告書では、生食用の輸入解禁に向けた協議の進展をうかがわせる内容が記されていた。
主産地は、Gr類のまん延防止に細心の注意を払う。北海道オホーツク地域の農家は「共同利用する機械のタイヤを小まめに消毒するなど、他の作物を含めて土の移動を減らすよう地域ぐるみで取り組んでいる」と話す。近年、ジャガイモシロシストセンチュウ(Gp)が発生した産地からは「侵入経路も明らかではなく、農家がピリピリしている最中の話。検疫体制は万全だと言い切れるのか」と、憤る声も上がっている。
産地は、Grに抵抗性を持つ品種への転換を進める。農水省の調べによると、2023年時点で抵抗性品種の面積割合は全国平均で46・8%。20%前後だった10年前から急伸した。「男爵薯」をはじめブランド力が高い品種からの転換リスクを負いながら、産地が安定生産と需要開拓に尽力してきた結果だ。「(解禁したら)また別の対策を迫られるかもしれない。食用で問題がある病害虫ならとんでもない話だ」という農家の声を、重く受け止めるべきだ。
産地による品種転換の努力が、交渉の前進材料に使われるとすれば、看過できない。十勝地域のJAも「品種転換が進んでいるから解禁してもОK、という議論はしないでほしい」とくぎを刺す。
病害虫に加え、需給バランスへの影響も懸念材料だ。近年は天候不順などの影響で国産は出回りが不安定となり、高値傾向で推移する。だが「生食用ジャガイモの市場自体は縮小傾向」(首都圏の青果卸)にある。そうした中、輸入品が出回れば、値崩れを起こし、産地は弱体化する。
米国から解禁要請のある品目には、要請を受け付けてから30年近くたっても解禁していないものもある。ただし、米国側からの要請で手続きが一気に進展する可能性もある。産地の納得を得られる説明がないまま、拙速に話が進むことは許されない。