ウクライナでの戦争が長期化する中、大和ハウス工業が復興支援に向けて、現地でプレハブ型の集合住宅の提供に乗り出す。隣国のポーランドで箱状のユニットを生産し、ウクライナに運び入れて現地で建築する「モジュラー建築」の手法で実施する。2029年2月までに、公営住宅として約100世帯分の建設を実現したい考えだ。最新のプレハブ住宅を実際に建設することで、日本の技術力を欧州でアピールしたい思惑もある。
計画では、ポーランドで生産したユニットをトラックで約1週間かけてウクライナの首都キーウや西部リビウなどに搬入し、現場で組み立てる。戦争が続いていることから、現地企業とも連携しながら安全性を確保しつつ、慎重に進める。
ウクライナでの住宅建設は、経済産業省のウクライナ復興支援の実証事業として昨年10月に採択された。現在はポーランド国内の仮設生産施設の選定をしており、近く決まる見通し。
戦争開始から4年以上が過ぎた現在もロシア軍によるミサイルやドローン攻撃が続くウクライナでは、住宅が破壊されても修繕することは容易ではない。国内の他地域からキーウに逃れてくる避難民も多く、冬季は極寒になるウクライナでは、住宅の確保は一層、切実な問題となっている。
芳井会長、現地の惨状を視察
同社の芳井敬一会長らは昨年6月、戦時下で空港が閉鎖されたウクライナに、ポーランドから夜行列車で入国。キーウに3日間滞在した。
芳井氏に同行してウクライナを訪問した同社海外本部欧州事業推進部長を務める脇田健執行役員は「ウクライナ訪問には不安もあったが、これまで日本各地で復興支援を手掛けてきた。その経験が、同国支援にも生きるのではと思った」と振り返る。
脇田氏はキーウ訪問前に芳井氏から「ポーランドの状況をしっかり調べてほしい」と指示されていた。脇田氏は「オランダに拠点があるので、欧州事業を強化する目的かな」と感じたという。しかし後に、芳井氏からモジュラー建築を使ったプレハブ住宅でウクライナの復興支援ができないかと考えていた事実を明かされる。芳井氏はプレハブ建築協会(東京)会長も務めており、その技術が生きると考えた。
キーウでは都市開発を担当するウクライナの政府関係者らと協議したが、「日本から来てくれたということで、本当に感謝された」と脇田氏。滞在中に空襲の危険を知らせるアラームが鳴ったこともあったという。
キーウ市内でも「人々は気丈に、普段通りにふるまっていたが、実際には各所に破壊された建物があった」。芳井氏は今年1月にはリビウを訪問し、現地視察や政府関係者との会合を精力的にこなした。
大和ハウスには、今回の事業を通じ欧州市場のさらなる拡大を図る狙いもある。同社の海外事業は現在、米国市場が売上高の約8割を占めているが、過度の依存は「リスクになり得る」とみる。
同社はすでに英国、オランダでウクライナからの避難民ら向けに約1400世帯分の住宅を建設した実績もある。ただ、社会主義国だった東欧諸国では団地型の住宅が長年建設されてきた。日本の最新技術で建設されたプレハブ住宅がウクライナでどのように受け入れられるのか、注目される。(黒川信雄)